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元コンサルタントな歴史家―ドイツから見た日本

大学で近代日独軍事史を研究する伊藤智央のエッセイ。ドイツと日本に関する批判的な評論を中心に海外生活(留学や移住)の実態をお伝えしています。その際には元戦略コンサルタントとしての経験も踏まえてわかり易くお伝えできればと思います。

『ヒトラーの共犯者』所収の解説論文について

研究 研究-歴史一般

12月16日に発売されます『ヒトラーの共犯者』の解説論文「解説 グイド・クノップと歴史学―非歴史家による歴史叙述との向き合い方に関する試論」を下巻の末尾に執筆しております。

解説では歴史家と非歴史家との緊張関係について論じております。
一般的に、小説家や作家による歴史叙述(ドラマ、映画、小説、漫画など)の影響力は歴史専門書がもつそれよりもはるかに大きいですが、そういった現実と歴史家はどのように向き合っていけばよいのでしょうか。

グイド・クノップの影響力

『ヒトラーの共犯者』の著者はグイド・クノップで、数々の歴史テレビドキュメンタリーをドイツにおいて成功に導いてきました。

現在は公営放送ZDF(ドイツ第二放送)を定年退職しています。

彼は大学にいる歴史家よりも一般の人にとってははるかに知名度があり、影響力もあります。彼の本も歴史書としては、歴史家による出版物に比べるとかなりの数の印刷数です。

いいか悪いかは別にして、一般の歴史認識に大きな影響を与えているという点で、日本における司馬遼太郎と比較可能でしょう。

大衆的歴史叙述の問題点と可能性

この人気の一方で、彼は歴史家から、歴史叙述の方法でひどく敵視されています。この批判的態度は、一部で歴史家による「ひがみ」とも揶揄されることもありますが、そうではないでしょう。

歴史家はこれらの歴史叙述がもつ問題点を無意識的にも認識しているから一部では批判を展開していると考えます。

特に問題となっているのは「シーンの引用」(szenische Zitate)と呼ばれる叙述手法で、俳優を使って、ある特定のシーンを再構成していることです。
演じられたシーンがまるで本当に起きたことのように映像を通して視聴者に捉えられます。

フィクションとノンフィクションの境が曖昧になります。

読者の理解のために作られた映像や会話がまるでその通りに行われたかのように、受け手に認識されてしまいます。

このような大衆的に人気のある歴史叙述の何が問題で、その可能性は何か、そしてそれらを踏まえた上でただ批判をするだけではなくどのように対応していく必要があるかについて、一つの対応策を私は解説論文で提示しております。

興味がありましたら、是非手に取って読んでみてください。

なお解説論文の目次は以下の通りになっております。

目次

解説 グイド・クノップと歴史学―非歴史家による歴史叙述との向き合い方に関する試論
 ・はじめに 
 ・第一の立場から―歴史叙述の内容を検証の対象として
 ・第二の立場から―歴史叙述の文脈に焦点をあてて
 ・まとめ

となっております。

上下2巻ありますが、解説論文は下巻に掲載されております。

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