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元コンサルタントな歴史家―ドイツから見た日本

大学で近代日独軍事史を研究する伊藤智央のエッセイ。ドイツと日本に関する批判的な評論を中心に海外生活(留学や移住)の実態をお伝えしています。その際には元戦略コンサルタントとしての経験も踏まえてわかり易くお伝えできればと思います。

「湯冷め」はなぜ日本にしかないのか

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「湯冷め」という概念はドイツ語にはありません。

私は日本でよく湯冷めをして風邪を引いていたので、ドイツでもシャワーのあとにすぐに寒くならないように努力しますが周りからは不思議な目で見られます。

では何故「湯冷め」という概念がドイツにないのでしょうか。

直感的に思い浮かぶのは、日本は夜風呂を浴び、欧米では朝シャワーを浴びるという時間帯の違いでしょうか。

欧米でのシャワーと浴槽

欧米は朝にシャワーを浴びるというステレオタイプ

まず、欧米人は主に朝にシャワー浴びるというイメージは正しくありません。

少なくともドイツでは、女性の場合、夜にシャワーを、男性は朝シャワーを浴びることが多いです。そのため、朝にシャワーを浴びることは男らしさ、夜シャワーを浴びることは女らしさとそれぞれ結びつけて見られることもあります。*

*自身の観察と聞き取りに基づいています。

夜にもシャワーを浴びる人は一定程度いるため、朝シャワーを浴びることに湯冷め概念がない原因を求めることは説得力がありません。

では本当の原因は何か

「湯冷め」とはいかないまでも、ドイツでもシャワーの後に病気になるかもしれないということは認識されています。

それは、髪の毛を乾かさないでいると、頭皮から熱が奪われて最悪の場合、髄膜炎になることもあると考えている人もいます。

ただそれだけ危険性を認識しているのに何故「湯冷め」に似た言葉がドイツでは存在していないのか。

それは、シャワー後に風邪を引いたり病気になったりする頻度が少ないからと考えます。

というのは部屋の断熱性が高く暖房システムが発達しているため、部屋の中で体が冷えるということが少ないからです。

しかし、日本では伝統的な家屋は夏の暑さに対応して作られて、冬は隙間風だらけです。

こういった、冬の寒さに対応することをメインとした、建物に対する考え方のため、ドイツでは、シャワー後に病気になる頻度が少ないと思われ、それゆえに「シャワー=後で病気になるかもしれない」という連想がされにくくなります。

因果構造:気候的要因→建築文化→湯冷めの有無

推測ですが、欧米の他の国でも「湯冷め」という言葉はないと思います。
それは、冬の寒さの厳しい大陸性の気候で生まれた文化であれば、共通して、冬の大陸性の寒さに対応することが住環境に求められていると考えられるからです。

つまり、「湯冷め」を生まなかった原因は、夜シャワーを浴びる習慣の有無ということではなく、気候に起因する建築文化でしょう。

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