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元コンサルタントな歴史家―ドイツから見た日本

大学で近代日独軍事史を研究する伊藤智央のエッセイ。ドイツと日本に関する批判的な評論を中心に海外生活(留学や移住)の実態をお伝えしています。その際には元戦略コンサルタントとしての経験も踏まえてわかり易くお伝えできればと思います。

【実体験】中二病が抱いているドイツイメージが幻想にすぎない理由

ドイツ ドイツ-生活一般

日本にいると、ドイツに関して、一般的に「規律だって整然とした国民性」という良いイメージを持っている人も多いですが、はっきり言うとそれは幻想にしかすぎません。あくまで、他のヨーロッパの国と比較する限りで秩序だった性格というだけで、日本人から見るとテキトーさが気になり不満がたまることも多いです。

整列する人たち

中二病の考える「ドイツ」

中二病が依って立っているところのドイツイメージも、同様のものです。中二病文化はドイツイメージを単に再生産しているだけで、ドイツっぽければ何でもいいという側面があります。イメージを再生産していると、イメージの元になった現実と次第に遊離していき、現実とは違ったものになっていきます。このイメージにはドイツ在住者として、かなり違和感を覚えます。

中二病文化はそれ自体一つの文化として尊重しておりますが、一方で現実との乖離ゆえに中二病のドイツイメージを訂正しておく必要もあります。

ただやっかいなのは、ドイツ人自体もある程度そのような自己イメージをもっているの で、ドイツ人はきっちりとしているという自己賛美をドイツ人の口から聞くたびに、「いやいや、それは言いすぎだよ。ヨーロッパ以外を見てからそれを言ってよ」と突っ込みをいれた くなります。一度作られたアイデンティティが再生産され続けています。*

*一度作られたアイデンティティが再生産されて使われ続けられるというのは、日本の「サムラ イ」にもみられるのかもしれません。明治以降の国民皆兵を通して国民全体(男性のみですが)が「サムライ」道徳を注入されましたが、現在もサッカーや野球 の国際試合で「サムライ」という言葉が使われ続けています。「日本=サムライ」という構図をもった自己像が現在でも続いています。

ドイツ人の適当さ

では実際に日本人の眼で見ると、一体どのような場面で、ドイツ人のテキトーさが気になるのでしょうか。
以下では、スーパーのレジ待ちと電車という誰でも体験するような場面で例を挙げてみます。たいしたことのない話に見えますが、こういった日常のことから不満がたまっていきます。

事例① 後から並んだ人の方が先にレジに行く?

ドイツのスーパーのレジを待っているとイライラすることがたまにあります。
それは、以下のような状況です。

レジの前で長い列で並んで待っています。
そこに、別の店員が来て、別のレジを開けます。
当然待っている客はそちらへ流れます。その流れ方が不公平ということです。

つまり、下の図でいうと、別の店員が来てレジ②を新しく開けるのに最初に気づくのは後ろのほうに並んでいる客⑨か⑧で、彼らが最初に新しいレジに流れます。
そのため、⑥にいる自分は新しいレジに気付くのが遅く、レジ②に移動すると、もともと自分より後ろに並んでいた人よりも後ろに並ぶことになります。

レジ前で無秩序なドイツ人

店員にとっては誰が先に並んでいようがどうでもよく、店員も客もこの不公平さに全く気にしません。

事例② 長距離列車の3割は遅延!

あと、電車やバスの時刻表の乱れも嫌になります。遅延は頻繁に起きます。しかも、遅延の後の態度も横柄です。あたかも、少し遅れても黙いないだろ、というような雰囲気で対応されます。客がお金を払っている以上、約束である定刻通りの運用を期待するには、当然でしょう。

下の表を見てください。赤の線は遅延が6分以上*なかった長距離電車の割合です。2015年11月に至っては30パーセントの電車は6分以上遅延しています。
灰色の線は15分以上の遅延がなかった電車ですが、11月にいたっては、10パーセント以上の長距離電車は15分以上遅延しています。

*ドイツ鉄道の定義では5分59秒までの遅延は遅延として登録しません。したがって6分以上遅延している電車のみ統計で把握しています。6分以内は遅延とはいえないという姿勢もどうかとは思います。

(ドイツ鉄道の悪口はいくらでもありますが、ここではほんの一部の例だけに限定しておきます。悪口だけで一升ぐらい酒が飲めるぐらい、ドイツのインフラには不満があります)

バスの場合も、ときには早く出発したり、遅く出発したりとストレスが溜まります。日本でもバスは道路の状況で遅れたりしますが、ドイツの場合はより遅延が酷いと感じます。

数年前、鉄道会社の手違いで、他の乗客数十人と一緒に、夜10時ぐらいの真冬のホームで1時間以上待たされました。待合室もなく、氷点下10度の吹きっさらしのホームでです。

そのとき鉄道会社からは、心のこもらない謝罪しかありませんでした。手違いを手違いと思わない会社風土のようです。

ドイツ人の自己イメージとの矛盾

よくドイツ人は自分たちのことを、「秩序立って正確な国民性」と自画自賛します。

しかし一般消費者としては、「レジ前の秩序も作り出せないのに、何が秩序立った国民性だ」といつも憤慨してします。

日本ではちゃんと店員が誘導して、先に並んでいる人を優先させることや、定刻通りの電車やバスの運用を知っているので、9年ほどドイツにいても慣れません。

日常の細かなことですが、こうした点に国民性*は現れるように思われます。
インフラがしっかり機能するようにしたり、客の行列をきちんと誘導してから初めて、「秩序の国」という自負を持ってもらいたいものです。

*ある国籍を持った集団において、一定の傾向が特定できるとすれば、それをここでは国民性といっています

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www.ito-tomohide.com

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