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元コンサルタントな歴史家―ドイツから見た日本

大学で近代日独軍事史を研究する伊藤智央のエッセイ。ドイツと日本に関する批判的な評論を中心に海外生活(留学や移住)の実態をお伝えしています。その際には元戦略コンサルタントとしての経験も踏まえてわかり易くお伝えできればと思います。

スタートレックは映画だけでは語れない!?TVシリーズを見るべき理由

メディア メディア-テレビ・映画

近年、ハリウッドで新作映画『スター・トレック』(2009年)『スター・トレック イントゥ・ダークネス』(2013年)、『スター・トレック:ビヨンド』(2016年)が作られてきましたが、スタートレックの歴史はこれらの映画よりも実は長いもので、1960年代から始まります。

テレビシリーズや映画も数多く作られておりますが、このことを日本で知っている人は少ないでしょう。知っていたとしても実際に見たことのある人はさらに少ないと思います。

しかしスタートレックTVシリーズは名作とも言えます。*同じ「スター」が付く作品の中では、スターウォーズのほうがはるかに有名ですが、内容に関してはスタートレックのほうがはるかに洗練されています。

*1960年代のTOS(第一作目)はそれほど名作とは思いません。ちなみに、私はTNG/ピカード派(記事末尾のシリーズリスト参照)です。

ポスター スタートレック/エンタープライズ FP-2267

スターウォーズよりも洗練されたスタートレック

スタートレックのほうが洗練されていると考える理由は、スターウォーズも確かにスリルで面白いですが、考えさせられるようなテーマを扱っておりません。少なくともそれが明確な問いとして登場人物の口から発せられることはありません。

それに対してスタートレックは、下にも書きますが、「人とは何か」や「人間の宗教性」、「人間の金銭欲」という、人間性にまつわる普遍的なテーマを正面から扱っています。そうした問題提起は、ストーリーから読み取れるという形で行われるのではなく、登場人物の言葉ではっきりと問いかけられています。

種族設定:人間性の分解・割り当て

スタートレックでは様々なタイプの宇宙人が出てきます。

理性的な種族、商人的な種族、信仰心の篤い種族、感情に身を任せる種族、攻撃的な種族といった具合にです。

ブロマイド写真★海外ドラマTNG『新スタートレック』ブリッジのクルー8人・横/トロイ、ピカード、ビバリー、ライカー、データ、ガイナン、ジョーディ、ウォーフ

それは人間性の側面を切り出して、個々の種族に分散させて投影することで、人間の各性質をそれ自体として考察することを可能にします。例えば、純粋に商業魂の種族と戦闘種族を対比することで、人の金銭欲と攻撃性の二つの側面を純粋に眺めることが出来ます。スタートレックではある意味、理念型で物事が捉えられているということです。

加えてシリーズによって、ロボット、機械と融合した有機体、所属不明の生き物が出てきます。彼らは人間性のどの側面も兼ね備えていない、いわば純白のキャンパスです。

問題設定:「人間とは何なのか」という永遠の問い

上記のように人間の各性質が割り当てられた種族や、特に何ら人間性を兼ね備えていない存在は、人間を理解しようとし、そのために人間性について様々な質問がなされます。

「人間はなにをもって人間なのか?」、「何が人間性の根本にあるのか?」、「個を個たらしめているオリジナリティとは何か?」「共感とはどういうことなのか?」といった問いです。それは同時に視聴者への問いでもあります。

答えの探求:会話の知的展開

そして上のような哲学的問いかけを基調として、ストーリーが展開されていきます。

例えばある回では、法廷の前で、ロボット(データという登場人物)がものとしてみなされるべきか、法の主体性が認められるべきかということが争われました。

新スタートレック STAR TREK NEXT GENERATION マグネット データ 正規品

そのときに争点になったのは、人を人たらしめているものは何かということでした。その性質をデータが有していることを証明できれば、彼の法的主体性を認めさせることができます。

そうして、人間性を突き詰めて考えさせられる会話/論争が展開されていきます。*

*TNG、Season 2、Episode 9より

これは一例ですが、そのような「人間性への問い→それを探求する会話構成」というストーリー展開は形を変えながらも何度も繰り返して出てきます。

加えて、特にTNGシリーズ*では主人公演じるパトリック・スチュワートがシェークスピアへの造詣が深いことから、シェークスピアの引用がされており、それがこのシリーズの知的レベルを押し上げています。

*文末のシリーズ一覧参照

補足:将来への人類の可能性を提示している

補足になりますが、スタートレックは科学技術が未来にどのような可能性をもたらすのかに関して、極めて明快なイメージを与えてくれます。そしてそのイメージは極めて楽観的です。

スタートレック 1/850 USSエンタープライズNCC-1701

TNGシリーズの主人公ピカードやそれ以降の主人公(2000年代以降の新カークを除く)を見ていると、知性とともに洗練された人間性を兼ね備えた人物が未来の人間なのかとも思ってしまいます。

まとめ:SF性を利用した人間性の探求が魅力

しかし、スタートレックの芯にある魅力というものはSF性ではなく、そのSF性をうまく利用することで、人間性という問いに深く迫ることが出来ている点ではないでしょうか。

なぜ人間は人間なのかという問いは、あえて人とは違う他者(この場合は宇宙人)を導入することで思考がある程度容易になります。もちろんシリーズ*ごとや回ごとに、これがうまく行っているものとそうでないものがありますが、全体としてみれば、スタートレックとは人間性の探求に関する壮大な物語といえるでしょう。

Appendix:シリーズ一覧とおすすめシリーズ

スタートレックにはたくさんのシリーズと映画があります。参考までにテレビシリーズを網羅しておくと以下のようになります。(括弧内は放送年)

① 宇宙大作戦(1966-1969)

② 新スタートレック(TNG)(1987-1994)

③ スタートレック:ディープ・スペース・ナイン(1993-1999)

④ スタートレック:ヴォイジャー(1995-2001)

⑤ スタートレック:エンタープライズ(2001-2005)

ちなみに私におススメは②~④です。

スタートレックは私の留学時代を助けてくれた存在です。スタートレックを見ることで日頃のストレスを忘れさせてくれることができました。

2017年から新作テレビシリーズが始まるそうですが、楽しみですね。

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