元コンサルタントな歴史家―ドイツから見た日本

ドイツの大学で歴史を研究する伊藤智央のブログ。ドイツと日本に関する批判的な評論を中心に海外生活(留学や移住)の実態をお伝えしています。その際には元戦略コンサルタントとしての経験も踏まえてわかり易くお伝えできればと思います

たった2年で上級レベルになった私が教えるドイツ語勉強法

ドイツ語を効率的に習得するためには、ただ闇雲に文法書を読んだり、ポッドキャストを聞いたりしてもダメです。

体系的に学習を進めていくことで初めて効率的に学習を進めていくことができます。

外国語学習の最終目的は多くの場合、現地人とコミュニケーションをとることでしょう。そのため、コミュニケーションの際にどのような能力が必要とされているのかを具体的に把握する必要があります。

ここでは具体的にそのような能力をどのように伸ばしていけばよいのかについてご紹介していきます。

外国語を操るために必要な3つの能力

外国語習得のために必要な能力は

  • 基礎力
  • 応用力
  • 実践力

の3つからなり、その関係は以下の通りになります。

語学力を構成する要素をわかり易く解説

上の図でピラミッド構造になっているように、基礎力があって初めて応用力を伸ばすことができ、応用力があって初めて実践力を伸ばすことができます。

それでは、このような基礎力・応用力・実践力とは一体どのようなものなのでしょうか?

基礎力

全てのドイツ語能力の基礎となる力としては

  • 文法の理解
  • 語彙の多さ
  • 発音の正確さ

があるでしょう。

これらが備わらない限り、次の応用力が全く備わってきません。そのため、まずはこれら基礎力を上げていきましょう。

文法の理解:おススメ参考書

文法の理解には、文法書が不可欠です。

しかしそうした文法書はどれも、内容の点で差がほとんどありません。特に初心者向けの教科書にはどれも同じような説明が書いてあります。

但し、全般的に古い本のほうが説明がしっかりしています。新しい本はイラストが入ったり、文字が大きく見やすくなっていますが、文字による説明に関しては古い本のほうが充実しています。

ですので、新しい本のほうがとっつきやすい印象を与えますが、使い込んでいく上では古い本のほうがおススメです。

私は「標準ドイツ語入門」 という本を使っていましたが、絶版になっています。しかし定評のある参考書が他にもあり、こちらもおすすめです。

難しい文法の説明は嫌だという人向け

1冊目の本は以下の参考書です。

1970年出版の文法書ですが、説明がわかりやすく、しっかり読み込めば文法は十分に理解できます。

こちらはどちらかというと、説明のわかり易さに重点が置かれているため、比較的取っ付きやすい参考書と言えます。*1

難しくてもいいから徹底して文法を理解したい人向け

2冊目のおススメの文法書は文法書の古典とも言える本で、やや堅めに書かれています。

こちらは、どちらかというと、文法を徹底的に隅々まで理解したいという人向けです。上、中、下の3冊を完璧にこなせるようになれば、初級文法はもう卒業といっていいでしょう。

1つの参考書を徹底して読み込むことの大切さ

どちらの参考書もおすすめですが、大切なことは、複数の文法書を平行して参考にするのではなく、1冊/シリーズの本を座右の書として徹底的に使い込むことです。文法は、著者が違えど結局のところ同じ事柄を説明しているため、1冊/シリーズで十分です。

参照する本を1冊/シリーズに絞ることで、何かわからないことがあれば、自分が使っている文法書の何ページあたりにその答えが書いてあるのかがすぐにわかるようになります。

これによって、文法を調べる時間が短縮できます。

語彙力

文法が出来ないことには、ドイツ語学習も全く前に進みませんが、単語もある程度覚えておく必要があります。

というのも、単語をすべて調べていては時間も労力もかかってしまうからです。そのため、文法の学習と平行する形で、簡単な単語から少しづつ暗記していきましょう。

いつか、ドイツ語でドイツ人と話す状況を想像してみて下さい。

 
これってxxだと思うけど、あなたはどう思う?

 

 
(xxって何?)ちょっと待って。xxって何かわからないから辞書で調べるね。

 

 

会話は川の流れと同じで、流れが大切なことが多いです。こうしてわからない単語があることでせっかくの会話の勢いが止まってしまいます。そのため、単語量はできるだけ多いことが望ましいと言えます。

私が実践していた単語の効率的な勉強法については以下の記事の中で詳しく書いておりますのでこちらを参照してください。

発音の正確さ

単語の一つ一つの発音がよくなければ、会話は不可能です。

たとえば、ドイツの都市である「ケルン」という単語を例としてとっていましょう。

 
ケルン(Kerun)に行きたいんですが。

 

 
Kerun?そんな街しらないなぁ

 

 

ドイツ人に「Kerun」と言っても通じません。「Keln」でもありません。それらは「Köln」は全く別物です。自分の中ではその単語を正しく発音しているはずなのに通じないのはフラストレーションがたまる体験です。

そうならないようにするためにはひたすら発音練習が重要となってきます。

特に私が勧める練習法はシャドーイングです。

自分で発音してみてうまく舌がまわらなかったり、発音のせいで会話が通じなかったりしたときには、つまづいた単語を後でひたすら繰り返して発音します。独り言のように実際に口を動かしてみることが大切です。*2

300回くらいその単語を繰り返して発音すれば、ある程度うまくなるでしょう。

よく私が練習していた単語は以下のようなものです。どれもRとLが繰り返して出てくるので、舌が回りにくい単語でした。

  • Loreley(ローレライ)
  • Gürtelrose(帯状発疹)*3
  • Frau Fleiß(私の大学の先生の名前)

発音は学習の早い段階で直しておかないと、取り返しのつかないことになります。何十年とドイツにいてもひどい発音をする日本人を何人も見てきました。特にrとlの間違いは致命的です。

「外国語は、発音よりも話す中身が重要」という意見もありますが、発音は実際のコミュニケーションにおいて大切です。その理由については以下の記事で詳しく述べていますので、併せてご覧下さい。

応用力(書く・読む・話す・聞く)

次に、基礎力を土台として、実際にドイツ語を使うための能力を上げる方法を紹介します。

書く

書く能力を磨くには、ひたすら作文をし、それを添削してもらうに限ります。

添削者を見つけるには、大学や語学学校のドイツ語コースの先生やLang-8というサイトをうまく利用しましょう。

読む

おススメの小説

小説好きな初心者の方におススメなのは、日本語の小説を読み、そのドイツ語訳を続けて読むという方法です。私はこの方法をとりませんでしたが、知人の中にはこのような方法で上達した人がいます。

特に村上春樹は比較的ドイツ語にも多く翻訳されていますのでおススメです。

私は専門書以外はあまり読みませんでしたが、唯一読んだドイツ語小説は次に紹介する"Der geteilte Himmel"というものでした。

この小説は中級以上の方におススメですが、感情の叙述が細かなのと、東ドイツの社会主義下に住む人間の葛藤がよく描かれているので、思わず引き込まれて2回も読んでしまいました。

やっぱり内容が面白くないと、読んでいても苦痛でしかありません。

こうした小説を読む際におススメしたい読み方は、あまり辞書を引かないということです。

辞書を引きすぎるとストーリーの流れが、その都度中断されてしまい、小説の面白さが半減します。読む流れが途切れてしまっては小説は台無しです。そのため、辞書の使用は最小限の範囲に絞り、わからない単語はそのままにして読み進みましょう

そして読み終わったらそれで終わりではなく、何度も読み直します

それによって、2巡目以降は全体のストーリーの流れが頭に入っているので、単語の推測もしやすくなりますし、1巡目で調べた単語のいくつかはまだ覚えているので改めて調べる必要がありません。

そのようにして何巡も反復して読んでいるうちに小説で使われている表現も自然に覚えていきます

好きな小説のドイツ語訳がないか、まずは調べてみましょう。

東大で使われている教科書で学ぶ

他にも、東大が語学授業の教科書用に出版している以下の書籍も読みやすく、解説も充実しています。

様々なテーマからテキストが選ばれているため、テーマに偏りなく、様々な表現を知ることができます。

翻訳技術を鍛える(中級向け)

ドイツ語から日本語へ翻訳する技術は、ドイツ語の理解を上達する上で重要です。

日本語に訳さずにドイツ語を理解することも可能ですが、それは上級以上になってからでも十分行えます。

せっかく外国語を勉強するのであれば、その知識を日本語と結びつけることで、日本語への感覚も鋭くし、それによって今度はドイツ語の細かいニュアンスも理解してみることをおススメします。というのも、翻訳業を生業とするつもりがなくても、きれいな日本語へと翻訳する技術は、ドイツ語のニュアンスを丁寧に理解する一つの方法でもあるからです。

この翻訳技術を高めるための例題が数多く収録されているのが以下の問題集です。

「I」と「II」の二冊があり、日本の大学入試で出題されたドイツ語試験を集めています。この本をやりつくせば意訳がうまくできるようになります。また日本語での微妙な表現を逆にドイツ語で表す際にも参考になります。

ドイツ語上達には欠かせない参考書です。

話す

会話をするために相手が必要です。

ではどうやって話相手を探せばよいのでしょうか?

最近ではスカイプで話相手を探すこともできますし、お金と時間に余裕があれば語学学校に通うこともできます。昔に比べれば選択肢は増えたので、それほど苦労はないでしょう。

どうすれば語学学校をうまく利用でき、語学が効率よく上達するのかについては以下の記事で詳しく書いていますのでこちらをご参考下さい。

簡単に要約すると、ドイツ語が話せるようになるためには、お金が必要ということです。外国語の学習は、残念ながらお金のかかることです。

聞く

初級~上級に関係なく一般向け

聴力を鍛えるためには

がおすすめです。

Deutsche Welleはドイツの公的報道機関であり、外国向けに放送を構成しています。DWはテレビと同じように映像がついているため、言葉が多少わからなくても理解が進みストレスがそれほど溜まりません。内容も、最近の流行やニュース、文化のテーマなど、外国人でもドイツに興味を持てるように工夫されています。

中級者向け

中級以上には

がおススメです。

同アーカイブでは多数の番組が蓄積されているので、自分の関心に合った番組が見つかります。

上級者向け

上級者向けには以下の記事で無料ポッドキャストをまとめておりますので、こちらをご参照下さい。

実践力

応用力の次に来る実践力とは何か?と思う人もいるでしょう。

実践力とは、ドイツ人と会話や書面でうまくやりとりしていく能力です。

これは単にドイツ語を勉強しただけでは身につかない能力で、実践でドイツ人とのやり取りをどれだけこなしてきたのかという場数の多さによってのみ身に付く能力です。

具体的には、

  • ドイツ人がよく使う表現を使いこなす能力
  • 会話でわからないときにうまく切り抜ける臨機応変力

です。

こうした能力によって、自分の言いたいことをうまく自然な形で使えるようになります。

臨機応変力については以下の記事で詳しく説明していますのでご参照下さい。

この実践力を身に着けるためには、ドイツ語圏に実際に来て

  • ホームステイしたり
  • 学校に通う

以外に王道はありません

ドイツ人が使う表現やジェスチャーを注意深く観察し、自分なりのドイツ語スタイルを磨いていきましょう

辞書は語学勉強の大切な伴侶

ドイツ語を使うどの局面においても辞書というのは良き伴侶です。

そのため、どのような辞書を使うかによって学習の効率性が大きく変わってきます。

辞書の選び方や、辞書を賢く使うコツについては以下の記事で詳細に述べておりますので、ご覧ください。

モチベーションの大切さ

言語力のそれぞれの側面に応じて紹介してきたこれらの勉強法は、繰り返して実践していく必要がありますが、最も重要なことは、何年も勉強を継続させることです。語学が一日で上達することは絶対にありません。

「数ヶ月頑張って、数ヶ月休む」というのでは全く前に進みません。

そのため、根気よく勉強するための一番の敵は、自分自身のやる気のなさです。ではモチベーションをどうやって維持していけばよいのでしょうか?

モチベーションを下げない方法

モチベーションを維持するための一つの手段は、勉強をルーティン化することです。

ルーティン化によって、考えることなく勉強するようになるため、ただでさえ退屈になりがちな勉強を継続していくことができます。

例えば、

  • 朝の10分は、単語の勉強にあてる
  • 夜寝る前の10分は、Podcastを聞く
  • 曜日によって勉強の内容を変えてみる
  • 語学学校に通うことで定期的に宿題をこなす

といったことをうまく組み合わせて、日常生活の中にドイツ語学習を溶け込ませましょう。

そうすれば、勉強していると意識することなく、ドイツ語を勉強していくことができます。

モチベーションを上げる方法

モチベーションを積極的に上げていくことでも、ドイツ語学習を促進することもできます。そのためには2つの方法があります。

①:ドイツ(語)を楽しむ仕組みを取り入れる

その一つの方法はドイツ(語)を楽しむことです。

「好きこそものの上手なれ」という諺のように、ドイツ(語)を好きになれば、自分から進んで勉強するようになります。

自分のモチベーションを上げていく手段としては、学校の教室にこもって本やPCと向かい合っているのではなく、実際に「ドイツ(語)」と触れる機会を求めていくことが挙げられます。

例えば

  • ドイツに観光旅行に行く
  • 日本にいるドイツ人と知り合う
  • ドイツの文学・歴史・文化を勉強する

といったことがあります。

こうすることで、実際にドイツに興味を持ったり、ドイツ語を使う機会が生まれます。その結果、「ドイツ語をもっと勉強しよう」というやる気が起こってきます。

ドイツへの旅行関連では以下の記事も併せてご覧下さい。

②:目標を定める

もう一つの方法は、明確な目標を定めることです。

そうすれば、その目標に向かって何をすべきかが明確になってきます。目標がない場合、だらだらと何年もドイツ語を勉強することにもなり、いつまでたっても上達しません。

そのための目標としては、検定試験であったり、短期・長期留学であったり、何でもいいでしょう。そうした目標設定の際には以下の記事もご参考下さい。

こうしたことを参考に、是非ともドイツ語の上達のためにいろいろと工夫してください。そうした工夫を自分で編み出していくこと自体も語学学習の一部です。

ドイツ語・留学移住関連の記事

*1:こうした古い文法書は旧正書法で書かれており、ドイツ語の表記が、1998年を期限として導入された新正書法の表記とは異なります。ただ、旧正書法と新正書法の表記の違いは簡単で、慣れてくれば使い分けるのに問題はありません。加えて、ドイツ語が上達してくるにつれ、旧正書法で書かれた文書も読む機会が出てきますが、その場合には、旧正書法と新正書法との違いを理解しておく必要があります。つまり、いずれは旧正書法も理解する必要があるということです。そのため、古い文法書を使った文法書を使うことは、ドイツ語の学習を促進こそすれ、妨げになるものではありません

*2:周りから見ると気持ち悪く見えるかもしれませんが、外にいるときは他の人から見てわからないように口の開き方を調整することもできます

*3:ストレスのあまりに、私が修士課程でお世話になった病気です