読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

元コンサルタントな歴史家―ドイツから見た日本

大学で近代日独軍事史を研究する伊藤智央のエッセイ。ドイツと日本に関する批判的な評論を中心に海外生活(留学や移住)の実態をお伝えしています。その際には元戦略コンサルタントとしての経験も踏まえてわかり易くお伝えできればと思います。

【海外移住した気になれる?!】異文化交流を描いたおススメ映画まとめ

メディア メディア-テレビ・映画

私が自分の実体験からうまく描かれている感じた異文化コミュニケーション映画をまとめています。

これらの映画ではそれぞれ、人はどのように文化の差異を理解し、それと付き合っていくのかについて異なった答えを出しています。

外国語の勉強も大切ですが、異なる文化的バックグラウンドをもった人とどのように付き合っていくのかということはそれ以上に重要です。この問題は、海外で生活していく上で避けて通れない問題でもあります。

国際交流や異文化コミュニケーションに興味があったり、文化のはざまで悩んでいる人は是非、次の映画選びに参考にしてください。

*各映画に点数もつけています。なお、A、B、C、D評価でAを「最高」としています。

異文化コミュニケーションを扱った映画

アメリカ人が見た奇妙な日本

ロスト・イン・トランスレーション

主演:ビル・マーレイ、スカーレット・ヨハンソン
評価:B
コメント:
仕事で来日したハリウッド俳優の主人公が、言葉も通じず、「訳のわからない」日本で孤独を感じていく内に、同じような境遇にある女性と知り合い魅かれていく。
アウトサイダーである主人公が日本というものを外からどのように捉えているのかがわかる。地理感の喪失というテーマが、人生の方向感覚を失っていく姿と重なりあいながらうまく描かれている。

ミスター・ベースボール

主演:トム・セレック、デニス・ヘイスバート、高倉健
評価:A
コメント:
アメリカ大リーグで打者として不振に陥った主人公にはどの球団からもオファーが来ない。そんなとき、日本の中日ドラゴンズからオファーがくる。日本に渡った主人公だが日本の異なる野球文化に戸惑いつつも、徐々に慣れていく。
日本人とアメリカ人の野球・スポーツ観の違いが如実に表れている。例えば日本人監督が主人公に「野球は仕事だからまじめにやれ」と言うのに対して、主人公は日本人監督に対して逆に「子どもの頃から仕事として野球をやってたのか?楽しいから始めたんじゃないのか」と逆に聞き返します。ここに、日本人にとってスポーツは神聖な仕事、アメリカ人にとってスポーツは楽しむものという考え方の差が如実に表れている。

ラーメンガール

主演:ブリタニー・マーフィ、西田 敏行
評価:B
コメント:
恋人を追ってアメリカから日本に来た主人公。
しかし恋人にも見捨てられ日本という不慣れな土地であてもなくさまよっている中、一杯のラーメンに出会う。ラーメンのあまりのおいしさにその店への弟子入りを決めるが、始めは掃除や下働きばかりでラーメンの作り方を教えてくれない。
こうした日本流の修行に不満を感じながらも、英語が全く分からない店主と主人公との交流が進んでいく。

 

アメリカに馴染めないメキシコ人移民家族の悲劇

スパングリッシュ 太陽の国から来たママのこと

主演:アダム・サンドラー
評価:A
コメント:
メキシコから移民として来た母と娘の親子。アメリカに来ても母親はスペイン人コミュニティで暮らし続けたために英語が全くできない。そんなときに稼ぎがいい家政婦の仕事が見つかり働くことになるが、働き先の家庭とは言葉が通じないし、文化は違って戸惑うことばかり。移住数年目にして初めてカルチャーショックを受ける。アメリカ人家庭、主人公のメキシコ人、両者の板挟みとなるメキシコ人の子どもという関係をうまく描いている。
メキシコ人がアメリカで受けるこのような「洗礼」は、日本人が海外移住後に受けるショックと比較すると興味深い。特に、移民二世は移住先の文化(学校の友達や周囲の大人たち)と移住元の文化(両親)の板挟みとなり、アイデンティティ・クライシスを体験する様がうまく描かれている。海外移住に興味がある人は是非。

 

アメリカ人がプライド高きギシリア移民と結婚するとき

マイ・ビッグ・ファット・ウェディング

主演:ニア・ヴァルダロス、ジョン・コーベット
評価:C
コメント:
アメリカに住むギリシャ系家族の娘が主人公。
彼女の父親はギリシャ至上主義で、すべての言葉はギリシャ語から来ると考え、パルテノン神殿のような家に住む。娘が非ギリシャ人と付き合うことにはもちろん反対。
しかし娘はアメリカ人男性と出会い、結婚式の計画を立てていく。その中でさまざまな問題が生じてくるが、彼はギリシャ正教会方式での結婚に同意し、相手家族のギリシャ文化に譲歩していく中で、ギリシャ移民の楽天的な文化に魅かれていく。
移民が自分たちの文化を維持して、パラレル社会で生活している様子がうまく描かれている。

 

北フランスは寒くて人間の住む場所じゃない?

Bienvenue chez les Ch'tis(シティの国へようこそ*)

主演:Dany Boon、Kad Merad、Zoé Félix
評価:B
コメント:
南仏のマルセイユ北部で郵便局長をしている主人公。
誰もが憧れる地中海沿岸への転勤を望んで、少しでも転勤のチャンスを上げるために、障害者を装う。しかしこれがバレて罰としてフランス北端への転勤を命ぜられる。言葉も文化も何もかも全く違うと思って恐る恐る単身赴任してみると実はいい人ばかり。しかし、彼の家族は北フランス人は変人という思い込みをもっており、家族に対しては思わず「彼らはやっぱり変人」という嘘をついてしまう・・・
日本では未公開のフランス映画だが、どこの国にもこうした地域差からくるステレオタイプは存在するのではないでしょうか。そのため、多くの人にとって身近な話としても楽しめます。
*原題の日本語訳は私が訳してみました

ヨーロッパからの留学生が集まるたまり場

スパニッシュ・アパートメント

主演:ロマン・デュリス
評価:C
コメント:
ヨーロッパ交換留学プログラム「エラスムス」を利用してフランスからスペイン・バルセロナに留学した主人公。
ヨーロッパ各国からの留学生が住むシェアハウスを舞台に人間ドラマ、特に複数の三角関係が同時並行で展開されていく。
正規留学生というよりも交換留学生の気軽な生活が描かれている。ただし、交換留学で一年間外国に行く場合に感じられる、外国のカオス的な体験と慣れ親しんだ故郷との対比がうまく描かれているのではないでしょうか。

異なる他者と出会うところに喜びや悲しみが生まれる

以上、異文化が出会うところに生れる緊張や悲喜劇を描いた映画をまとめてみました。

旅行は異文化を知るチャンスでありますが、実際にそこにある程度の期間住むこととは全く別です。定住して初めて観光客としてではなく居住者として周囲のことを捉えることができ、さまざまなストレスとも立ち向かう必要が生じてきます。

考え方が違ったり、コミュニケーションがうまく取れない人とどのように付き合うのかという問題は、克服するのが大変な問題であると同時に、異文化とともに自文化を見つめなおす良い機会です。

どの映画もそれぞれ異なった視点からこの問題を描いているので、是非これらの映画を見て異文化コミュニケーションというテーマを考えてみてはいかがでしょうか。

関連する記事