コンサルタント業に限らず、もれなくダブりなく考えることは重要です。この思考方法のことをMECE (mutually exclusive and collectively exhaustive)と呼びます。
MECEに考えることは重要で、それによって今まで考えられていなかった問題を発見できたり、相手に納得感をもって受け入れられるという効果があります。そのため、まずはMECE思考を身に付けることを勧めます。*
*MECE思考は訓練無しでは身に付きません。そのため多くの人はMECE思考が出来ていません。ですので、これが出来れば人より一歩先んじることができます。訓練方法は文末に「補足」で紹介しています
しかし、一旦MECEを使いこなせるようになると、MECEの限界にも気付くようにもなります。それは、MECEはあくまで何かを達成するための道具でしかなく、MECEな考え方になっていればそれがゴールというわけではないということです。
MECEを使う2つの目的
MECEを使う目的は主に2つあります。それは以下の通りです。
- 新しいことを発見するため
- 聞き手・読み手を納得させるため
目的①の「新しいことを発見する」 ことは多くの場合、自分のためになされることが多く対内向けに対して、目的②の「聞き手・読み手を納得させる」というのは他者のためのものであり対外向けといえます。
目的①:新しいことを発見する
人間は、意識的に考えなければ慣習的な枠の中から出られなかったり思いつきに基いたりして考えがちです。そうして時間をかけて考えても、これまで知られている結果とそれほど変わらない結果が出てきます。そうすると、考えた分だけ労力と時間の無駄です。
しかし敢えてMECE思考をとることで、慣習的な考え方からから一歩も二歩も離れて考えることができます。例えば、対象を分類する際に、
- その切り口だと分類の結果何が結論として出そうなのか*
- 自分の目的を達成するために他によりよい切り口はないのか
と分類基準について考えを廻らせるきっかけとなります。その結果、新しい発見が可能となります。
*仮説思考も重要な道具ですが、ここでは触れません
目的②:聞き手・読み手を納得させる
MECE思考の2つ目の目的は、相手を説得することにあります。
MECE的に話を展開させていくことで、物事を理路整然と提示できます。しかしMECEを使うのはあくまで聞き手・読み手を納得させるためです。そのため、慣例的な分類のほうが、MECEよりも説得力をもつと考えられる場合は、そちらを優先させましょう。
重要ではない箇所でMECE思考を使って分類すると、聞き手にとって見慣れない分類になってしまうことがあります。聞き手に慣れない分類だと、理解してもらうのに時間がかかり、また違和感を感じてしまうというリスクもあります。そうなると、プレゼンの途中で、それって違うんじゃないと思われてしまい、結論に対しても懐疑的にさせてしまう可能性があります。
重要でない箇所であれば、納得してもらえないというリスクを抑えるために出来る限り慣習に合った分類をとりましょう。
もちろん、慣習の盲点をつく場合は盲点を盲点だと聞き手・読み手に認識させるためにMECEは有効ではあります。しかし、不必要な箇所でMECEを振りかざして、相手の理解を阻害しては本末転倒です。
MECEは万能ではない
MECE思考を習得すること自体簡単なことではありません。そのためMECE自体が自己目的化して扱われ、MECEになっていればそれで大丈夫ということを見聞きしたりすることもあります。
しかしMECE思考をなぜ使うのか、ということを考えていけば、それには必ず目的があります。MECE思考自体をMECE思考で相対化するというでしょう。MECE思考があくまで何かの目的を達成するための道具であるということを意識しなければ、MECE思考はかえってマイナスの影響しか与えません。
補足:MECE習得のための方法
MECE思考は本を使っても訓練できます。
例えば、以下の参考書は虎の巻と言ってよいでしょう。特に『考える技術・書く技術』は練習用教材も付いているので、独学にはぴったりです。
しかし、本での学習はMECE習得への第一歩にすぎません。
その知識を使って、実際の仕事で使っていき、その都度修正をしていくことで、コツをつかんでいく必要があります。
その際には、上司やクライアントの反応を見ながらMECEの精度を上げていくことになります。一人ではMECE習得は難しいので、他人からのフィードバックが必要です。この実践部分が最も難しい部分と言えます。