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元コンサルタントな歴史家―ドイツから見た日本

ドイツの大学で歴史を研究する伊藤智央のブログ。ドイツと日本に関する批判的な評論を中心に海外生活(留学や移住)の実態をお伝えしています。その際には元戦略コンサルタントとしての経験も踏まえてわかり易くお伝えできればと思います

留学が辛くて海外の大学を辞めたいときにできる6つのこと

留学は精神的につらく、もう逃げたいと思うこともあります。

私自身、ドイツの大学院に留学して、修士課程を卒業しましたが、そのような体験をしました。特に、最初の1年ほどは人生の中で最もつらい時期といっても過言ではありません。

そうした赤裸々な体験については、以下の記事で詳しく書いております。

そうしたことを体験してからもう何年もたちましたが、今から考えると、どうすればよかったのかいくらか方法があったと思われます。ここでは、自分の体験を踏まえて、海外留学に息詰まったときにできることを紹介したいと思います。

留学先で絶望している人へのアドバイス

留学生活に息詰まるときに考えられる問題は、2つあります。

  • 大学の事に関して問題があるのか
  • 大学の私生活に問題があるのか

です。

正規留学の場合、授業についていけなかったりと大学に問題があることが多く、交換留学の場合は私生活で孤独になりがちといったように大学外に問題があることが多いでしょう。

このため、ここでは、大学内と大学外に分けて対策を述べていきたいと思います。

「大学内」に関する改善策

現地のことを現地人に混ざって勉強することの精神的つらさ

文系学科の場合、研究対象がその留学先の国の

  • 文化
  • 歴史
  • 言語
  • 政治

であったりします。

留学先(以下、A国)に興味があってその国を選んで留学していることが多いため、その国のことを勉強していることはよくあることです。ドイツに留学した私もドイツ史を専攻していました。

実学よりの学科であれば、外国人もいるかもしれませんが、ソフトな学科を選択している場合、教室で机を並べて勉強している人は現地人がほとんどでしょう。

自分の国のことを大学に行ってまで勉強しようとしている人は、現地人の中でもかなり閉鎖的な傾向が強いと言えます。外国についてはあまり興味もありません。

そのため、日本のことを聞かれることもあまりありません。「変なガイジンがいるな」と遠巻きに見られるぐらいです。

日本の留学したドイツ人の孤独さ

日本人で日本史を専攻している人の中に、フランスから留学生が来る場合を想像してください。

フランス関連のことを勉強している日本人であれば、留学生に興味をもって近づくことはあるでしょう。しかし、日本のことを勉強している日本人学生のたいていはフランスに興味も知識もあまりないことが多く、留学生に話しかけることはないでしょう。

あるドイツ人の知り合いは東京のある私立大学に留学して日本史のゼミに参加していました。

ある機会にゼミの課外授業で遠出したらしいのですが、移動も含めての数時間の間、日本人のゼミ参加者からの誰からも話しかけられることはなかったそうです。

ドイツに留学した日本人の孤独さ

つまり、留学先で相手の土俵で戦っていると、始めから不利な状況で戦っていることになります。自分の強みもなかなか生かせません。

私自身も、現地人の中に混じってその国のことを勉強することがどれほど孤独なことかは体験しています。

ドイツ史のゼミではアジア人はおろか、外国人などいませんでした。講師の人は、親切にも私の顔を見て日本の話しをしてくれる人もいましたが、普通の学生はそんなこともありませんでした。中には物好きな人もいて、友達になることができましたが、片手で数えることができるほどです。

こうした状況に身を置いていると、徐々に精神的に追いやられてしまいます。孤独というものはつらいものです。

対策①:専攻に「日本」色を入れていく

そのため、もしA国関連の科目をとっているのであれば、日本関連のテーマをもう少し押していくということも考えてはいいのではないでしょうか。

「海外にまで行って、日本のことをしても意味がない」と思うかもしれません。

しかし、日本のことを勉強しても何か得るものがあるかもしれません。何を学び取れるのかは、あくまで自分次第です。加えて、精神的に無理をしてまでA国関連のことばかりして楽しいでしょうか?もしこの質問に自身をもってYESと答えられないのであれば、少し工夫して、勉強を楽しくできるようにしてみてもいいと思います。

あくまで、「日本」テーマの割合を学業生活の中で増やしていく可能性を頭の片隅に入れておくだけでも精神的に楽になります。

学問の対象が、社会学系や理系といった、A国の学生からも自分からも等距離にあるようなものであれば、ハンディキャップは言葉だけです。そのため、そうした国籍に中立的な学問領域に専攻を変更することもアリでしょう。

もしすでに「中立的な」専攻をとっているのであれば、勉強のなかで「日本」を入れていってもいいかもしれません。経済学や経営学を勉強しているのであれば、日本の事例を扱うというように。

専攻を変更しないまでも、現在の専攻の中で「日本」を扱う可能性がないか考えてみてもいいのでしょうか。

対策②:大学を変更

まずは対策①を試すことをおススメしますが、それでも精神的なつらさが改善しない場合、次の方策があります。

それは大学自体やその立地の変更です。

私自身も、実は大学の立地自体、かなり不満でした。山の中に街があり、天気もひどかった*1ため、専攻は変えずに大学を変更することも有意義であったかもしれません。

海外の大学の場合、元の大学で獲得した単位を転校先の大学で認めてもらえる可能性もあります。

ただ、大学先を変更するという選択は慎重に行うほうがよいでしょう。というのも、大学を変えても、その先にあるのは、同じ専攻内容、同じA国人の学生です。つまり、同じように孤独になる可能性が高いと言えます。

こうしたリスクを考えて私は大学を変えることはしませんでしたが、大学を辞める前に考慮してもよいオプションです。

対策③:休学する

休学してゆっくり休むことも考えられます。その際には、日本に一時帰国して休養してもよいでしょう。

国によって違うとは思いますが、ドイツの場合だと、大学と年齢は関係ありません。休学して年を取ることにあせりを感じるかもしれませんが、この休学期間が自分にとって意義あるものであれば、それは無意味な焦りです。人からみてこの休学期間が経歴上どのように見えるかではなく、自分にとってどのような意味があるのかということが重要です。

心を壊してまで卒業にこだわるよりも、心を休めましょう。

私は、ある程度単位をそろえて卒業の目途が立たない限り日本への一時帰国はしたくありませんでした。日本に帰ると、もうドイツに戻りたくなくなる気がしたためです。ただ休学はしませんでしたが、ゆっくり自分のペースで単位を集めようと入学当初に気分を切り替えました。

対策④:日本に帰る

最後の対策ですが、日本に帰ることがあります。ただ、日本に戻るといっても、次のステップを考えてから帰国するのがよいでしょう。

私が絶望していたときは、日本の大学院に入りなおすことを考えて東大の大学院の願書を速達で取り寄せました。確か2学期目のことでした。雪が降っていてとても寒い冬だったことを覚えています。

実際にこの願書を出すことはありませんでしたが、それでも、まだ選択肢があるということを知っているだけでも少しは気が楽になるかもしません。

もちろん、留学先でうまくいかなかったから日本に戻るとなると、挫折感を感じるかもしれませんが、そうした「挫折」は自分だけしか気にしないものです。他の人から見ると、留学先から志半ばで日本に戻って来ようが卒業しようが、話を聞いた数時間後には忘れてしまうようなどうでもいい話です。

プライドと自分の健康、どちらが大切ですか?

健康さえ大丈夫であれば、またいつか留学に再挑戦することもできますし、この「挫折」の経験によって、学ぶことも多いでしょう。

あまりプライドや世間体にこだわらないことをお勧めします。プライドや世間体は自分の選択肢を狭めるだけで、何ら有益なことを自分にもたらしません。

「大学外」=私生活に関する改善策

対策①:プライドを捨てて話相手を作ろう

話し相手を作る

「A国に留学してまで、現地で日本人や日本好きな現地人と交流するなんてありえない」と思っていませんか?

私自身、日本好きな現地人と交流しようと積極的に動いたりしたことはありませんでした。「普通の」ドイツ人と交流したいと思っていたからです。しかし、そうした思いとは裏腹に実際には、それほど多くの友達は出来ませんでした。たまに変わったドイツ人とは友達になりましたが。

実際、「留学先ではドイツ人に溶け込もう」という変なプライドが、孤独につながることも少なくありません。

そのため、日本に興味のある現地人と積極的に交流してみてはどうでしょうか。話し相手が出来ると、日常のストレスも大分解消されていきます。

話し手に回ることの重要性

基本的に相手の言語であるA国語で話しているので、少なくとも話すテーマぐらいは「日本」にしてしまえば、会話が行われている土俵はある程度中立的になるのではないかと思います。

A国のことをA国語でA国人と話している限り、どうしても聞き手に回りがちです。

逆の立場を考えてみて下さい。日本に来た外国人から、日本の歴史を日本語で聞きたいと思う人がいますか?逆に日本のことを教えてあげたいと思うでしょう。つまり留学生から見ると、聞き手に回ることになります。

話しを留学先のことに戻しますが、A国で話し相手となる人が日本のことに興味のある場合は、状況は異なってきます。

彼は日本人であるあなたに多くのことを聞きたがります。あなたがつたない現地語で説明しても、ゆっくり聞いてくれたり、興味をもって聞いてくれます。つまり、話し手に回ることができるチャンスが生まれるということです。

ある意味、日本人であるということのアドバンテージを生かした会話です。

会話は双方向のものでないと面白くありません。「話す」ということと「聞く」ということのバランスが重要です。

そのため、話す機会が生まれるように会話を構築していく体験を積み重ねていくことで、「現地で受け入れられている」という感情が生まれ、精神的に楽になることもあるでしょう。

対策②趣味を使って現地人と交流する

対策①と同様に、現地人と交流を深めることが私生活の充実につながります。

しかし交流するためには、現地人との間で何らかの共通項が必要です。対策①の場合、その共通項は「日本」でした。

趣味をを土台とすることでも交流を深めていくことができます。少なくとも、会話のテーマが自然に生まれて、友達・知り合いの輪が出来てきます。

加えて、没頭できる趣味を持つことが出来れば、それによって大学での不安やストレスを忘れることもできます。

趣味といっても高尚なものである必要はありません。ゲームでもいいでしょう。自分が楽しめるものであればなんでもかまいません。(但し勉強関連以外)

真面目な人ほど精神的につらくなる

留学する人にはまじめな人が多いとは思います。真剣に何かを勉強したいからこそ留学しているわけですから。

そうした人に限って、現地でストイックに生活していることもあります。

しかしストイックな生活は精神をむしばむことも少なくありません。つらくなって、心身とも壊してしまえば元も子もありません。そのため、適度に楽をする工夫を意識的に生活に取り込んでいく必要があるのではないでしょうか。

私は運よく根気だけで大学院を卒業することができましたが、当時、特に最初の1、2学期は、「現地の大学に残っても地獄、方向転換するのも地獄」といった状況でした。どちらの選択肢も受け入れがたい精神状態でした。ただ、進むのも引くのも地獄なら、引き下がる地獄の方が嫌だったため、結局無理をしてでも進むことができました。

ある意味、留学生活をうまく乗り越えることができるかどうかは、勤勉さや頭の良さだけにかかっているわけではありません。精神力と柔軟性がより重要です。

既定の年限で卒業しようとする人は、プレッシャーのあまり退学を選ぶこともあるかと思いますが、根を詰めずにマイペースな人は、規定年限にとらわれずにゆったりと勉強しようとするでしょう。その結果、マイペースな人ほど、時間がかかろうとも卒業できてしまうものです。

そのため、無駄なプライドを捨てて、人と比べることなく自分の道を歩めるのか、これが留学を成功させるための鍵ではないかと思います。

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*1:ドイツで降水量が二番目に多い都市。そのため、他のドイツの都市よりもどんよりとした天気が続きやすい