元コンサルタントな歴史家―ドイツから見た日本

ドイツの大学で歴史を研究する伊藤智央のブログ。ドイツと日本に関する批判的な評論を中心に海外生活(留学や移住)の実態をお伝えしています。その際には元戦略コンサルタントとしての経験も踏まえてわかり易くお伝えできればと思います

【体験談】ドイツで夫婦別姓をしている私が考えるその実態と問題点

ドイツでは1994年4月以降、夫婦別姓が認められています。私も夫婦別姓の道をとりました。
日本でも夫婦別姓が議論されていますが、ドイツでの例を元に日本で別姓を導入した場合に起こりうる問題点を紹介したいと思います。

結婚式

姓の名乗り方

ドイツではそもそも結婚後の姓の名乗り方について3つのパターンがあります。

①統一型

夫もしくは妻のどちらかの名前を両者が名乗ります。
ほとんどの場合、妻が夫の姓を名乗ることになりますが、日本で行われているのと同じですね。

②妥協型

どちらかが相手の名前を自分の名前に付け足します。
たとえばシュミットさんとシュナイダーさんが結婚した場合、一人は引き続きシュミット、もう一人はシュナイダー・シュミット、もしくはシュミット・シュナイダーになります。

③そのまま

夫婦がそのまま自分の姓を別々に名乗り続けます。いわゆる夫婦別姓はこのパターンです。

ほとんどの夫婦は申請時にこのどれを選ぶか考えていないそうです。そして実際に選択されるパターンの内訳を見ると、実際1994年以降③のパターンも認められているとはいえ、③のパターンは20%前後のようです。(正確な統計はありません)

利点

それぞれの利点は以下の通りです

①の利点

  • 子供も含めて家族としての一体感がある

③の利点

  • アイデンティティの一貫性
  • 対外的イメージの一貫性
       →旧姓で作成された書類(例、卒業証書など)がそのまま使える

個人的な意見としては、①から③のパターンのどれをとろうとも個人の自由なので夫婦別姓も認めてはいいのではないかと思います。社会生活に支障がでるほどの弊害もないでしょう。それに家族の形態も人それぞれなので。

夫婦別姓の問題点

ただ、私の経験上、夫婦別姓には大きな問題があります。子供の命名のときに、子供も何人生まれても、同じ姓でないといけないということです。

つまり、一人目は夫の姓、二人目は妻の姓といったことができず、一度一人目の子供の姓を決めたら、x番目の子供もその姓になります。

子供がいる場合、夫もしくは妻一人だけが別の姓で、あとはみんな同じ姓ということです。

一人だけ家族の中でのけ者のように感じてしまいますね。

それも知った上で、夫婦別姓を選ぶのであればそれも自由かと思います。

私はパートナーに自分の姓を名乗って欲しいと思ったことはないです。もし逆の立場だったら自分の名前を変えることはしたくないからです。というのも何十年もその名前で生活してきて、急に別の名前になるのは心理的な壁が高すぎると私は感じます。アイデンティティは自分の持っている(経済的、肉体的、精神的)財産のうち、人格の根幹にかかわる精神的財産と考えています。

姓の選択は個人主義と集団主義の表れ?

ただ、このように整理してみると①統一型と③そのままの対比は、個人のアイデンティティに関して、人格の一貫性を優先するか、家族という集団の一貫性を優先するかという、人の中での価値観の違いに起因しますね。

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