ビジネスであれ、学術論文の執筆であれ、それがどうやって価値を生み出しているのかを理解することは重要です。というのも、それを意識することが、アウトプットの価値を最大化することの手がかりになるからです。
ではどうすれば「仕事が出来る人」になれるのか。
そのために一番しなければならないことは、作業プロセスを見渡す目でしょう。
読者に与える付加価値を最大化するためには
ある仕事を個別の作業レベルまで分解し、その個々の作業が最終成果物の付加価値にどれほど寄与しているのかを見極めることが重要となります。そうすることによって、それぞれの作業に適切なリソースを割くことができるからです。
つまり、最適な作業設計が可能となります。
こう書くと抽象的でわかりにくいので、「文章を書く」という行為を例としながら説明していきます。
ステップ①:作業単位へとブレイクダウン
例えば「文章を書く」という行為自体は以下のように、性質が異なるいくつかの作業へと分解できます。*1
- インプット
①文献を読む
- 情報処理
②考える
- アウトプット
③書き出す
④推敲する
ステップ②:それぞれの作業の貢献度を見極める
時間を多くかけるべき作業:②考える+④推敲する
ここでは、上記の4つの点のうち、「②考える」と「④推敲する」について考えてみます。
- 文献を読む
- 考える
- 書き出す
- 推敲する
アウトプットの性質
アウトプットの質は投入「時間」に対して比例していきます。
確かに一定程度のアウトプットがすでに出ていると、このアウトプット向上を示すカーブは緩やかになりますが、いつまでも伸び続けます。
青天井ともいえます。
キードライバー
アウトプットが投入時間に比例していることを考えると、アウトプット最大化のためにはより多くの時間を投入するしかありません。
ここでは、どれだけこの作業に時間を費やすことができたのかが決定的な要因となります。
効率を追い求めるべき作業:①文献を読む+③書く
次に、「①文献を読む」と「③書く」という作業について検討してみようと思います。
- 文献を読む
- 考える
- 書き出す
- 推敲する
アウトプットの性質
付加価値はある一定のレベルに達するとそれ以上は上昇することがほとんどないか、伸び率は非常に低くなります。
書くという行為は、表現する文章の内容を、自分がもともと言いたかった考えに近づけることですので、始めから限界値が設定されています。考えている以上のことは書けません。*アウトプットのレベルは限界値に漸次的に近づいていくというイメージです。*2
情報のインプットに関しても、読んでいる文献が含んでいる以上の情報は得られないので、それが限界値を表しています。
ですので、繰り返しになりますが、これらの作業は、できる限り速くこの限界値に近づくようにしなければなりません。
アウトプットのキードライバー
これらの作業の性質を踏まえると、投入時間がアウトプットのドライバーになっているわけではないということが言えます。
「①文献を読む」に関しては、アウトプットに影響がない範囲で要点をつかむように速く読むことが求められます。
「③書く」にしても、紙の原稿用紙に書くのかパソコンを使うのかでスピードが違ってきます。また、同じパソコンを使うにしても、文献管理ソフトやショートカットを使って素早く書くこともできます。結局、手書きであろうと、ショートカットを使わない場合であろうと、アウトプットの質には影響を及ぼしません。
つまり、時間をかければいいというものではなく、どのような経過を経ようとも最終結果は変わりません。
そうなれば、作業を効率化してさっさと終わらせましょう。
つまりここで言いたいことは、作業効率がキードライバーになっているということです。
作業効率の上げ方については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
読み書き:効率化、思考と推敲:作業時間の確保
付加価値への貢献の仕方という観点から個別の作業をブレイクダウンすることで、アウトプット最大化のキーが見えてきます。
つまり、アウトプットに限界のある「①文献を読む」ということと「③書く」ということについては効率化を図り、そこで節約した時間を、アウトプットの伸び率がより高い「②考える」と「④推敲する」に回せるかということがカギとなります。
ただ頑張るだけで付加価値が出せるわけではない
以上の例のように、さまざまな作業も「分解」+「付加価値の見極め」ということを行うことで作業全体の付加価値を最大化できるのではないでしょうか。
整理すると以下のようになります。
インプット | 文献を読む | 作業効率を上げる |
情報処理 | 考える | 投入時間を増やす |
アウトプット | 書き出す | 作業効率を上げる |
推敲する |
投入時間を増やす |
このように、ある1つの仕事内容をより細かな作業レベルにまで分解して、付加価値の出し方に応じて分類することで、それぞれの作業内容にふさわしいリソースを投入することができます。
具体的には、時間をかけてもしかたないような作業は効率化し、それによって余った時間を、時間に比例して付加価値が上がる作業へと割り当てることを意味しています。
ただ、闇雲になんでも時間をかけて頑張っても良い成果が出ないときがあるのは、このためです。
関連する記事
*1:実際にはこれらの作業は行ったり来たりを繰り返し、また重なっているところもありますが、ここでは理念型として理解してください
*2:書きながら考えることもできますが、ここでは説明のために書くという行為を取り出して捉えています
*3:例えば、エクセルでどれだけ速く指を動かして処理するかといったようなことは、結局、それ自体が目的ではなく、より重要なことに時間を割くためです。
コンサルタント時代はマウスは基本的に使いませんでしたし、エクセルやパワポの処理速度を尋常ではないレベルまで上げさせられたのも、そのためでした。それによって余った時間を使うことで、クライアントよりも多くの時間を「考える」という作業に集中できます。これがコンサルが付加価値を創出するときの前提条件になります。