元コンサルタントな歴史家―ドイツから見た日本

ドイツの大学で歴史を研究する伊藤智央のブログ。ドイツと日本に関する批判的な評論を中心に海外生活(留学や移住)の実態をお伝えしています。その際には元戦略コンサルタントとしての経験も踏まえてわかり易くお伝えできればと思います

ドイツの公共交通機関が使えない3つの理由

ドイツに住んでいますが、私は公共交通機関*1をなるべく使わずに過ごそうとしています。

その結果、徒歩で街の中心に行ける場所かつスーパーが近場にある場所に住む場所を限定し、街へは徒歩で向かい、それ以外の場所には車で移動しています。

こうした生活スタイルには訳があります。それは、はっきりいって「ドイツの公共交通機関は使えない」ということです。

「使えない」というのは、

  • 快適性
  • 経済性
  • 利便性

という3つの点で車に劣るということです。

快適性

公共交通機関を使いたくない1番の理由は、この快適性の悪さです。

社会的に最低な行動が目に入る

私が観察してきた範囲ですが、どのような交通手段を使うのかは個人の経済的な事情によって異なっています。公共交通機関は中間層以下、車は中間層以上が中心です。

そして経済的に弱者の立場にある人の中には残念ながら、社会的なモラルが欠けている人が多く感じられます。そうした社会的モラルに反するような行動を見るたびに、私は腹が立ちます。

バスの中の様子

席を占領する

席を鞄か何かで占領し、誰かが来て座ろうとしても無視し続けるような人がいます。

他に席が空いていれば鞄を席に置いているのは許されるでしょうが、満員でもこういうことをする人がいます。

私が目撃したやりとりは、Bが座りながら、隣の席に鞄を置いており、そこにAが来て座ろうとして声を掛けます。電車は満席状態です。

 
すみません。ここ空いてますか?

 

 
・・・
 
ハロー?

 

 
・・・

 

 

Bは、顔を上げることすらしませんでした。音楽を聴いてたり、何かに夢中になってAの問いかけに気付かなかったというよりも、顔をAから窓の方に背けたBの様子から、わざと無視しているように感じ取られました。

こんなシーンを見ると義憤に駆られて、血圧が上がります。

ドアが開いた瞬間に乗り込む 

同じように義憤に駆られるシーンが、駅のホームやバス停留所でも起きます。

一応、電車やバスが来ると降りる人優先という意識はどこかであるのでしょうが、降りようとする人と、隙さえあれば1秒でも早く乗り込もうとする乗車客との間で揉めることがあります。

車両に乗り込みたい客は、降りる人が全員降りてしまうに乗り込もうとしますし、そもそも開くドアの正面に立っている人もいます。そのため、降りようとする人の邪魔になってしまっています。

そうしたときに、降りようとする人が「先に降りる人を降りさせようよ」というようなことをイライラしながら叫ぶことがあります。

降りる人を優先させるという意識が徹底していないことから起きる、こうした争い事は見ているだけで、イライラしてしまいます。

汚れや匂い

シートの汚れ

バスに乗っているとき、ある乗客がバスから降りようとして立ち上がったときにお尻を気にしている様子だったので、「何しているのかな」と私も注意して観察してみました。

すると、恐らくシートにコーヒーのような液体が染み込んでいたようでした。後で私もシートを確認したのですが、シート自体に色や柄がついているので、普通に見ただけではシートが汚れているとは気づきません。しかし確実に濡れています。

恐らく彼はそのズボンをクリーニングに出したのでしょうが、その日の気分が最低になったのは想像に難くありません。

これは偶然かもしれませんが、どんな人が座っているのかもわからない座席シートというのは、きれいなものではありませんし、特にそれが濡れている場合、シートの汚れがその液体とともにズボンについてしまいます。

たばこの匂い

加えて、たばこの煙が苦手な人には公共交通機関はおススメできません。

大きな駅では喫煙ゾーンがあり、ある程度分煙になっているのですが、たばこの匂いは風向きによっては離れていても届きます。そのそも喫煙ゾーンといってもガラスボックスのように仕切られているのではなく、ただ灰皿が置いてあるためだからです。「分」煙とはいい難い状況です。

一方で小さな駅ではホームは完全禁煙な場合があります。しかし、こんな規則だれも守っておらず、吸いたい放題です。建前上は禁煙なので、喫煙者用の分煙スペースもありません。特に朝はひどいもので、喫煙者にとっては通勤や通学のストレスを少しでも解消したいのか知りませんが、受動喫煙者にとっては逆にストレスの原因です。

まるで、喫煙者は自分のストレスを受動喫煙者に押しつけているようです。

バスの停留所もひどいもので、人が多いとたばこの煙の風下を避けつつバスが来るのを待つだけで気持ちが消耗してしまいます。

電車やバスを待つ時間が苦痛になる

経済性

電車を使った方が高くなることがある

比較的近距離にある都市間への移動の場合、車の方が安くつくことが多いです。

例えばフランクフルトとマインツ間は44kmありますが、この2都市間の移動を考えてみます。ちなみに東京-横浜間は40-50kmほどで、同じ程度の距離です。

車で移動する場合

ここでは、車で移動する場合の費用は燃料代、駐車代のような直接経費だけで、保険や車購入費、維持費といった間接費用の償却は考慮しません。そうすると各経費は以下のようになります。

  • 燃料代

前提①:燃費 8L / 100km

前提②:ガソリン単価 1,30 EUR/L

燃料代 = 44km× 8L / 100km × 1,30 EUR/L × 2 (往復分)= 9,152 EUR

  • 駐車場代

前提①:駐車場代 3 EUR / h

3時間駐車したと仮定すると駐車場代は、 3 EUR / h × 3 h = 9 EUR

つまり、別の町にちょっと用事で出かけるのに車を使った場合、約18 EUR(約2100円強)かかります。

電車で移動する場合

電車で移動する場合、片道8,25 EUR、つまり往復で16,5 EUR(約2000円弱)となり、若干安くなります。しかし、これは1人で移動する場合です。

2人以上の場合、車のほうが安上がり

2人での移動になると、費用は以下の通りとなり、車のほうが断然安くなります。この差は、3人以上になるとより顕著になります。

2人で移動する場合

車:18 EUR vs. 電車:33 EUR

利便性

電車は遅れる

特に長距離電車は遅れます。

以下の別記事で詳しく書きましたが、長距離列車の3割は遅延します。加えて、乗り継ぎを予定している場合に、自分の電車が遅れると次の電車は待ってくれていないことがあります。そうなると、到着時刻はさらに遅れることになります。

例え実際に遅延しなくとも、「もしからしたら遅延するかもしれない」と考えると、安心して予定も組めません。

時間への正確さに問題があるドイツ鉄道

定時到着でも車のほうが早いことがある

加えて、50 kmほどの移動であれば車のほうが早く到着します。

例えば先ほどのフランクフルトとマインツ間(44km)の例で言うと車での移動時間は40-50分に対して、電車で移動すると駅の間だけでの移動で40分、街の中心*2間の移動を考えると56分かかります。

出来れば車で移動するのがおススメ

以上、快適性、経済性、利便性の3つの点からドイツ公共交通機関の悪口を述べてきましたが、こうした理由から私は出来る限り車で移動することを心がけています。

関連する記事

*1:公共交通機関とはここでは、バス(市内バス・遠距離バス)や近距離電車(地下鉄・地上線)、高速鉄道のことを指しています

*2:フランクフルトの中心地をHauptwache、マインツはSchillerplatzと仮定