日本に留学し日本に数年滞在したことのあるドイツ人から聞いた話をもとに、日本で見たもののうち、彼らにとって理解できない事柄を挙げてみました。
日本に長く住んでいると、見慣れて当たり前のように見える光景でも、外から見ると、不思議に映るものがあります。
それは、「すげー、何でこんなことができるんだ」といったポジティブなものから、「何でこんなことしてるの?理由がわからない」というネガティブなものまで幅があります。
ここでは、私が聞き取りをしたドイツ人の完全な独断に従って、いい意味でも悪い意味でも「不思議」に映ったものを挙げていきます。ドイツ人の視点が中心ですが、アメリカ・ヨーロッパ圏の出身者であれば、ある程度通じる内容だと思います。
①工事現場の交通誘導の人
工事現場で歩行者を誘導している人の存在意義が不思議に映るようです。
標識を立てれば歩道が変更されていたり注意が必要なことが歩行者にもわかるのに、なぜ人を雇ってまで、安全を確保する必要があるのか。そもそも、人による誘導がなければそれほど危険なのか。
もちろん、工事現場におけるこうした安全確保の措置は企業側に義務付けられているのだとは思いますが、やはり、彼にとっては人件費と安全への貢献度が釣り合わないように見えるのでしょう。
実際、ドイツで工事している現場があっても、歩道が変更されていることへの注意を促す標識があるだけで、わざわざ人が立って歩行者を誘導している姿は見たことがありません。
②夏は麦茶?
麦茶も慣れが必要な飲み物のようです。
特に夏場になると、ホームステイ先では常に麦茶が出され、「喉が渇いたら水を飲む」という習慣の彼にとっては、麦茶の独特な味に慣れるまで大変だったそうです。麦茶の話しを振るだけで、当時のことをまざまざと語ってくれます。それほど、印象的な体験だったということです。
慣れてからも、味のついた飲み物ではなく、やはり水のほうがよかったそうですが。
夏場の暑い日に、コーラや果物のジュースのように味のついた飲み物ばかりを出されるとやはりつらいものがあるのと似ているのかもしれません。
③職人魂
料理であれ、ものづくりであれ、仕事に情熱を傾け、魂まで賭ける姿は、ドイツではなかなか見ることがないそうです。
そして、何時間も行列に並んでまで買おうとする消費者がその職人の努力・技術を支えています。例えば、ラーメン屋の前で行列を作ってまでおいしい食事にありつこうとする消費者の姿に彼は感銘を受けたようですが、どこのレストランに入ってもほとんど「外れ」がないということにも職人魂を感じたそうです。
他にも、何百年もの伝統を守り続ける伝統工芸職人については、その伝統の長さに圧倒されるようです。
④紙の家の中で石油燃やして大丈夫?
私の実家もそうですが、日本では石油ファンヒーターを使っている家は少なくないと思います。しかし、家の中で石油(灯油)を燃やすということ自体にやはり違和感を感じるようです。
臭いが少ないタイプもあるようですが、そもそも燃やした煙を吸うと体に良くないというイメージの石油を密閉空間で燃やすことには抵抗を感じるようです。
しかも、木や紙が建材の中心となっている古い家屋で、石油を燃やしていると、火事になりそうで危なっかしく見えるそうです。
もちろん最近の家屋は不燃材を使用しているとは思いますが、建材の多くが木材なのは変わっていません。
⑤ゴミ箱がないのに道にゴミが落ちていない
街の中でゴミ箱が全く見つからない割に、道端のゴミが少ない様子はやはり不思議に思うようです。
そもそもゴミ箱が多ければ多いほど、ゴミを道端に投げ捨てる機会は少なくなるので、「ゴミ箱がない」ということと、「ゴミが落ちていない」という2つの光景の間には矛盾を感じるようです。
清掃ボランティアや清掃係の人に、是非こうした意見を聞かせてあげたいものです。
⑥信号のない横断歩道は車優先?
道路交通法上、信号機のない場所での横断歩道では歩行者が優先となりますが、現実にはほとんどの車は止まりません。むしろ歩行者のほうが車に注意して横断歩道を渡る必要があります。
ドイツではどんなにスピードを出していてもほとんどの車は、歩行者を確認すると、減速します。まだ横断歩道を渡っていなくても、渡ろうとするのを待っている歩行者を見るだけで、運転手は止まります。*1
そのため、彼にとっては、信号のない横断歩道で何で車は止まってくれないのか不思議に思えるそうです。不思議というよりも、車側のわがままのように感じられるそうです。何で歩行者のほうが、違法な運転をしている車に合せる必要があるのか、それを考えるだけで嫌になるそうです。
⑦なぜ日本人は、外国人による日本(人)論がそんなに好きなのか
外国人タレントや外国人の素人が出て日本について意見するような番組が多いのには驚くそうです。日本人はそんなに自分のことを他人に語ってほしいのかという疑問が湧くそうです。
日本人論ほど日本人の大好きなことはありません。確かにドイツにも外国人が出演することはありますが、日本のメディアほど、「外から」の視点で自分たちのことを語らせようとはしません。
日本(人)論についてどれだけ本が出版されているのかも、そうした例の1つです。
日本人って、どう外から見られているのか気にしていて、逆に己惚れているようにみ見えるようです。
*この記事も「外国人から見た日本(人)」というカテゴリーに当てはまります
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*1:フランス、特にパリだと車は止まってくれないと思いますが