元コンサルタントな歴史家―ドイツから見た日本

ドイツの大学で歴史を研究する伊藤智央のブログ。ドイツと日本に関する批判的な評論を中心に海外生活(留学や移住)の実態をお伝えしています。その際には元戦略コンサルタントとしての経験も踏まえてわかり易くお伝えできればと思います

他人に与える印象をうまくコントロールするための2つの方法

コンサル業に限らず、仕事をする上で人と接する場合、相手にどのような印象を与えるかというのは大切です。

そもそもコミュニケーションのなかで相手に与える情報のうち、言葉よりもボディランゲージが占める割合は多いため、相手へ与える印象を改善したければ、ボディランゲージを意識する必要があります。

しかし、コントロールできるボディランゲージは限られています。多くの人は、話をするとき無意識的な癖が出てしまうものです。

では、こうした無意識の振る舞いはどうやってコントロールできるでしょうか?

猫とひよこと鏡

相手に与える印象が大切な理由

スタッフレベル

スタッフレベルでは、同じ失敗をしても、

疲れてて、たまたま失敗したんだろうな。俺も忙しいけど、手伝ってやろう

という印象を与えるのと、

こいつ、偉そうにしてるわりには失敗してやがる。手伝ってやるもんか

という印象では大きく違います。

マネージャー以上のレベル

また、マネージャー以上のレベルでは、顧客から優良案件を取ってくるためのプレゼンで相手を口説き落とす必要があります。提示するプレゼン内容ももちろん重要ですが、顧客として判断するのも人間ですので、プレゼンで与える印象も重要となってきます。

実績は少ないけど、頼りになりそう

という印象と

実績はあるけど、この人に頼んで大丈夫かなぁ

という印象では、そのちょっとした差で案件を取れるかどうかが決まることすらあります。

つまり、1人で部屋にこもって仕事をしている場合は別ですが、他の人間と一緒に働いている以上、相手に与える印象は重要になってきます。

ところで、相手に与えるこうした印象を自分の都合の良いように操作する方法があります。

自意識と他者意識を擦り合わせる

鏡を使う

コンサルタントとして仕事をしていたときに、あるパートナー(偉い人)について聞いた話です。

そのパートナーは家ではよく鏡を見るそうです。ナルシストかと思いきや、理由は別にありました。

そもそも、自分が見ている「自分」と、外から見えている「自分」には差があるのですが、その差をコントロールするためには、鏡の前で自分の振る舞いを常に眺めてみることは有効な手段だそうです。

それは、意識的にコントロールしている振る舞いにも無意識の振る舞いにもあてはまります。

意識的にコントロールしている部分

自分では、○○のような印象を与えようと思って○○のように振る舞っているのに、他人からは、全く別の印象を与えてしまっていることもあります。

無意識のうちに表れる部分

無意識でしてしまうしぐさも、鏡を通して自分を観察することで、気付きやすくなります。そうすることで、無意識のしぐさを「意識化」することができます。

そしてその意識化という作業が、無意識のしぐさをコントロールするスタート地点です。無意識のしぐさを一旦意識できるようになると、それが相手に悪印象を与えるものかどうかを判断できるようになり、さらに、どうやったらその癖をコントロールできるのか考えられるようになります。

もちろん長年の癖を直すのは至難の業ですが、少なくとも問題の所在が分かります

鏡以外の手段:録音と録画

自分のイメージをコントロールするのに、鏡を使うというのは良い方法です。普段の姿勢や話し方、顔の細かな表情をチェックできます。

しかし、プレゼン向けには、録音や録画という手段も適しています。ある程度の内容をまとまった形で相手に伝える場合には、自分の声を録音したり、カメラで自分がプレゼンをしている姿を撮って、文章を何度も推敲するように、自分の振る舞いを推敲することができます。

まずは録音や録画という形で、「可視化」*1して何度も繰り返して自分のボディランゲージを分析することが、改善するための第一歩です。

鏡 vs. 録音・録画

鏡のメリット・デメリット

上でも少し述べましたが、鏡のメリットとデメリットは以下のようになります。

  • メリット
    • 普段のボディランゲージ(座り方や、ちょっとした立ち振る舞い)を、気付いたときにすぐにチェックできる
  • デメリット
    • 自分が鏡を直接見ていない場合、チェックできない
      • 原稿を読み上げるとき
      • 180度に向かってまんべんなく話しかけるとき
    • 数十分にもわたる振る舞いをまとめて後からチェックできない

鏡はやはり準備の手間もかからないですし、思い立った時にすぐに自分の振る舞いをチェックできます。この手軽さが最大のメリットでしょう。

それに対して、自分が下や横を向いて話さなければならない場合、振る舞いを確認することが出来ません。また、プレゼンのように数十分にもおよんで自分の振る舞いをまとめて分析することもできません。

徹底的に分析するには、やはり録音・録画が最適でしょう。

録音や録画のメリット・デメリット

録画や録画のメリット・デメリットは、鏡の場合とは反対になります。

  • メリット
    • プレゼンのような、時間的にある程度まとまった振る舞いをチェックできる
      • 巻き戻しや早送り機能によって徹底的な分析が可能
      • 複数のプレゼンを比較することで、改善の過程がわかる
  • デメリット
    • その都度、機材の準備が必要
      • 気軽にチェックするのは面倒
      • 購入費がかかる

誰しも、録音や録画された自分の声や振る舞いを見るのは、気持ちいいものではありません。そのため、録音や録画をするには、精神的なハードルが高くなってしまいます

それに対して鏡を見てチェックすることは、その手軽さから精神的なハードルが低くなっています。そのため、自分が与える印象をコントロールして職業生活で成功したいのであれば、まずは鏡で自分を観察してみて、普段の振る舞いについてどのような印象を与えているのか自覚することから始めてみてはどうでしょうか。

録音や録画は、鏡で自分の振る舞いを改善しつくした後でも構わないでしょう。

関連する記事

*1:録音の場合は見ることはできませんが