元コンサルタントな歴史家―ドイツから見た日本

ドイツの大学で歴史を研究する伊藤智央のブログ。ドイツと日本に関する批判的な評論を中心に海外生活(留学や移住)の実態をお伝えしています。その際には元戦略コンサルタントとしての経験も踏まえてわかり易くお伝えできればと思います

海外でバイリンガル育児をするための実践的コツ(幼稚園編)

「海外で子どもを育てれば自動的にバイリンガルで育つ」と考えているのは、間違いです。

環境にもよりますが、親が何も努力しないと子どもの使う言葉は現地の言葉が中心で、日本語が全く話せない、話せるけど読み書きが苦手といったケースになることもままあります。日本語を現地語と平行して習得させるためには、親が中心になって、膨大な時間と努力を惜しまない覚悟が必要です。

そうした大変さは私自身も子育て中ということもあり、毎日身に染みています。

恐らくほとんどの親は試行錯誤しながら、実際の子育ての日常で使えるまでに落とし込んだ道を見つけていくことになるでしょう。

その助けとして先人の知恵を借りることは有意義でしょう。そのため、今回はオーストリアでバイリンガル育児を実践されているひょろさんに、誰でも実践できるコツを中心にお聞きすることにしました。

ご自身の体験に根差したアイディアばかりですので、海外で子どもを育てている方は必見です。

続きを読む

30年間ドイツの会社で働いてきた私の「履歴書」。ドイツで働くことの現実

「ドイツで働くことはxxだ!」

といった断定的な情報がネットには氾濫していますが、ほとんどの情報は、多くて数年程度働いた経験をもとにしています。長期の職歴に基づいた体験談はなかなか見当たらないものです。

そのため今回はドイツで長年生活されているSueさんに、ドイツで歩まれて来た半生を、会社員生活を中心に振り返っていただきました。苦労話のなかにも前向きなお人柄がにじみでています。ドイツで生活し、働くということはどういうことなのかが追体験できる文章となっておりますので、お楽しみ下さい。

なお、以下の写真はすべてSueさんからいただいた実際のオフィスの写真です。

ロビー写真 続きを読む

博士号だけではドイツの大学で生き残れない!?教授資格論文とは?

日本では、博士号を取得すれば任期のないポストに就くための資格が揃ったことになります*1。そのため博士号の後は、助教→講師→准教授→教授と昇進していくか、少なくとも、安定したポジションに留まることができます。しかしドイツでは、基本的には、博士号だけでは、安定したポジションには付けません。

博士号だけでは足らないということです。

では博士号を取った後にどうやってドイツで生き残るためには何が必要なのでしょうか?

以下では人文系に焦点を絞って説明していきたいと思います。

*1:学科によっては博士号なしでも任期制限のないポストにも就けます。例えば東大法学部では学部を卒業した後、助手に採用されて、助手論文提出後、東大や他大の講師や准教授になる道があります

続きを読む

【自著紹介】『市民性と日本の軍国主義-1937年から1940年における言説と、政治的意思決定過程へのその影響』

2019年11月にドイツ語でMilitarismus des Zivilen in Japan 1937–1940: Diskurse und ihre Auswirkungen auf politische Entscheidungsprozesse, (Reihe zur Geschichte Asiens; Bd. 19), München: Iudicium Verlag 2019(日本語:『市民性と日本の軍国主義-1937年から1940年における言説と、政治的意思決定過程へのその影響』)(591頁、65EUR、ISBN-13: 978-3862052202)を出版しました。本書は2017年9月に提出した博士論文を基にしています。

自分の人生のうちの数年分を費やした本でもあり、我が子のようです。 現在私がもっている問題意識、分析枠組み、全てを出し尽くしています。

力を入れた作品だけに、出来るだけ多くの人に読んでもらいたいと思っていますので、日本語で本書の内容と特徴を紹介します。

続きを読む