元コンサルタントな歴史家―ドイツから見た日本

ドイツの大学で歴史を研究する伊藤智央のブログ。ドイツと日本に関する批判的な評論を中心に海外生活(留学や移住)の実態をお伝えしています。その際には元戦略コンサルタントとしての経験も踏まえてわかり易くお伝えできればと思います

人文科学の論文を英語ではなくあえて日本語で書く理由

自然科学や社会科学では、英語論文を権威のある国際ジャーナルに投稿することが高く評価されます。そうした評価の観点を文系の研究業績にそのまま当てはめて、

  • 「日本語ばかりで研究発表している人文科学系は遅れている」
  • 「人文科学も英語で研究発表しなければ意味がない」

と批判をする人もいます。

しかしそれは、研究分野の本質的特徴の違いを無視した主張です。

ここでは、人文科学の業績が現在どのように評価されるかという現状を紹介するのではなく、人文科学の在り方という観点から、「日本語*1で人文科学の論文を書くことの意義とは何か?」について論じたいと思います。

*1:同じ議論は、日本語以外のマイナー言語にも当てはまります

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ドイツで就職するために学生が出来る4つのこと

ドイツでの就職事情は日本とは大きく異なります。そのため、日本では簡単に就職できるような一部の学生でも、ドイツに来れば就職のチャンスが極めて低いというようなことがあります。

というのも日本とドイツでは、就職の際に求められるスキルが全く異なるからです。つまり、文系で鍛えることができるソフトスキルと呼ばれる

  • コミュニケーション力
  • 協調性
  • 思考力
  • 交渉力

といったスキルはあまり重要視されず、それよりも、ハードスキル、つまり

  • 工学の知識
  • 自然科学の知識
  • プログラムの知識
  • 数学の知識
  • 経営の知識

といった、仕事ですぐ使えるような具体的知識が求められています。ドイツでの就活は、いわゆる理系の学生にとって有利といえます。

では、ドイツで就職するためにはどのようにしてこのようなハードスキルを、会社側にアピールできる形で習得できるのでしょうか?

まず、ハードスキルを持っているということを、他人に説得力をもって提示するためには、以下の二つの方法があるということを頭に入れておく必要があります。

  • 資格習得を以て証明する
  • 実践経験を以て証明する

そのため、ここではこの資格習得と実践経験という二つの軸に沿って、ハードスキル習得に向けた具体的なアドバイスを提示してみたいと思います。

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なぜ外国の歴史を勉強するのか?歴史家が考える4つの意義

学校でも大学でも遠い外国の歴史を勉強することがありますが、

そのように地理的にも時間的にも離れた地域の話をどうして勉強しなければならないのか?

と疑問に思ったことはありませんか?

外国史を扱う歴史家も、

  • 「どうして、そんなことを研究してるの?」
  • 「そんなことを研究して、どんな(現代的)意味があるの?」

という質問を受けることがあります。

そうした疑問を抱くことは当然でしょう。遠い異国の過去の話しなど、自分には関係ないように思えるからです。

「海外の歴史は教養のためだから」という一言で片づける人もいるかもしれませんが、「教養」という言葉はあまりにも曖昧です。そのため、ここでは「教養」という言葉を使うことなく、上記のような素朴な疑問に答えるため、「遠い国の過去の物語り」を勉強することの意義について、私がこれまでの学問生活の中で考えてきた一つの説明を提示したいと思います。

*以下では、国単位で説明していますが、これは説明を簡単にするためです。以下の説明は、「国」という言葉を別の言葉におきかえていただければ、一国史という枠に縛られない研究にも当てはまります

**以下ではあくまでも理念型を説明しています

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【体験談】博士論文を2年以内に提出するための具体的方法

私はドイツの大学で博士論文(歴史系分野)を提出しましたが、合計で1年11か月を要しました。

博士論文提出後にも口頭試験や、国によっては出版*1という条件をクリアして初めて博士号が授与されますが、一番の難関は論文を執筆することです。ここで10年費やしたり、挫折してしまうことも多いでしょう。

ということで、私が博士論文を提出するまでに実際に行ったテクニックをまとめて紹介することで、執筆を予定している、もしくは現在、博論に取り組んでいる人の参考に供したいと思います。

*1:ドイツの場合

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仕事上の夢を現実に変えるための具体的なテクニック

仕事上で夢を持っている人は多いと思います。夢といってもいろいろなものがありますが、組織の中で出世したり、就職や転職で自分のしたかった仕事を得たり、自営業であれば特別な案件を獲得したり、ということがあるでしょう。

しかし、夢とは、その言葉の通り、なかなか実現が難しいものです。

そこでここでは、どのようなことをすれば実際にこの夢をかなえられるのかについて、1つのアプローチを説明したいと思います。その際には、希望ポストやマーケットポジション、希望案件の獲得を念頭に話していきます。

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