上昇志向のあるビジネスパーソンであれば一度は考えるであろうMBA留学。
実際はどんな困難があり、どんなことが得られ、卒業後にはどんなキャリアが待っているのでしょうか?
そういった疑問に答えるためにも、今回はドイツ在住のよしのさんに体験談を詳細に語っていただきました。まさにMBA体験が「丸わかり」です。
---- 以下、寄稿文 ----
こんにちは、よしのです。
今回、伊藤さんのブログにて自分のMBA体験をお話しする機会をいただきました。
私は2015年9月〜2016年9月にかけて、ドイツのマンハイム大学が提供しているマンハイム・ビジネス・スクール(以下MBS)という1年制のフルタイムMBAプログラムに通いました。
この記事では、そうしたみずからの体験を元に、MBAではどんな授業を受けるのか、学生生活はどんな感じなのかについてMBAに興味がある方にもそうでない方にも、わかりやすくご紹介したいと思います。現時点で最も詳しいドイツMBA体験記ではないかと思います。
「MBAに行きたい!」
MBA留学をしようと思ったきっかけ
私の場合、前職の上司の1人の言葉がMBA留学を志したきっかけでした。
その人は昔アメリカの大学で講義をしていた経歴があるそうで、ことあるごとにいろいろな人に学業を勧める人でした。
とか言われ、大学を卒業してからまた学校で勉強するという発想のなかった私は、「そんな道もあるのか」と目から鱗が落ちました。
MBAである理由
当時、私は新卒で入社した会社が初めてのM&Aで買収した企業に日本から出向しており、人事部門にいたこともあって組織変革の難しさを毎日感じていました。
もともと買収を繰り返すような弱々しい基盤の組織であるうえに、言語・文化の壁、いろいろな立場の人たち同士の相互理解の不足、厳しい金銭状況、入れ替わりの激しい人員などが複合的に影響し、一言でいえばカオスでした。
会社の規模が小さくなった分、経営者を間近に見る機会は日本にいた頃よりも増えました。CEOやCOO、VPの隣の部屋で仕事していましたので、彼らの忙しさや責任の重さ、ときに立ち回りのうまさ、一気にプロジェクトを進めるときのリーダーシップなどを垣間見る機会もありました。それでも会社の状況はなかなか改善しません。社内の雰囲気も決して良いとは言えませんでした。
私はこの経験を通して、組織再編とそれに伴う組織変革に強く興味を抱くようになり、組織と組織・人と人同士がいかにうまく寄り添って問題を明らかにし回答を導くか、その技法を学びたいと思うようになりました。
日系企業では専門分野を極め、昇進していって役員になり、子会社に経営層として送られることが珍しくないですが、指揮者が指揮の勉強をするように、経営者は経営について一度腰を据えて勉強することが一助になるはずだということがそのとき思ったことでした。
当時の自分は目の前のことに精一杯で、やるべきことをやれておらず、そのために必要な能力も権限も不足していると感じていました。もう一度学校へ行きたいとは何となく思いつつも、どの分野へ行くか決めかねているとき、知人の一言からMBAについて調べ出し、国際的な環境で経営について学ぶ場であると知りました。そして、「ここに今の状況を打開するヒントがあるのではないか!?」と一気に修学意欲が高まったのです。
ドイツのマンハイム・ビジネス・スクール(MBS)を選んだ理由
MBAに行くことを決めてからは、どんな学校があるのかということを調べ始めます。私の場合、最初からドイツに近い欧州圏内を想定していました。というのは、当時付き合っていた人(今の夫)がドイツで大学院に通っていたからです。
イギリスやフランス、スイスなどのMBAにも興味を持ちましたが、割と早い段階でドイツのMBSを第一志望とすることに決めました。
そのときはドイツに住んで3年半ほどでしたが、日本以外に自分の中に軸となる国を持ちたいと思っていましたし、ドイツという国についてまだ知るべきことがあると感じていました。加えて、ドイツは学費が他国よりも比較的安く、MBSはドイツ国内においては当時Financial TimesのMBAランキングで1位でした。MBA卒業後にドイツで就職活動をするにも、ドイツ企業とつながりの強いMBSへ行くのは合理的な選択でした。オープンデーで聴講したマーケティングの授業が興味深かったことや、説明会で出会ったアルムナイ(OB・OG)、個人的に話を聞いたOBの人柄に好感が持てたこともMBSを受けることを後押ししました。
MBSには
- 1年制のフルタイムMBAと、
- 仕事をしながら通える2年制のパートタイムMBA
がありましたが、私は学校に集中したかったのと、卒業後は転職したいと考えていたのでフルタイムMBAを選びました。
入学準備
そうと決まれば、入学するための準備です。
必要書類
MBSの入学申請に必要だったものは主に以下のとおりです。
- 願書(内容は顔写真、学歴、職歴、言語能力、志望動機、趣味など)
- 履歴書
- 関連する卒業証明や成績証明など
- GMAT/TOEFLまたはIELTS
- 推薦書2通
- 申請手数料100ユーロの支払い証明
大学側が挙げていた理想的な候補者が備える条件は以下のとおりです。
- 学士の保持
- 卒業後3年以上の職務経験
- 潜在的リーダーシップ
- 国際性
- 英語力
これらは申請書類と面接から総合的に判断されます。
GMAT/TOEFL
どこのMBAプログラムに申請するにも専らGMATやTOEFLといった試験の点数が必要です。
ウィキペディアの説明を借りると、GMAT(Graduate Management Admission Test)は、「大学院レベルにおいてビジネスを学ぶために必要な分析的思考力、言語能力、数学的能力を測るための試験」、TOEFL(Test of English as a Foreign Language)は、「英語圏の高等教育機関が入学希望者の外国語としての英語力を判定する」試験です。
各試験ごとの必要得点は受験先によって異なり、当然ながら人気のMBAプログラムになるほど足切り点は高く、審査も厳格です。
私の場合、MBAを受けると決めてから受験したのは、GMATが3回、TOEFLが2回です。それぞれ250ドル近くする高額な試験を短期間に何回も受けたのは、入学できるかどうかギリギリのラインだったからです。正直、点数はクラスの中でどんけつの方だったと思います。
試験の準備を始めてから最後の試験を受けるまでの期間は半年強で、勉強に使用したのは主にGMACやETSなどといった各試験の作成機関が出版している過去問題集です。
私が使っていたGMATのテキストは以下のものです。
2020年度版はこちら
推薦書
推薦書は、ドイツで働いていたときの元上司の1人と、同じくドイツでお世話になっていた取引先の方に書いていただきました。どちらもドイツ人です。ドイツ人に推薦をお願いしたのは、ドイツの就業環境を垣間見た経験上、ドイツの大学に提出するならその方が話が早そうだと個人的に思ったから、また日本人である自分の国際性の裏づけにもなると思いました。
面接
一次面接(スカイプ面接)
11月に願書を提出してから2週間ほどで書類審査に通った旨連絡があり、年始のスカイプ面接に呼ばれました。
面接官は入学希望者対応をしているAdmissions Managerです。聞かれたのはごく基本的な内容で、
- 志望動機
- 職歴
- 今後のキャリア目標
など。
面接の内容も事前におおよそメールで通知され、想定問答を作って対処しました。
二次面接(直接面接)
一次面接の3週間ほど後に二次面接が行われました。
可能ならば直接大学まで来て欲しいが、無理ならスカイプでの面接も可能とのことでした。私は自分の候補者としての売りが弱いと感じていたので是が非でも直接行かなければと思い、おりしも日本に帰任する2日前に万障繰り合わせて大学まで出向きました。
二次面接の面接官はProgram Directorで、内容はケーススタディがベースでした。基本的な準備日数が定められていて、その日数が確保されるように面接前にケースが送られてきます。
私のときは格安アパレルチェーンを展開する企業のマーケティング戦略についてでした。資料の中ではこの企業の業績変化、店舗展開、社歴、価格帯、顧客の購買傾向などが紹介されており、当該企業が業界においてどのような優位性を持っているか、業界での立ち位置についてどのような特性が見受けられるかなどを分析するよう求められます。これをもとに面接で確認されるのは、
- 自分の知識
- リサーチ内容
- プレゼン・スキル
などです。
当時、自分が住んでいた場所の近くにはこのブランドの店舗はありませんでしたが、ちょうど面接の準備をしている最中にロンドンへ行く予定があったので、そこで実店舗を見に行きました。その間もオンラインで当該企業の公式情報や、好調な業績について分析した記事、不祥事のニュースなどをチェックし、自分なりに設問への答えを用意して臨みました。
面接は緊張しましたが、当時のProgram Directorはとても感じの良い人で、スムーズに進みました。
この面接の2日後、日本に降り立った空港でメールを確認し、MBSに合格していることを知りました。喜びで飛び上がったのは言うまでもありません。
日本まで送られてきたプログラムの契約書
入学準備
さて、日本に帰任したと同時にMBAに行くことが決まった私は、これを上司にいつ言おうかいつ言おうか、胃を痛めながらしばらく過ごしました。帰任してすぐ言うのもなんです。しばらくは昔の職場の仕事のリズムを掴むのに集中し、新年度が始まる春ごろに面談で報告しました。日本で私を育ててくれた親のような元上司は、薄々そういうことになると想像していたようで、特に責められることも引き留められることもなく、大きめの仕事が終わった6月末頃から2ヶ月以上ある年休消化に入らせてくれました(超ホワイト)。
この間に、私はドイツに舞い戻り、彼氏の家に居座りつつマンハイムの家を探して、奇跡的に渡独から2週間以内に賃貸契約までこじつけ、8月からマンハイムでの生活を始めました。
住んでいた家の周辺
大学環境
マンハイム
マンハイム大学の名のとおり、MBSがあるのはマンハイムという街です。フランクフルトから南に100km弱、人口は30万人ほどです。
中央駅からほど近いマンハイム城の周りは、円形に囲われた区域の中に碁盤の目状の道路が通っており、ここが旧市街(Innenstadt、通称Quadrate)と呼ばれるマンハイムの中心部です。この中心部、一言でいえば汚いです。残念ながら住むのにウキウキする場所ではありません。おおっと思う建物はお城以外にほとんどなく、新しい建物がところ狭しとコンセプトもなく建てられている印象です。
マンハイムは外国人比率が高く、私が住み始めた当時で約25%と聞きましたが、MBAに通っている1年の間に欧州難民危機の影響もあり、目で見て明らかに外国人比率が上がりました。
マンハイムの街中
MBSの校舎
マンハイム大学は昔のマンハイム城の一部を校舎として使用しており、MBAプログラムのパンフレットなどにもお城の写真が多用されています。ところが、MBS生に関しては実際にほとんどの授業を受講したのはECD(Educational Center Dalbergplatz)と呼ばれるごく普通のビルの中でした。これに関しては多くのクラスメイトが文句を言っていました。
マンハイム城(大学)
ECDから見える景色
卒業する頃に工事が始まった立派なMBS用のセンターがお城の敷地内にあるはずなので、今はお城に授業を受けに行く機会も、もしかしたら増えているのかもしれません。
寮
MBSの学生の多くは寮に住んでいました。
寮は大学から徒歩10〜20分圏内のところに2箇所ありました。間取りは基本的に1Kでシャワー・トイレが各部屋についていたと思います。寮という名の割に費用は決して安くなく、400ユーロ(約5万円)台。
マンハイムの家賃はミュンヘンなどの大都市と比べるとそんなに高くないので、それだけ出すなら自分で部屋を借りた方がいいやと思い、私は大学から路面電車で15分くらい行った中心部の外に住んでいました。家賃は寮と同じくらいでしたが、部屋は2部屋で湯船もあり、落ち着いた暮らしができるので気に入っていました。
住んでいた部屋
寮生は大学へ行っても寮へ帰っても周りがクラスメイトだらけで、勉強を助けあったり一緒に遊んだりするにはいいのですが、一人の時間や空間を大切にしたい人には疲れる側面もあると思います。
寮の廊下で飲み会
クラスメイト
私が入学した2015年9月始まりのMBSのクラスメイトは、総勢53名で、23か国から来ていました。出身国の比率として高かったのは中国、インド、ドイツ、ついでアメリカ、韓国。日本人は私1人でした。キャリアバックグラウンド的には様々な人がいましたが、エンジニアと経理畑が多い印象です。年齢は一番若くて26歳、一番年配が39歳と一回りくらいの幅があります。
自分はそれまで日本、アメリカ、ドイツに暮らしたことがありましたが、南米や中東、ロシアなどの人とは話す機会がなく、身近にこれらの出身地の人がいるというのは新鮮な体験でした。
学費
私が入学した当時の学費は年間で3万6000 ユーロ(当時で約480万円)です。早く願書を出したので、早割(Early Bird Reduction)という2000ユーロの割引が受けられました。
割引後の3万4000ユーロは2回払い(支払時期は入学前、追加割引あり)と5回払い(3回が入学前、2回が入学後)が選べました。私の場合、円をユーロに換金して払わなければならず、通学中に円が上がるかもしれないと思い5回払いにしました。
学費に加えて在学中の生活費・娯楽費等は、すべて貯金から出しました。この貯金は出向中に貯めたものです。返すがえす、出向させてくれた会社に感謝しなくてはなりません。
確認すると、現在の学費は3万9500ユーロ(約500万円)だそうで、5年で3500ユーロ上がっています。入学申請の手数料も値上がりしたようです。他の学校を見ても年々学費は上がっているので、興味のある方は早く入学申請した方が得かもしれません。
ちなみにフルタイムMBA生のうち、社費留学は2人でした。パートタイムMBAになると、ほとんどが社費留学です。
入学までのスケジュール
ということで、振り返ると私のMBA入学準備は1年半ほどで、以下のようなスケジュールでした。
2014年2月 | MBAに興味を持ち出す |
2014年3月〜10月 | 各大学を調査(資料請求、説明会・オープンデー参加) |
2014年6月〜2015年1月 | GMAT申込、受験(8月、11月、1月) |
2014年10月〜12月 | TOEFL申込、受験(11月、12月) |
2014年11月 | 願書提出 |
2015年1月 | 一時面接(スカイプ) |
2015年1月 | 二次面接(大学にて) |
2015年1月 | 合格 |
2015年6月 | 最終出社 |
2015年7月 | 家探し |
2015年8月 | 引越し |
2015年9月 | 入学 |
MBAのプログラム
まず、MBSのMBAプログラムは5つのトラックに分けられています。
これらのトラックは
- ドイツ
- ユーラシアン
- トランスアトランティック
- ヨーロピアン
- グローバル
と名付けられていますが、要は在学中に何回どこに留学するかでトラックが分かれます。
1年を4つのタームに分けた3期目と4期目は必ずMBSにいなければなりませんが、1期目または2期目、もしくはその両方にMBSの提携校へ留学することができます。当時の提携先としては、
- シンガポールのNUS(National University of Singapore)
- カナダのQueen‘s School of Business
- フランスのESSEC Business School
- 英国のWarwick Business School
などがありました。
私はずっとMBSで学ぶドイツ・トラックを希望しました。
理由は、留学すると滞在費や交通費など出費がさらに嵩むことと、1年という限られた期間に短期留学を詰め込んでも、引越ししたり生活に慣れたりするのにバタバタするだけだと感じたからです。MBSにいることが自分にとってはすでに海外留学なので、他の国にわざわざ行きたいという気持ちもあまりしませんでした。
ほとんどのクラスメイトはドイツ・トラックを選択していましたが、別のトラックを希望していたのはドイツ出身の子が多かったです。気になるMBAプログラムがもともと複数ある人は、こうした交換留学を活用するといろいろな校風を体験できて良いかもしれません。
4つに分けられたタームの1期目と2期目の2/3はCore Coursesと言って必修の授業を受けます。2期目の1/3と3期目はElective Coursesと言って選択制の授業です。
授業以外に、重要なプロジェクトが2つあります。1つ目は「社会貢献プロジェクト」(Social Sustainability Project、通称SSP)です。2期目〜3期目にプロジェクトを実行し、3期目にProgram Directorなどへの結果報告プレゼンがあります。
もう1つは「ビジネス・マスター・プロジェクト」(Business Master Project、通称BMP)で、4期目はまるっとこのプロジェクトに使われます。「ビジネス・マスター・プロジェクト」はMBSが提携している外部の企業に対してコンサルティングプロジェクトを行う、またはスタートアップのビジネスプランを独自に練るというものです。修士論文もこのプロジェクトの内容について書きます。
「社会貢献プロジェクト」と「ビジネス・マスター・プロジェクト」の2つのプロジェクトは4〜5人で構成されるチーム(Multi-Competence Team、通称MCT)で行い、このチームのメンバーは1期目の最初に発表されます。一緒のチームになったクラスメイトは、以後同級生の中でも最も多くの時間を一緒に過ごすことになる重要な人たちです。
1期目(2015年9月〜12月)
1期目:授業
前述のとおり、1期目は基本的に必修授業を受けます。入学式の後、チーム・ビルディングや写真撮影、オリエンテーション的な内容がちらほらあり、それと同時に授業が始まります。
受けた授業は以下のとおりです。
- 財務会計事前準備コース(Pre-course Financial Accounting、希望制)
- 定性・定量調査手法(Qualitative and Quantitative Research Methods)
- 財務会計の基礎(Fundamentals of Financial Accounting)
- マーケティングの基礎(Marketing Fundamentals)
- 戦略マネジメントの基礎(Fundamentals of Strategic Management)
- 財務の基礎(Fundamentals of Corporate Finance)
- マクロ経済(Macroeconomics)
これに加えて、ドイツ外から来た生徒にはレベル別のドイツ語の授業があります。MBAの授業はすべて英語で行われます。
基本的に各授業は5日間の日程となっています。5日間同じ授業が月〜金まで続くことはほとんどなく、授業によって毎週月曜だったり指定の日付だったりします。多くの場合、内容はレクチャーとグループ・ワークの組み合わせで、成績は授業内でのグループ・ワークやプレゼンおよび個人で取り組むケース・プロジェクト、日程の途中または最終日に実施される試験の結果などの組み合わせで評価されます。
各授業でグループ・ワークを実行するチームメイトは、MCT(「社会貢献プロジェクト」と「ビジネス・マスター・プロジェクト」を行うチーム)とは異なり、授業ごとに発表されます。いろいろな人と満遍なくチームが組まれるようアドミンが注意しているので、各種の授業をとおしてクラスメイトのほとんどと一緒にチームを組むことになります。授業ごとにチーム内でのチームメイトの貢献度を匿名で確認する機会(peer rating)が与えられ、成績に反映されます。
1期目:1週間のスケジュール
1期目のある1週間の予定を開くと、こんな感じです。
月曜 | 09:00-13:00 | F&A(Group Work #2締切) |
14:00-18:00 | F&A | |
18:00-19:00 | MCTミーティング | |
火曜 | 09:00-13:00 | Entrepreneurship Workshop |
17:00-19:30 | Marketingミーティング | |
水曜 | 授業なし | |
Q&QとMarketingのグループワークなどの準備 | ||
木曜 | 09:00-11:00 | Q&Qミーティング |
ドイツ語の予習 | ||
17:00-19:00 | Marketingミーティング | |
金曜 | ドイツ語の予習、家の掃除など | |
16:00-18:30 | ドイツ語クラス | |
19:30- | ホッケー観戦 | |
土曜 | Marketing個人ワーク、Q&Q予習 | |
翌週以降に始まる授業の確認 | ||
買物 | ||
21:00- | クラスメイトの家でパーティー | |
日曜 | Q&Q課題 |
私のスケジュール帳
見ていただければわかるように、この週は大学の授業・ワークショップは月・火の2日しかありません。それもそのはず、5日間の授業が6つあっても、3ヶ月のうちの1ヶ月半くらいしか埋まらないので、平均して土日を抜いた週の約半分は自由ということになります。
え!?暇そう?どっこい、そこまで暇でもありません。
確かに授業自体は余裕を持ってスケジューリングしてあり、そこまで詰まっていないのですが、予習や課題の準備、グループワークのためのミーティングが、複数の授業・プロジェクトのために並行して進むので、やることはいろいろあります。1期目ではありませんが負荷の高い授業だと、30ページくらいある課題文を毎回1〜2本読んで、プレゼンも毎回準備しないといけないケースもありました。
1期目:印象に残った授業
1期目で印象に残った授業は「定性・定量調査手法」(Qualitative and Quantitative Research Methods、以下、Q&Q)や「マーケティングの基礎」(Marketing Fundamentals)です。
Q&Qはそれ以降の授業の下地となる調査手法についてで、ビジネス上の課題を解決するためにどのようなデータやメソッドを用いればよいか、実証的データを分析して仮定をどのように裏付けるか、実証的調査の設計の練習などでした。数学的な部分は今資料を見ても正直ちんぷんかんぷんですが、目的に合わせたアンケートの取り方などは企業で役に立ちそうだなと思います。
「マーケティングの基礎」ではマーケティングの機会を分析し、戦略を策定するための主要なコンセプトやツールを学びます。すべてのチームにケーススタディに基づく授業内でのプレゼンが課されていて、プログラムが始まって間もないころだったこともあり皆必死で準備をしていたのでよく覚えています。私たちのチームは某有名コーヒーチェーンのマーケティング戦略を分析しました。
自分はプレゼンが大の苦手。昔から人前に立つと塩をかけられたなめくじのようになってしまいます。英語で大勢の前でプレゼンをすることにも慣れていません。目で見てわかりやすいスライド作りと、はっきりと相手に伝わるような説明に気を配り、台本を作って何度も練習しました。
プレゼンの後、クラスメイトが私のパートを「集中して聞けた」と言ってくれたときはうれしかったです。
1期目:飲み会
前述の週の予定を見ると、ホッケー観戦と週末のパーティーに行っていますが、1期目はほぼ毎日どこかでパーティー・飲み会が行われていました。特に寮生は毎晩廊下や誰かの部屋でパーティーです。飲み会でプレゼンスを発揮することが元来生きがいだった私も、さすがに辟易するほどでした。
マンハイムはドイツ屈指のホッケーチーム、Adler Mannheimのホームです
クラスメイトの中にはフランクフルトやハイデルベルクの近郊から通っている子たちや、小さい子供を持つ親(育休中のツワモノも)が何人かいたので、もちろん全員がいつもパーティーに来るわけではありません。が、こういう場を通じてクラスメイトと交流を深めることもMBAの醍醐味の1つだと思います。
2期目(2016年1月〜3月)
2期目:授業
2期目は必修の授業が4つ、選択制の授業が2つです。
<必修授業>
- 管理会計(Managerial Accounting)
- 組織行動と変革マネジメント(Organizational Behavior & Change Management)
- オペレーション管理(Operations Management)
- 企業倫理とCSR(Ethics & CSR)
<選択制授業>
- 応用財務(Applied Corporate Finance)
- 国際マーケティング(International Marketing)
- イノベーション&クリエイティビティ・マネジメント(Innovation & Creativity Management)
- 企業合併と組織再編(Corporate Mergers & Restructuring)
選択制では「応用財務」と、「企業合併と組織再編」をとりました。
2期目:印象に残った授業
2期目は「組織行動と変革マネジメント」や「応用財務」などが印象に残りました。
「組織行動と変革マネジメント」は、まさに私が会社で悩んでいたことと非常に関連性が高いテーマでした。レクチャーで学んだのは、個人・グループのパフォーマンスを高めるためのインセンティブやルール、組織風土の働き、リーダーシップのスタイル、変革管理の8ステップ・プログラムなどです。「組織行動と変革マネジメント」の授業の中でもチームごとのプレゼン発表があり、私たちのチームはとあるオランダの電子機器企業の歴史や変換点を紐解き、その企業の抱える人々、組織風土、歴代の経営層のリーダーシップ・スタイルなどを業績の変化を追いながら分析しました。この授業は、自分が前勤めていた環境において何が問題だったのか、どうしたらもう少し良くなり得たのかを考える貴重な機会をくれました。
数字も財務も大嫌いですが、「応用財務」はとって良かったです。ここではM&Aの際の企業価値の計算や、最適な資金調達、製品マーケット戦略と財務の関係などがテーマでした。授業内ではケースに基づいた計算作業がたくさんあり、飽きることがありませんでした。
よく覚えているのは、チームで一緒になったYのことです。
彼女はドイツ語のクラスでも一緒だったのですが、とてもシャイな子で、発表のときの声なども小さめ、授業で積極的に発言することはほとんどなく、クラスメイトとの付き合いも同じ国の仲良くしている一部の子と話している感じでした。ただ、ドイツ語の授業で地道に単語カードを作ったり、しっかり予習したりしてきているところから真面目さは伺えました。彼女はもともと経理畑の出身で某有名会計事務所にいたこともあるのですが、「応用財務」の授業で一緒になったときは自信のある口調で他のメンバーを引っ張ってくれて、とても頼もしい一面を見せてくれました。
授業であまり発言しない目立たない子が、実はすごく数字に強かったり分析に長けていたりというのは他にも何例もありました。一見しただけではその人の強みはわからないものだと強く思ったできごとです。
3期目(2016年4月〜6月)
3期目:授業
3期目の授業はすべて選択制です。
<選択制授業>
- グローバル企業戦略(Global Corporate Strategy)
- 事業・企業税制(Business & Corporate Taxation)
- 責任あるビジネス交渉(Responsible Business Negotiation)
- データから導く見識(From Data to Insights)
- サプライチェーン・マネジメント(Supply Chain Management)
- 戦略的人材管理(Strategic Human Resource Management)
- グローバル情報管理(Global Information Management)
- 消費者行動(Consumer Behavior)
私は「グローバル情報管理」と「消費者行動」以外の6つをとりました。
3期目:印象に残った授業
3期目に特に印象に残った授業は、「責任あるビジネス交渉」と「サプライチェーン・マネジメント」です。
特に「責任あるビジネス交渉」は、1年を通して最も記憶に残った授業でした。参加した生徒は、皆口を揃えてこの授業を高く評価していました。
1対1で給与交渉したり、チーム対チームで石油価格の取り決めを交渉したりと、ケースに基づく模擬交渉がふんだんにあり、交渉においてはまってはならない落とし穴にまんまとはまる体験をすることで、学びが頭に刻み込まれるような感覚でした。授業で使った交渉準備シートも載っている『The First Move』という本は、読み物としても面白く、卒業した後も面接の準備などの際に開いています。
Amazon.jpに翻訳本がありました。
英語版はこちら。
「サプライチェーン・マネジメント」ではオンラインのシミュレーションゲームを使って物流網戦略を練り、その結果をチームごとに競い、学びをプレゼンにまとめるということをやりました。ゲーム内では商品の特性、市場の季節性や参入条件、オーダーサイズ、関連する日数や価格などの細かな設定があり、特定の国で工場を拡大すべきか否かや、倉庫を新規に建設すべきか、どこで建設すべきか、どのように配送すべきかなどをチームで決めます。3日間深夜を含めてシミュレーションが常に動き続け、刻々と状況が更新されます。
最も実績をあげたチームのいくつかが最後に皆の前で発表を行いました。ここで記憶に残るのはクラスメイトのMのことです。
彼は優勝チームのメンバーの1人でした。チームの発表自体も自分たちが想定していなかったことがいろいろと考慮されていて感動したのですが、彼のこのゲームへの嵌まり込みっぷりがすごく、別のチームの仲の良い子と「サプライチェーン・マネジメント」の授業が終わった後もずっとこのシミュレーションのことを話し合っていて、2人で関連するテーマをもとに大会に出て副賞をとったとその後言っていたほどです。
彼はMBAに入る前は自分で起こした会社のCEOを務めていて、とにかく頭が良い人でした。私が今までの人生で見てきた人の中で一番頭が良い人ではないかと思います。単に記憶力が良いとか、効率が良いとか言うよりも、先の先の先を見ている感じです。そしてものすごく粘り強い人でした。2期目でとった授業「オペレーション管理」で一緒のチームでしたが、チームの提出物に盛り込まれる計算を朝の2時までブラッシュアップしていました。別に他の人に強制したり、されたりするわけではなく、彼にとっては自分の好奇心や納得感が満たされることが重要なのだと感じました。そんな彼は私同様、またはそれ以上に人前に立つことが苦手で、裏方はなんでもやるからお願いだからプレゼンやって、というのが口癖でした。人それぞれ、得意・不得意があるんだなぁというのがよく分かります。
3期目:就職活動、企業イベント
さて、MBAも終盤に入り、皆次のステップを見据えて動き出します。
卒業後の進路選択、就活です。MBSにはCareer Developmentチームがおり、履歴書作成や面接の際のアドバイスをくれたり、企業を招いてプレゼン・ネットワーキングイベントを開いたりしています。3期目はそれまでにも増してこのようなイベントが増えます。
3期目:「社会貢献プロジェクト」
「社会貢献プロジェクト」も佳境に入ります。1・2期目にコンセプトを練り、計画を準備し、3期目にプロジェクトを実行したうえで、発表にまとめました。
私たちのチームでは、プロのアーティストの協力を得て、難民の人たちと一緒にアートをつくるワークショップを開催し、それを売って得られた資金を難民を支援する団体に寄付するということを行いました。どのような問題を拾い上げるか、どのようなパートナーを見つけ出すか、どのような方法でプロジェクトを実行するか、どのようにして資金を得て収支をプラスにするか、何もないところから自分たちで構築していきました。「ビジネス・マスター・プロジェクト」はあらかじめ提携企業が設定したテーマがありますが、「社会貢献プロジェクト」は自分たちで一から自由に決めることが多く、社会貢献の側面を強く意識するので、むしろ小さなビジネスを起こすトレーニングになると思います。
欧州難民支援の問題を取り上げたのは、チームのうちの1人がこの問題への情熱がものすごく強く、教会団体が開いている地元の難民支援のイベントを訪問したり、難民が住んでいる施設を訪問したりして、他のメンバーを引き込んでいったからです。彼は入学前からマンハイム近郊に住んでおり、ドイツ人ではありませんがドイツに長年いて、家族もドイツ人、これからもドイツにいるであろうという状況で、難民の問題を自分ごととして捉え大きな関心を持っていました。彼の執念と情熱でプロジェクトが動き出したと言っても過言ではありません。
ワークショップ参加者の出身国は一様ではなく、いろいろな言語への翻訳・通訳が必要だったのが大きなハードルの1つでした。イベント告知ポスターをパキスタン出身のクラスメイトに頼んでウルドゥー語やパシュトゥー語に翻訳してもらったり、ワークショップ当日もインド出身のチームメイトが英語から通訳した言葉を多言語が使える参加者の人に頼んでまた別の言葉に通訳してもらったりと、できるだけ参加者の多くが説明を理解できるよう尽力しました。参加者の中にはドイツに来てから一番楽しいイベントだったと言ってくれる人もいてうれしかったです。
費用は一部をクラウドファンディングで集めたほか、できたアートワークを大学構内で販売し、寄付も集めてそこから出しました。イベントでアートの作り方を解説してくれたアーティストは、交通費等実費のみで力を貸してくれ、必要経費を引いた後の利益は難民支援を行う教会系のパートナー団体に寄付しました。利益の額自体は小さなものですが、アートがいろいろな人の手に渡り、彼らの家に飾られ、今後もそれを人が見るたびに問題について話され思い起こされるきっかけになると思うと、お金だけではない価値がプロジェクトにあったと思います。
自分は欧州難民支援の問題を見聞きすることはあれど、実際に難民の人たちと話す機会はそれまでなかったので、その人たちと一緒に何かをやることができたのは貴重な経験でした。クラスメイトについてもそうですが、私の場合遠い国のことをどこか別世界のように思っていて、自分とはまったく違う人がまったく違う考え方をしていると思っているふしがありました。実際に話すと、そうではない側面もたくさんある、共通することの方が多いということに気づくことができます。
3期目:「ビジネス・マスター・プロジェクト」
3期目に入ると「ビジネス・マスター・プロジェクト」も本格的に動き出します。
どのような提携企業があり、それぞれどのようなプロジェクト内容なのかという説明を受け、チームとしてピッチ(立候補)したい先を絞り込みます。自分たちはどのような強みを持つチームで、それが各プロジェクトの達成に必要な条件とどのように適合するかを企業の担当者の前でプレゼンします。
私たちのチームはフランクフルト近郊のコンサルティング企業のプロジェクトを担当することになりました。
4期目(2016年7月〜2016年9月)
4期目:「ビジネス・マスター・プロジェクト」
4期目は基本的に「ビジネス・マスター・プロジェクト」に集中します。授業はもうないので、毎日会うのはほぼ自分のチームメンバーのみ、大学へ行けば廊下で別のチームメンバーに会うくらいです。
「ビジネス・マスター・プロジェクト」の細かいプロジェクト内容は守秘義務があるので省きますが、ざっくりとやったことは以下のとおりです。
- 7月
- プロジェクト遂行に必要なインタビューや下調べ
- チームで方向性を定めるための議論
- 最終アウトプットの叩き台を作ってこねまわす
- 8月
- 最終アウトプットをひたすらブラッシュアップ
- クラスメイトにも協力してもらってテスト
- アウトプットを企業に提出
- プロジェクトの内容を修士論文としてチーム全員でまとめる
- 企業の担当者とProgram Director等の前で最終プレゼン
- 修論を印刷して全員でサイン、提出
9月に入ったら月半ばの卒業式までは、ほぼ皆休暇をとっていました。私も卒業式までの2週間弱、日本に帰って羽を伸ばしました。
4期目:卒業式
入学式からちょうど1年経つその1日前。晴ればれとした気持ちでまたクラスメイトが勢ぞろいします。
卒業式はマンハイム城のど真ん中にあるKnights’ Hallと呼ばれる広間で行われました。ザ・お城という雰囲気のこの場所に入ったのは卒業式の時だけです。
なかなか雰囲気のあるかっこいい場所ですよ
ここで卒業生代表のスピーチを聞いたり、1人ずつ卒業証書をもらったり、卒業式でよく見る黒い四角い帽子を皆で空中に投げて写真を撮ってもらったりします。
レンタル卒業服に身を包む私
1年の密な時間もこれでおしまい、卒業後クラスメイトは方々へと散っていきます。
4期目:就職活動とその後
自分は2015年12月くらいからぼちぼち企業にアプライしだし、2016年の7月以降は一層腰を入れてアプライだけはしていましたが、面接までいくこともなかなか難しく、卒業する時点で次の働き口に関しては白紙の状態でした。
卒業してからも、しばらくはマンハイムに住みつつ、ドイツ語の勉強をしながら就活しました。見通しが立たないまま貯金がどんどんなくなっていったので、2017年1月くらいにフリーランスになることを思い立ち、翻訳業を始めました。今もドイツで翻訳家をしています。
MBAに行ってみた感想
知識に加え実践がやはり重要
私は主に経営についての知識やノウハウを求めてMBAに行こうと思ったわけですが、これに関しては知識欲という点ではある程度満たされました。
が、MBAに行く前に働きながら抱えていた問題に、卒業後対処できるようになったかというとはてなマークです。組織全体でもっとこうしたら良かったのではないかと考察はできても、いざ自分が同じ状況に立ったら、それを変えられるだけ動けるかというと、大きな自信はありません。
MBSに来てプレゼンをしてくれた企業の中に、とある企業再建コンサルタントがありました。実際の再建事例をもとに彼らがどのような仕事をしているのかをプレゼンしてくれて、私はPost-Merger IntegrationやChange Managementに興味を持っていたので、彼らの話が非常に面白く感じられました。質疑応答のとき、プレゼンしてくれた人に「なぜ企業は変われなかったのでしょうか?」と尋ねました。するとその人は、「簡単な算数だ。やるだけだ。」と言いました。
私は「自分、弱くてすみません…」と思わず涙が出そうになりました。そのとき、仕事というのは責任を取ってあらゆる困難と抵抗に立ち向かうことなのだと改めて思いました。
当然と言えば当然のことながら、「知識がある」=「仕事ができる」ではありません。知識やロジックは前提で、仕事を達成するためには場数を踏んで鍛錬すること、そして泥臭い精神的な部分がやはり必要なのだと思います。
人は一見しただけでは分からない
前述のように、クラスメイトの中には一見して何を考えているか分からなかったり、自分を表現するのが上手でなかったりするものの、実はすごくある分野に長けているという人たちがいました。
人を多方面から総合的に見るには、いろいろな状況・場面を共有することが有効で、それにはある程度時間がかかるものだと思います。
フラットな組織で働く心地よさ
上下なくフラットな関係でいろいろなチームメンバーとワークやプロジェクトができるのは最高に心地良かったです。
どんなに年上でも、どんな職歴でも、クラスメイトとしてはお互い対等です。フラットな間柄でも、目的が共有できていればチームは機能するのだと思いました。フラットな関係は言いたいことを言いやすいのでストレスが溜まったり、問題が放置されたり、チームがぎくしゃくしたりすることが少ないです。自分はできる限りフラットな関係で仕事ができる環境を今後も選びたいと思いました。
自分の得意分野でチームに貢献する
チームの目的に応じて、その時々でいろいろな役割があります。
- アイデア出し
- 進捗管理
- 会計
- 渉外
- デザイン
- プレゼン
- 言語
などなど…
メンバーが得意なこともそれぞれ違います。自分の得意を認識して、貢献できることを見つけ、できることを精一杯やることで能動的にチームの一員になれると思います。
土台作りの重要性
「ビジネス・マスター・プロジェクト」が2ヶ月の間に形になったのは、素晴らしいメンバーたちの力に加え、自分たちが最初にしっかりコンセプトを固めたからだと思います。
一度細かい作業に入り出したら、そこから土台に戻って変更するのは時間がかかりすぎます。逆に迷うことなく突き進めばいいと分かっていれば、作業スピードは高まりますし、細かな部分まで凝ることができます。私は考える前に動き出してしまうタイプなので、この体験は非常に印象的でした。
同級生のその後や交流関係
卒業後ドイツに残ったクラスメイトは半数ほどです。マンハイムはフランクフルトに近いので、フランクフルトで就職した人が多かったです。ドイツ近隣の国で就職したり、母国へ帰ったりした人もいます。またドイツで就職したあと、卒業後数年して母国に帰るという人がちらほらいます。
就職先は業界大手からスタートアップまでいろいろです。コンサルに就職した人も複数いますし、元々働いていた会社に戻った人もいます。
MBAを出たからといって収入がうなぎ上りということは、ゼロではありませんがかなり稀なようでした。
卒業した後もクラスメイトとの交流は続いていて、クラスメイトの1人であるJの結婚式のときなどはクラスの1/3くらいが集まりました。
スペインのマラガで披露宴に参加しました
クラスメイトの誕生日会や送別会などの企画が持ち上がれば、卒業から5年経った今でも、遠いところから人が集まります。
クラスにしかない雰囲気と居場所があるので、集まるといつでも楽しいです。
特に親しくしているYとは、定期的に連絡を取り合ったり、折りに触れて会ったりしています。MBAに行かなければ出会えなかった人と関係が続いているのは、とてもうれしいことです。
MBAに興味がある人は
いろいろな学校を調べて、合同説明会などに出向いたり、知り合いでMBAをとった人に話を聞いたりすると良いと思います。
私は周りでMBAに行った人たちが、行って良かったと言っていたので行くことにしました。確かにお金はかかりますが、自分も行って良かったと思います。勉強自体は一人でもできますが、多様なクラスメイトから得られる学びがMBAの欠かせない要素で、これはある程度の時間一緒に何かに取り組むことによって初めて得られるものだと思います。
学校によって入学時や入学後の難易度はまったく異なると思いますが、気になる学校があるならば、とりあえずトライしてみてはどうでしょう。自分は入学時も卒業時も成績はクラスで最後方だったと思いますが、なんとか入学も卒業もできました。
学費については既に書きましたが、加えて書いておくとするなら、なるべく余裕を持った資金計画を立てることをおすすめします。
日本から海外に留学する人は円を外貨に換金して生活する人が多いと思いますが、為替が大きく変動することもありますし、在学中クラスメイトと旅行にいくことになったり、卒業後すぐに就職できなかったり、引越しするのにまとまったお金が必要になったりと、予定よりも出費が重なる可能性があります。
おわりに
今回MBAのときのことを振り返る機会をいただいて、昔の授業の資料を見直したり、プロジェクトの記録を見直したりしました。もともとの苦手分野はもちろん、結構がんばったことでも記憶はすでにかなりおぼろげです。
言語の勉強などで、同じ問題集をくりかえし解いて段々と理解を深めていくように、MBAで勉強したことも定期的に見直して自習しないとな、と思いました。授業を受けているときだけでなく、受けた後も学びは続いているのですよね。今はあまり引き出しを開く機会がなくても、必要になったときにサッと出せるようにしておきたいなと思います。
著者紹介
よしの
2011年からドイツ在住。
製造業の事務屋からドイツMBAを経て、フリーの翻訳家。
Twitter:よしの(@hatehatettt)
備忘録的ぴーちくぱーちく
ブログ:すみよしの手帖(https://www.sumiyoshinotecho.com)
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(編集:伊藤智央)