元コンサルタントな歴史家―ドイツから見た日本

ドイツの大学で歴史を研究する伊藤智央のブログ。ドイツと日本に関する批判的な評論を中心に海外生活(留学や移住)の実態をお伝えしています。その際には元戦略コンサルタントとしての経験も踏まえてわかり易くお伝えできればと思います

留学準備で意外に見落としがちな4つのポイント

留学するとなると、向こうの大学の入学手続きや引っ越しの準備で忙しいと思いますが、それ以外にも留学する前にしておいたほうが良いことがあります。こうしたことは、手続きや持っていくものに目が奪われがちで、忘れがちですが、留学生活を円滑に過ごすためには非常に大切なことです。

そうしたチェックリストを私の経験をもとにまとめてみました。是非、参考にしてみて下さい。

旅行カバン

日本のことについて勉強しておく

留学というと、行き先である海外のことに目が向きがちです。しかし、現地に着くと、現地の人からは日本のことを聞かれることがよくあります。日本にいると、あまり聞かれることが無いタイプの質問です。

現地の人にとってあなたが初めて会う日本人である可能性が高いため、例えば

  • サムライ・ヤクザ・ゲイシャってどんな人たちなの?
  • 「XXX」(アニメの名前)ってどう思う?
  • 日本の政治ってどうなってるの?

といったことです。

こうした質問に答えるためには、日本に関するそれっぽいテーマについて、新書程度で良いので1冊ぐらいは読んでおいておく必要があります。そうすると、会話がスムーズになります。

不合理ですが、こうした質問に答えられないと、「日本から来てるのに、日本について何も知らないじゃん」と思われてしまいます。

そのように思われてもどうでもいいという人はそれでいいのですが、もしこうしたテーマにおいても知識があると、会話のきっかけとなり、会話がはずみます。

現地の人と、挨拶レベル以上の会話をすることはそれほど簡単ではありません。そのため、会話の引き出しは出来る限り多い方が、現地の人と関係を結ぶ数少ないチャンスをものにしやすくなります。

単語の暗記勉強

留学は多くの場合、「外国語をうまくなりたい」ということが目的の一つでしょう。そのためにしておきたいことは、外国語学習が現地で効率的に行えるような準備です。それは、単語の勉強です。

単語の勉強は一人でするため、日本で単語を勉強しようとも、渡航先で単語を勉強しようとも、勉強の効率性は変わりません。それに比べて、文法や発音の向上は渡航先のほうがより効率的に行うことができます。というのも、渡航先では実際に会話をする機会が日本に比べて格段に増大するため、勉強の機会が増えます。これが留学の最大の利点です。

そうした学習速度の違いから考えて、どこで勉強しても勉強速度があまり変わりにくい単語を日本にいるうちに勉強しておくと、渡航先では、留学の醍醐味であるコミュニケーションに集中することができます。

ではどのようにすれば、単語を効率的に暗記できるかということについては以下の記事をご参照ください。この記事ではドイツ語について書いていますが、内容はドイツ語に限らずに通用する普遍的なものとなっております。

専門科目の勉強をする

もし、留学先の大学で専門科目の授業を受けるようなことがあるならば、専門科目の勉強を日本にいるうちからしっかりやっておくことをおススメします。

多くの専門領域では、現地でも日本でも、専門科目の内容はある程度同じであるため日本で準備ができます。そのため、留学開始時点でもし専門的な知識が十分備わっているのであれば、外国語能力に多少とも問題があろうとも授業についていくことができます。そして、またそのようにして理解した授業内容を中心に、外国語の理解を深めていくことができます。つまり

専門内容が理解できる
  ↓
勉強が楽しい
  ↓
もっと理解するために語学を勉強する

という正のスパイラルに入ることができます。

こうした準備は、留学を楽しくするための一つのコツでもあります。

余談ですが、そうした観点から考えると、日本での高校卒業とともに学部留学というのは、日本での学部卒業を終えてから大学院留学する場合と比べて大変なのかもしれません。専門的基礎がないと、留学してみても、言葉はわからないし、話している内容もわからないという事態になります。授業についていけないという状態は、精神的につらいものがあります。少なくとも専門的基礎があれば、内容はある程度推測できます。

自分の専攻科目と留学との相性については以下の記事で詳しく述べておりますのでご参照下さい。

身近な人との時間を大切にする

最後にしておきたいことは、家族や友達といった身近な人との時間をなるべく取るようにするということです。

現代では確かに、海外からも日本と簡単にテレビ電話をする手段はありますが、それでも実際に会うのとはやはり異なります。例えば家族やペットに病気が見つかったときなど、留学先から緊急帰国するのは大変です。

こうしたことから、留学前という「今」の時間を大切にしましょう。

準備期間は準備だけではない

以上、私の体験談も踏まえて留学前にしておきたい準備事項を4つ挙げてみました。今から振り返ると、留学を準備している期間というのは期待と不安に溢れた、ある意味とても充実した時間だったのではないかと思います。

実際に留学が始まってしまえば、忙しくて楽しむ時間もありません。

加えて、渡航先の現実に幻滅したり、うまくいかないことに直面したりとストレスが多いこともあるでしょう。

そのため留学の準備期間というのは単なる準備のための時間ではなく、それ自体、特別な時間だと言えるのかもしれません。こうしたアドバイスを、留学する際の参考に是非していただければと思います。

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