元コンサルタントな歴史家―ドイツから見た日本

ドイツの大学で歴史を研究する伊藤智央のブログ。ドイツと日本に関する批判的な評論を中心に海外生活(留学や移住)の実態をお伝えしています。その際には元戦略コンサルタントとしての経験も踏まえてわかり易くお伝えできればと思います

社会評論-政治・経済・文化

「日本すごい」系番組、そろそろ止めませんか?

「日本スゴーイ!」 外国人にこうした発言をさせる番組がテレビ番組の一部として当たり前になってもう久しくなっています。 確かに、訪日外国人の個人ストーリーに密着してドラマ感を出したり、彼ら・彼女らでしか見えない視点で日本を紹介する方法は意義が…

日本人があまり知らない宗教のメリットとは?

宗教と聞くと、「争い」といったネガティブな事柄を思い浮かべる人もいるかと思います。 信仰のために人を殺し合うこと*1も現に起こっています。また新興宗教のように、しつこく勧誘に来て、お布施を巻き上げる詐欺のイメージをもっている人もいるでしょう。…

日本の新卒一括採用システムが海外に比べて圧倒的に恵まれている理由

ドイツで「新卒」就職した私は、いつも日本の就職事情を羨ましく思っていました。 というのも、大学で勉強した科目にもよりもますが、文系学部*1だと、日本での就職が圧倒的に簡単だからです。 日本の就活生は自分がどれほど恵まれた環境にあるのか自覚して…

トランプ、EU離脱、移民排斥。大衆迎合型政治が支持を受ける理由

近年は、トランプの大統領当選、イギリスのEU離脱、移民制限を唱える政党の欧州での台頭と、大衆迎合型の政治が支持される傾向が続いてきています。 これらの政治に特徴的なのは、既存のエリート層への反抗を掲げていることであり、これまでの政治やメディア…

なぜ日本では、電車の中で化粧してはいけないのか?

電車におけるマナーを訴えかけるCMが日本では放送されています。その中には、他の乗客の迷惑となる行為が批判されていますが、その中には、車内で化粧をしている女性への批判があります。 しかし、なぜ車内で化粧してはいけないのでしょうか。それは化粧だけ…

過労自殺の3つの原因と、会社に追い込まれないための1つの防衛策

日本で過労自殺する人は年間2000-3000人にものぼります。そのほとんどが被雇用者、つまり会社員です。*1 死ぬということは、本当に人生の終わりを意味しています。しかしそれでも、死を選ばなければならないということは、よっぽど追い詰められて、目の前の…

日本における「外国人」ボーナスは人種差別に当たるのか?

日本には「外国人」ボーナスがあります。 この「外国人」ボーナスというのは、ヨーロッパ系の顔立ちというだけで、親切に話しかけられたり、特別なサービスを受けたりというものです。妻と一緒に日本を旅行するとこれは嫌というほど感じられます。 ただ、も…

イギリスEU離脱派が支持を得た2つの構造的原因

6月23日の国民投票でイギリス国民の投票者の内、多数派はヨーロッパ連合離脱を選択しました。その原因についてこれまで様々な説明がなされています。確かに投票行動に差があることは確かですが、EUという政治共同体がもつ構造的な原因についてはあまり言及さ…

ドイツのトルコ人移民家族が抱える3つの悲劇

経済的な理由であれ、政治的な理由であれ、已むに已まれぬ理由から経済的により豊かな地域へ移住した場合、子供にとって悲劇的な状況が発生することがあります。 ドイツに外国人労働者として来たトルコ人家族の例で説明すると、例えば両親が40歳前後、子供が…

マニュアル車好きのドイツ人がオートマ車を好み始めた理由とは?

ドイツではマニュアル車の割合が多いです。私もペーパードライバーでしたが急にマニュアル車を乗らざるを得ませんでした。 2014年時点では約75%がマニュアル車となっています。多いと思うかもしれませんが、この数字は近年マニュアル車の割合が減った上での…

ドイツ人と日本人の決定的な違いとは?

日本ではいたるところで、ランキングや他人の評価を全面に押し出した広告を見ます。 「これが今一番売れています」というポップアップがドラッグストアの商品棚を派手に飾っていたり、食べログのランキング・評価がレストラン選びで重宝され、「全米○○○万人…

「神の国」日本と「人の国」ドイツ、住み易い国はどちらか?

日本とドイツ、どちらのほうが暮らしやすいのか、よく聞かれることがあります。 そのたびに答えに窮してしまいます。というのも、自分が大事にする価値が何なのかによって答えは変わってくるからです。

【卒業生が語る】東大に入って感じたメリットとデメリット

東大に入ることのメリット・デメリットとはいったい何でしょうか。東大に入れば一体具体的にどの点でその人にとって有利になり、あるいはどのような負の影響をその人に与えるのでしょうか。 卒業生として私が感じたり、周りから聞いたことを基に整理してみま…

ドイツ人とのコミュニケーションで感じる地理感覚の差

ドイツ在住の日本人がドイツ人から質問されて答えに窮するものがあります。 それは、 「東京と大阪ってどれくらい離れてるの?」 といった地理に関する質問です。 このような地理系の質問にはいろんなバリエーションがあり、 日本列島の長さに関する場合 皇…

入社式に見る、日本型ダイバーシティが行き詰まる理由

毎年4月には入社式で新入社員が抱負を宣言する姿が見られます。 会社に入るのに何故、宣誓というような儀礼を集団で行わなくてはならないのでしょうか?この儀式の中に、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」的な、思考を停止させた集団主義を感じてしまいま…

生活のクオリティとは「便利さ」か「美しさ」か―電柱の地中化について

なぜ日本の空は電柱や電線で覆われているのでしょうか。 このコンクリートの柱が子供のころから嫌いでした。醜いの一言。空を見上げても、空が電線で縛られているように見えました。最近、ドイツ人に言われた一言で、この子供の頃からの印象が甦ってきました…

カタカナ語の「乱用」は何が問題なのか

何でもかんでも英語をカタカナにした用語を使うことを言葉の乱れとして嘆く人がいます。私も日本語で話すときは出来る限り、欧米語由来のカタカナ語を使わないようにしています。 ただ、日本語自体も多くの漢語を含んでおり、外来語として認識していないだけ…

【卒業生による東大批判】「辺境」大学に適したグローバル戦略とは

東京大学が勘違いした戦略方針をとっています。 秋入学を導入して留学や社会経験を集めることを重視したり、大学ランキングを上げることを考えたり、はたまたハーバードやオクスブリッジに並ぶことを考えたり。最近では、推薦入試を導入し、高校卒業までの留…

【海外報道との比較から】外来種に関する報道が秘める政治的問題性

日本ではニュースや一般向けドキュメンタリー番組で、植物や動物に関して、以下のような二項対立の報道のされかたを見ることがよくあります。 外来種=生存力が強く、侵略的、そのため駆逐するべき悪 Versus在来種=新しい環境に適応できず、外来種に駆逐さ…

ドイツ難民問題とローマ帝国の崩壊は比較可能?

現在ヨーロッパに多くの難民が押し寄せている状況はいくらかの人にとって、ゲルマン系諸民族の大移動とそれによる西ローマ帝国の崩壊を思い起こさせているようです。しかしそこでは、そもそも古代ローマ史とドイツの難民問題は比較可能なのかあまり検討され…

ドイツ人の考えるケルン集団犯罪の原因とその問題点

*2016/2/16更新 大晦日でのケルンでの集団犯罪を受けて難民問題が大きく議論されていますが、この犯罪を受けて議論されている対策には大きな偏りがあり、いくつかの課題を含んでいます。扱いを誤まると、極右への支持が急速に広がる可能性も秘めています。 …

【まとめ】これを読めばドイツ難民問題がわかる!

ドイツでの難民流入は2015年以降、政治問題になるほど社会的影響が大きくなっています。 そのためドイツで暮らしていると否が応でも日々、難民に関する報道を耳にしたり、実際に難民の人を見かけたりします。そうした経験を踏まえて、本サイトではこの問題を…

【実体験】ドイツの例から考える地方再生に潜む重大な問題点

日本でも地方分権が長い間叫ばれ、東京一極集中が批判され、大阪副首都論が唱えられています。政治的なレベルでもそうですが、経済活動の分散も地方 再生という掛け声に含まれています。しかし、それが実現されたとき、普通の市民の生活はどのようになるのか…

ドイツ難民政策がブレている原因を探る

ドイツではケルンを中心とした、窃盗も兼ねた女性への性犯罪がドイツ政府のとる難民政策へ濃い影を落としています。しかしながら、ドイツでは難民政策を今後どのようにしていくべきかについて噛み合っていない議論がなされています。このように難民問題への…

海外でアジア系すし料理店に日本人が打ち勝つには

ヨーロッパに住んでいると日本食レストラン、特に寿司レストランを見かけることがよくあります。 ただ、中に入ってみると寿司のネタは古くて、メニューも誤字があり、店員は中国人やベトナム人のみであることが多いです。ネタも、もう店の中を何回転してるの…

なぜ慰安婦問題の議論は噛み合わないのか

従軍慰安婦問題の解決について日本と韓国が合意しました。(2015/12/28) それについてすでに様々な意見が出ていますが、今まで出されてきた同論争の論点を整理することなく今回の合意について考えをまとめることはできないでしょう。 というのは、日本では慰…

日本企業がブランド戦略に「色」を使わない理由

日本企業のブランド戦略の欠如が指摘されることが少なくありません。確かにブランドイメージの色による形成という点では、ドイツ企業がドイツで抱かれているイメージと比べると、日本企業の日本でのイメージは一部の例外を除いて立ち遅れている感が否めませ…

「湯冷め」はなぜ日本にしかないのか

「湯冷め」という概念はドイツ語にはありません。 私は日本でよく湯冷めをして風邪を引いていたので、ドイツでもシャワーのあとにすぐに寒くならないように努力しますが周りからは不思議な目で見られます。 では何故「湯冷め」という概念がドイツにないので…

東大法学部「首席」卒業という肩書に騙されてはいけない理由

東大法学部「首席」卒業という言葉をメディアでよく聞くことがあります。 例えば、テレビでの弁護士の(自己)紹介の際において「首席」が宣伝として使われてます。しかし私が卒業したときには、「首席」という言葉は聞いたことがありませんでした。 では、…

クリスマス商戦でドイツの店舗小売はなぜ勝てないのか

ドイツに観光で来るのはクリスマス前あたりが一番の人気のようです。しかし観光客が休暇を楽しんでいる一方で、ドイツ人はクリスマスプレゼントを選ぶのに忙しい時期です。毎年、レジ前の行列や車の渋滞でプレゼントを買うにも一苦労です。 ですが最近は、ク…