元コンサルタントな歴史家―ドイツから見た日本

ドイツの大学で歴史を研究する伊藤智央のブログ。ドイツと日本に関する批判的な評論を中心に海外生活(留学や移住)の実態をお伝えしています。その際には元戦略コンサルタントとしての経験も踏まえてわかり易くお伝えできればと思います

海外でバイリンガル育児をするための実践的コツ(幼稚園編)

「海外で子どもを育てれば自動的にバイリンガルで育つ」と考えているのは、間違いです。

環境にもよりますが、親が何も努力しないと子どもの使う言葉は現地の言葉が中心で、日本語が全く話せない、話せるけど読み書きが苦手といったケースになることもままあります。日本語を現地語と平行して習得させるためには、親が中心になって、膨大な時間と努力を惜しまない覚悟が必要です。

そうした大変さは私自身も子育て中ということもあり、毎日身に染みています。

恐らくほとんどの親は試行錯誤しながら、実際の子育ての日常で使えるまでに落とし込んだ道を見つけていくことになるでしょう。

その助けとして先人の知恵を借りることは有意義でしょう。そのため、今回はオーストリアでバイリンガル育児を実践されているひょろさんに、誰でも実践できるコツを中心にお聞きすることにしました。

ご自身の体験に根差したアイディアばかりですので、海外で子どもを育てている方は必見です。

----------     以下、ひょろさんからの寄稿文     ----------

伊藤様に依頼され、バイリンガル育児の実践とコツについての記事を寄稿させていただくことになりました、ウィーン在住のひょろと申します。

2004年にウィーンに来て以来、1年留学、6年国際機関で仕事をし、オーストリア人の夫との間に現在は8歳長男、5歳次男、1歳長女の三人の子供がいます。周りの数々のバイリンガル育児を観察し、さまざまなケースのお話を聞き、セミナーに通い実践してきたバイリンガル育児について、経験に基づく実践例やノウハウをシェアできたらと思います。

とはいっても、わが家のバイリンガル育児歴はたった8年。大先輩の海外在住の方々に比べたら、経験年数も少なく、今後どのように成長していくのかも未知数な段階です。それぞれの家庭にそれぞれの言語環境があり、バイリンガル育児の目標ややり方があると思います。

今回と次回の記事(海外でバイリンガル育児をするための実践的コツ(小学校低学年編))では、わが家のケースをメインに、周りの家庭の育児も参考にしつつ、主に幼稚園・小学校低学年時代のバイリンガル育児について、コツや実例を交えてお話ししていく予定です。 

わが家の置かれた環境

まず、わが家の言語環境からご紹介します。

    • 母国語は日本語
    • 英語はビジネスレベル(英検一級、英語での勤務経験あり)、ドイツ語ビジネスレベル(ビジネスドイツ語検定)、フランス語C1、スペイン語中級。オランダ語、ハンガリー語初級。
    • 語学好きで、言語学履修経験あり。
    • 母国語はオーストリア・ドイツ語
    • 英語ビジネスレベル、日本語検定一級。フランス語上級、スペイン語中級、オランダ語初級。ラテン語履修済み
    • 語学好き。
  • 長男
    • 8歳。オーストリアの現地校小3(日本では小2)。
    • 日本語はグループレッスンにて小2の漢字が終わったところ。
  • 次男
    • 5歳。オーストリアの現地幼稚園年中。
    • 日本語はひらがなが終わったところ。
  • 長女
    • 1歳。
    • バンザイは?というと、後頭部を触る。

わが家では、夫婦ともに語学好き。夫婦間の会話は英語→ドイツ語と移り変わり、出産を機に日本語に切り替えましたが、英独日語どれでも会話ができます。ケンカの時はフェアに英語を使いますが、英語に切り替えたとたんに子供たちにばれてしまい、すぐに「タイムアウト!」と言われ、満足にケンカもできません(笑)。

また、親戚がフランス人と結婚し、中高生の三人の子供がいます。バイリンガル育児の先輩として、日々観察し、アドバイスをもらっています。

日の丸とオーストリアの国旗
<長男が学校で作ってきた、日本とオーストリアの国旗デザインの紙飛行機>

この記事の前提

バイリンガル育児と一言で言っても、親の使用言語や、住環境、学校での言語などによって、さまざまなケースが考えられます。

本記事では、ドイツ語圏在住日本人と現地人との間に産まれ、現地校や現地の幼稚園に通う子供のバイリンガル育児を前提に記事を構成しますが、もちろん多くの項目が、ドイツ語圏以外のバイリンガル育児にも該当すると思います。

例えば、オーストリア人の父親と日本人の母親を持つ、ウィーンの現地小学校に通う子供や、ドイツ人の母親と日本人の父親の間に産まれた、ベルリンの現地幼稚園に通う子供などが主な対象で、生活環境の中で、日本語に触れる機会が現地語より少ない場合、どうやって日本語をキープ、向上させていくかという点を重点的に論じます。

また、話す聞くのスキルが中心で、ほぼ家庭内で日本語学習が完結しうる幼稚園の時期と、読み書きや漢字の比重が増え、時間的制約が増えてくる小学校低学年の、二つの時期に記事を分けてます。本記事では、バイリンガル育児の前提や環境作りについて、次記事では、小学校時代に直面するバイリンガル育児の理想と現実について触れていきます。

また本記事では、バイリンガル育児の理論には極力触れず、実際の育児の中で役立った事項等、実践的な側面を中心に記述します。

一人一言語

バイリンガル育児の基本中の基本は、「一人一言語」(One person, one language)です。

親は子供に必ず一つの言語で話しかけ、言語ミックスは厳禁とされています。例えば、父親はドイツ語、母親は日本語で子供と話すと決めたら、周りに誰がいようとも、必ずその言語を貫きます。

しかし、この原則を守るのは、簡単なようでいて、実際の生活の中では様々なハードルに直面します。

家で子供と一対一で過ごしている分には、日本語で話せばいいだけなのですが、周りに日本語を理解しない義両親や現地人親子がその場にいる場合、それでも子供に日本語で話し続けることができるでしょうか?

周りがドイツ語話者ばかりな中で、親子だけで日本語で話し、二人の世界を作ってしまうのは、とても感じが悪いですよね。ただでさえ肩身が狭い海外生活で、さらに冷たい目で見られてしまうことや、場合によっては義両親に「日本語ばっかりしゃべって!」などと言われることがあるかもしれません。「一人一言語」を優先するのか、周囲との人間関係を優先するのか、難しい選択です。

わが家では、まず義両親に、わが家でのバイリンガル教育の方針をきっちりと事前に話しました。「一人一言語」の重要性に理解を得て、義両親には子供たちにドイツ語でどんどん話しかけるよう、ドイツ語部分の強化の協力もお願いしました。

その上で、日本語のみの会話になってしまう部分は、私や夫が同時通訳で、全てドイツ語に訳して説明しています。二重に手間と時間がかかり面倒ではありますが、相手にいやな気分をさせないため、バイリンガル育児には必要な努力だと思い、心がけています。最も身近で、育児の強力な助っ人ともなる義両親に、0歳の頃から理解と信頼を得ておくことは、後のバイリンガル教育にとても重要なことだと思います。

また、1歳ごろからベビーサインを使っていたのですが、一つのサインに二つの言語が当てはまるということに、早い段階で慣れさせることに効果的だったと思います。

例えば、手のひらに人差し指を当てるサインは「もっと」なのですが、これを義両親に教えておいて、同じ仕草をしながらmehr(編者注:ドイツ語で「もっと」の意味。英語の"more"に当る)と言うようにお願いしておきます。すると、同じ仕草で同じ意味を持つのに、ママとオマ(=ドイツ語で「祖母」)で言葉が違うぞ?と気が付くわけです。ベビーサイン自体は、子供によって食いつきが違いますが、少しでもやっておくと、バイリンガル育児の下地になるのではと思います。

また、公園やプレイルームなど、現地人が多い公共の場での言語にも気を使いますよね。子供が走ってはいけないところで走ったとき、「止まりなさい!だめ!」と言っても、周りにはわかってもらえず、お行儀の悪い子を放置していると思われてしまわないかという状況は、海外子育てあるあるです。かといって、ドイツ語で."Nicht rennen! Nein!"(走らないで!ダメ!)などと言ってしまうと、「一人一言語」の法則を破ってしまうジレンマがあります。

そんな時、私は、「走らない!」「危ない!」と、「ない」を強調した言い方を心がけていました。ドイツ語では「ない」とNein(編者注:読みは「ナイン」。英語の"No"に当る)は音が似ているので、周りには「ダメ」と言っていることは伝わります。また、人差し指を顔の前で振る「だめだめ」のジェスチャーを組み合わせ、何かを禁じているということは、周りの人にも伝わるよう配慮しました。

子供のドイツ語が優勢になってきたら

子供が幼稚園に入ってしばらくすると、ドイツ語が優勢になってきます。

年少くらいの頃は、ドイツ語の方が遊びに関する語彙が強くなり、日本語話者の親にドイツ語交じりで話しかけることが出てきます。おそらく言語的にも成長の時期を迎えていて、言語の違いを意識し始める時期でもあるのでしょう。

そんな時、ドイツ語の方が楽だからと言って、流されないように気を付けましょう。

子供は相手との会話の中で、何語をどの程度使うべきかを無意識に判断します。親を「言語を混ぜていい相手」と認識してしまうと、楽な方に流れてしまって、「一人一言語」を徹底できなくなるので、親の方が「日本語しか話せない」とルールを決めてやる必要があります。これが「一人一言語」のキモとなる部分で、親が易きに流れず、毅然としてルールを守ることが重要です。

周りでバイリンガル育児を見ていると、こういう会話がよく見られます。

親「おなかすいた?」
子 "ich will Keksi essen!"(編者注:ドイツ語で「クッキー食べたい」)
親「ケクシィ(編者注:ドイツ語で「クッキー」)出すから待っててね」

子どもの発言にそのまま答えるのではなく、ここで親が「クッキー食べたいの?出すから待っててね」と、子どもの言いたかったことを日本語に一旦翻訳してあげてから返事をするだけで、随分変わってきます。

簡単に聞こえますが、日々の育児の文脈で、一日何十回とこれをやるのは非常に面倒で、エネルギーも消費します。

上記の言い換えの手法は、ウィーンの幼稚園で「直さず、正しく繰り返す」(Nicht korrigieren, richtig wiederholen)と言われている手法で、バイリンガル育児だけではなく、幼稚園の先生が、子供のドイツ語の活用の間違いなどを治すときに使われます。

また、子供は、ドイツ語交じりの日本語(いわゆる「ルー語」)でもよく話しかけてきます。親が多言語話者の場合、このコード・スイッチングが楽なことがわかっているので、ついついドイツ語をそのまま返事に使ってしまうことも多いかもしれません。しかし、「一人一言語」を徹底する場合には、必ずすべて日本語で返した方が効果的です。

先日わが家で実際にあった会話ですが、次男の

「ママ、このクッションの穴からLuft(編者注:ドイツ語で「空気」)が出てるよ」

という言葉に対して、私は

「空気が出るのね」

と言い換えて返事しました。次男は「風」と「空気」どちらで言うか迷った結果、決めきれずにドイツ語を使ったようでしたが、その5分後に再び同じ会話をした時には、「空気が出てるよ」と、私の言い換えを反映した文を作っていました。

<この積み木型クッションの縫い目が破れて、空気が出ていました><この積み木型クッションの縫い目が破れて、空気が出ていました>

正直、聞き流しておく方がずっと楽で、これを見逃さず毎回言い換えるのは、まさに鉄の意思が必要です。しかし、「ルー語」は子供の「これって日本語でなんていうの?」というヘルプサインでもあります。このサインのタイミングをうまくとらえると、効果的に語彙を増やせるチャンスに変わります。

この手法を実践で使う以前には、さまざまな試行錯誤をしました。「ママはドイツ語分からないから日本語で言って」と、ドイツ語が分からないふりをしたこともありましたし(すぐにバレましたが(笑))、「ドイツ語を混ぜないで日本語で言って」と言い直させたこともあります。しかしこれらは全て失敗に終わりました。会話においてもっとも重要なテンポが止まってしまい、子供が興味を失ってしまうからです。

「一人一言語」を徹底するときに、会話の楽しさを損なってしまうと、親子関係がぎくしゃくしてしまいます。なるべく自然に、さりげなく、子どもの脳が日本語のインプットを受け取るように、親の側が気を付けてやる必要があります。親が正しく話してさえいれば、いつかは子供が付いてくるので、親のがんばりどころなのかもしれません。

一箇所一言語

上記の「一人一言語」は、絶対の法則ですが、これに「一箇所一言語」(One location, one language)をオプションとしてミックスすることも可能です。

例えば、現地幼稚園に通う子供たちは、幼稚園ではドイツ語、自宅では日本語と、場所によって言語を使い分けています。これをさらに細分化し、家庭内のバイリンガル育児にも応用する手法です。

わが家では、私が日本語、夫がドイツ語という一人一言語の法則も守りつつ、「自宅では日本語、義実家や幼稚園ではドイツ語」という、場所のルールも追加で設けました。そうすることで、日本語を話せる夫も交え、自宅では家族全員で日本語を会話することができるようになります。義実家では夫はドイツ語、私は日本語で子供たちと話し、私に関しては「一人一言語」原則はキープしています。

親が多国語話者の利点を生かし、追加で「一箇所一言語」の原則を導入することで、「弱い」方の言語環境を補強し、日本語に触れている時間をできるだけ増やすことができます。

環境を整える

バイリンガル育児や、日本語力のキープが重要とはいっても、そのせいで親子間がぎくしゃくしたり、くつろげるはずの家庭にストレスがあっては、本末転倒です。

親子ともに日本語学習が苦にならないようにするには、日本語をさりげなく日々の生活のサイクルに取り込んでしまうのが効果的です。「慣れ」や「習慣」として日本語に触れられる環境を作ることが、無理なくバイリンガル育児を続ける秘訣だと考えます。

幼稚園の時期は、主に耳からのインプットを重視し、どうやったら自然に、子供の耳に日本語が入ってくる状態を作りだせるかを考えて試行錯誤しました。

そのための環境づくりで、私が心掛けたことを以下に並べていきます。お住まいの都市や国によって、全てを実践するのは難しいかもしれませんが、採用できそうなものだけでも、参考になればと思います。

プレイグループ

「一人一言語」、「一箇所一言語」の法則をうまく使った親子間の会話は、バイリンガル育児のベースとなるものですが、実際の言語は親子間以外の様々な側面があります。子供同士や、先生、祖父母、初対面の人、お店の人など、親子間で想定していない語彙や文法を使う場面は無限にあります。

「日本語を話す相手がお母さんしかいないから、男の子なのに女言葉になってしまった」

というのは、海外在住日本人ママさんの間でよく聞かれる話です。なるべく様々な種類の「生きた日本語」に触れさせるため、子供の日本語環境を整えることも、バイリンガル教育の重要な側面です。

私は、長男が5か月の頃からずっと、ウィーンで日本語を話す子供たちのプレイグループを週一回主催し、日本のお祭りなどのイベントや、絵本や紙芝居の読み聞かせなどを行っていて、現在も続けています。これによって、「親以外の日本語に触れさせる」チャンス作ることができます。

方言や、親同士の敬語での会話、ほかのお母さんによる読み聞かせなど、家庭内で聞くチャンスの少ない日本語のバリエーションを耳から入れてやりたいと思って活動しています。

日本語絵本の確保

日本語の絵本がバイリンガル教育に最も良いとは分かっていても、なかなか数をそろえるのは難しいものです。

ウィーンには、日本人学校に充実した図書館があり、絵本も豊富ですので、わが家では積極的に利用しています。また、ウィーン在住日本人ママさんたちの集まりで、ウィーン市立図書館に日本語の絵本を置く活動(http://japanischebuecher.blog.fc2.com/)を行い、日本人学校以外でも日本語絵本を借りられる機会を作りました。

また、プレイグループの読み聞かせ活動などを通して、子供が気に入った絵本があれば、日本から購入するようにしています。そのほかにも、一時帰国時に古本屋で大量購入、バザーやフリマなどで、絵本の数の確保には力を入れています。

日本語DVDの活用

外国語学習の一番の近道は、フレーズや文章の「丸暗記」であることは、外国語を学ばれた方なら思い当たると思います。

最も面倒なこの「丸暗記」を、日常的に、楽しくさせるには、日本語DVDを活用するのが一番です。子供は同じDVDを何十回と見たがりますが、丸暗記のためには、繰り返し見ることが近道。覚えるほど見て飽きると、子供は次のDVDを要求しますので、子供が満足するまで、何度でも見せてやりましょう。一つのDVDを30回見るとすると、DVD代も十分元を取ったというものです(笑)。

幼稚園児の場合、わが家では、「うっかりペネロペ」(2歳ごろから年少)や「おさるのジョージ」(年中から小学生まで)が大人気でした。一話が10分程度と短く、子供の集中力にも適しています。アマゾンの中古などを活用して揃えました。

 

映画は長時間のため、丸暗記するのには時間がかかりますが、ディズニーとジブリはいくつかハマりました。ディズニー映画はまずドイツ語で見て、気に入ったものを日本から送ってもらっていました。ジブリに関しては、ドイツで購入できるものに日本語音声が入っているので、重複して買う必要はありません。

特にディズニー映画に関しては、

  1. 歌は丸暗記しやすい
  2. 複数言語で見ることで、わからない語彙を補うことができる
  3. 言語別の細かいニュアンスの違いや翻訳の工夫などについて親子で語り合える

という様々な側面があるので、ハマった作品は何度でも親子で見て、一緒に歌ったり、内容について語り合ったりしています。

ひらがな導入に向けて

年中ごろまでは、基本的に耳からの日本語がほぼ全てですが、年中からひらがなを学習し始める家庭が多いようです。小学校が始まると現地校の勉強が忙しくなるので、その前に早めに始めておこうと考える方が多いためで、この時期までに家庭内に、ひらがな導入に向けた環境作りがなされていると、あとが楽です。

わが家は、家庭内に全くひらがながなかった長男が、最初苦労しましたが、次男の時には、おもちゃ箱のラベルや、トイレのひらがな表など、普段の生活でひらがなを見る機会が増えていたので、スムーズに行きました。「無理やり座らせてひらがなの勉強!」と気張らなくても、環境から目に入れてやると、トイレに座れる年齢になったときに、習得が早いです。

<5歳次男が書いた罰金請求書。ドイツ語で1000 (ユーロ)STRASE(STRAFE=「罰金」の間違い)と、漢字の「回」と書いてあります。兄の漢字練習を見ていて覚えた、お気に入りの漢字です。><5歳次男が書いた罰金請求書。ドイツ語で1000 (ユーロ)STRASE(「道」。STRAFE=「罰金」の間違い)と、漢字の「回」と書いてあります。兄の漢字練習を見ていて覚えた、お気に入りの漢字です。>

ワーク期を活用

年中ごろから一年半ほど、ワーク(課題。迷路や間違い探しなど)を貪欲に求める時期が来ます。このタイミングで、日本語に触れることのできるワークを用意してやることができれば、ひらがな導入への入り口になります。

ネット教材としては、

にお世話になりました。また、通信教材として、長男の時に「こどもちゃれんじ」(2歳から年中まで)と「ポピー」(年長)を取っていました。こちらは、実家からウィーンへの転送がうまくいかず、長男は必要な時に必要な教材が手元になかったため、活用できませんでしたが、次男の時は手元に全て教材が揃っていたので、ひらがな導入に強い味方となり、いつの間にか平仮名は全て読める、という状態になっていて驚いたのを覚えています。

まとめ

バイリンガル育児と一言で言っても、日常の育児以上のことを無理にする必要はありません。なるべく日々、普段の生活の範囲内で、親子ともに無理なく回していけるよう、

  • 「いつの間にか耳に入っている」
  • 「さりげなく置かれている」
  • 「楽しく遊んでいる」

という、環境を準備する大切さについて、書いてみました。

「一人一言語」を死守するという、親の涙ぐましい努力もありますが、これも習慣化して、無意識にできるようになってくると、バイリンガル育児に割かれるエネルギーも少なくて済みます。

ただでさえ体力と時間が極限まで削られる、幼稚園児の育児。なるべく親子ともに、無理しなくても日本語に触れることができる環境を作ることを主眼に、「慣れ」や「習慣」の力を借りてみるのはいかがでしょう。

親子の性格や、在住国や地域、人間関係など、さまざまな要素によって、ストレスを感じること、無理なくできることが異なってきます。最も大事なのは、バイリンガルになることではなく、家庭内で子供が居心地よく、安心して過ごせること。子供には「学ばない時期」や「机に向かうことを拒否する時期」もあります。日本語教育を前面に出しすぎて、親子関係に影響が出るようであれば、一旦日本語はお休みして、子供が受け入れる時期が来るまで3か月から半年ほど待ってあげるのも、親の匙加減です。

また、楽しく勉強を進めるには、趣味と関連の深い教材を使うことが重要です。普段の子供の生活や好みに気を配り、好きなコンテンツを敏感にチェックして、その中で日本要素があれば、すかさずDVDや絵本を見せてみる、といった、親の観察力と、タイミングをとらえる力もキーになってきます。

最も重要なのは、子供が居心地の良い家庭と、信頼に基づく親子関係です。バイリンガル教育に力を入れすぎるのではなく、子供の興味の赴くところに、気が付けば日本語がある、という環境を作ってあげることが、この時期の親のできる、精いっぱいの事ではないかな、と思います。

筆者紹介

ひょろ

2004年からオーストリア、ウィーン在住。留学、国際機関勤務を経て、現在は三児のバイリンガル育児の傍ら、ウィーンの歴史文化に関する執筆業とネットショップ経営(http://www.wienmusicalworld.com)。歴史散策とミュージカル観劇が趣味。

Twitter: Hyoro@ウィーン (@hyoroWien) | Twitter

Blog:http://wienok.blog119.fc2.com/

(編集:伊藤智央)

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