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元コンサルタントな歴史家―ドイツから見た日本

大学で近代日独軍事史を研究する伊藤智央のエッセイ。ドイツと日本に関する批判的な評論を中心に海外生活(留学や移住)の実態をお伝えしています。その際には元戦略コンサルタントとしての経験も踏まえてわかり易くお伝えできればと思います。

【徹底比較】独検とゲーテ・インスティテュートの検定、便利な資格はどっち?

語学 語学-ドイツ語

ドイツ語に関する検定試験は主に2つあります。

  • 独検
  • ゲーテ・インスティテュートの試験

でも2つもあれば、どちらを受ければよいのか迷いますよね。そこで、それぞれの長短を比較してみました。

ドイツ語技能検試験とゲーテ・インスティトュートのドイツ語試験の比較

ドイツ語に関する検定試験

独検とは

より有名なものは、独検でしょう。

独検とは1992年より「公益財団法人ドイツ語学文学振興会」が運営する資格試験のことで、5級から1級までレベルが分かれています。

ゲーテ・インスティテュートの試験とは

次に有名なものはゲーテ・インスティテュートの資格試験です。

ゲーテ・インスティテュートとは、ドイツ外務省を窓口としてドイツ連邦共和国からドイツ語の促進という課題を任せられた組織です。*1

日本では東京、横浜、大阪、京都に存在し、質の高いドイツ語コースを提供しています。

ドイツ語コースの他に、A1(初級)からC2(上級)まで6つの試験が、受験者のレベルに応じて実施されています。*2

独検とゲーテ資格の難易度比較

独検
ゲーテの検定試験
必要な学習時間(単位:時間=60分)
5級
-
30
-
A1
50
4級
-
60
-
A2
100
3級
-
120
2級
-
180
-
B1
200
準1級*
B2
300
1級*
C1
550
-
C2
850

*言語運用能力の内容からレベルを推測。その他については以下参照*3

ゲーテの方がやや難しくなっていますが、基本的にはどちらの資格でもドイツ語の能力は段階的に測ることができます。

では、どちらの資格を取った方が将来有利なのでしょうか?

独検

独検の長所

独検のドイツ語名は、「Diplom Deutsch in Japan」(直訳:「日本におけるドイツ語資格証明」)というように、「日本における」という枕詞が付きます。

つまり日本においてのみ存在・通用する資格です。

そのため、日本で何かの面接で資格の一つとして提出するには有利と言えます。それは、独検の主催者が、独検の利点としてアピールしていることとも一致しています。

  • 大学などの単位認定や入学資格,入学選考基準に採用

単位認定制度を取り入れている大学や,編入学の資格認定の条件,入学試験の優遇措置などの対象にしている大学など,独検の資格があると有利に働くことがあります。

  • 履歴書でドイツ語力をアピール

独検は日本の団体が主催している唯一のドイツ語検定試験として日本で幅広く受け入れられています。英語にプラスしてドイツ語もできることを履歴書に書いてアピールしましょう。

引用元:独検の特長 | 独検について | ドイツ語技能検定試験 Diplom Deutsch in Japan

独検の短所

日本でしか通用していないというのは、日本を離れれば何の役にも立たないということです。加えて公的ではなく民間団体が与える資格ということも、海外でどれほど通用するのかに影響を与えています。

特にドイツで留学したり、滞在許可を取る際にはドイツ語能力を証明する必要がありますが、その際には何の役にも立ちません。下に挙げるゲーテの試験を受ける必要があり、二度手間になります。

ゲーテ・インスティテュートの試験

ゲーテ資格の長所

ゲーテ・インスティテュートは、ドイツ政府の委託を受けているために、この団体が実施する試験は、ドイツではドイツ語資格の標準となっています。

そのため、ゲーテ資格が使える領域は多岐にわたっています。例えば以下の領域です。

  • 配偶者としてドイツに移住する場合
  • ドイツの大学に入学する場合
  • 履歴書にドイツ語で言語レベルを記載する場合

移住

もしドイツ在住者の配偶者としてドイツでの滞在許可を得る場合、簡単なドイツ語の能力を証明する必要がある場合があります。そこでは、ゲーテでの資格を持っていることで言語能力の証明ができます。*4

この目的のためには、独検は役に立たないでしょう。

大学入学

大学に入学する場合には、DSH(大学入学のためのドイツ語資格)を受ける必要がありますが、ゲーテで資格を持っているとこれは免除されます。

どのような学科に入学したいのかによって要求される資格レベル*5は変わりますが、ゲーテでC2(上級)の資格を持っていれば、どんな学科にも(ドイツ語能力という点において)入ることが出来ます。

ドイツ語履歴書での記載

日本語以外で履歴書を書いて就職活動を行う場合には、ゲーテの資格は国際的に通用しているために、言語能力の証明になります。

民間企業でも通用するのは、やはり、準公的機関というゲーテ・インスティテュートの性格が効いているのでしょう。

ゲーテ試験の短所

知名度の低さ

国際的な知名度のわりに、国内での知名度が低いのが欠点ではないでしょうか。

独検は、英検からの類推でだれでも何となく理解できるでしょう。英検は英語の検定だから、独検はドイツ語の検定というように、推測が効きます。しかも、英検と同じ級システムのため、なんとなくレベルも理解できます。

しかし、ゲーテ・インスティテュートという存在はドイツ語をやっている人でないと普通は知りません。

システムの互換性

加えて、ヨーロッパで一般的に使われている言語能力を測る基準であるCEFRシステムは、日本でほとんど知られていません。このシステムでは冒頭で表にしているように、初心者レベルのA1から始まって、A2、B1、B2、C1を経てC2(上級)まで上がっていきます。*6そしてゲーテ試験のレベルもこのシステムに沿って構成されています。

しかし、このシステムを知らない普通の人にとっては例えば、「ゲーテの資格B2を持っている」と言われても、どれぐらいのレベルのことかわかりません。常に、「B2」の内容の説明が必要となります。

日本での資格としての有効性

こうした、資格制度の存在自体があまり知られておらず、しかも評価システムの知名度も低いために、日本での資格としての価値は独検に劣ります。

補足:受講料の高さ

独検とゲーテの試験の受講料を比べると、全体的にゲーテの方が高くなっています。(2016年現在)

独検
ゲーテの検定試験
レベル
受験料(円)
レベル
受験料(円)
5級
3,500
-
-
-
-
A1
11,000
4級
4,500
-
-
-
-
A2
12,000
3級
6,500
-
-
2級
8,000
-
-
-
-
B1
16,000
準1級
10,000
B2
20,000
1級
12,000
C1
25,000
-
-
C2
30,000

参照*7

ですので、趣味としてドイツ語を勉強している人にとっては、ゲーテ試験の費用の高さから、独検のほうが、レベルを測るために気軽に利用できるといえます。

資格メインなら独検、本格的にドイツ語を勉強するならゲーテ

日本にいる限り、資格として有利なのは独検です。しかし、本格的にドイツ語を勉強しようと思っている場合は、ドイツに実際に留学や移住するかは別にしても、ゲーテの試験のほうをおススメします。

冒頭で独検とゲーテの資格を比較しましたが、ゲーテのほうが、実践形式に近く、実際にドイツ語を使う際には試験勉強が役に立つからです。(その分、ゲーテのほうが難易度が全般的に高いのですが)独検はどちらかというと、読んだり、書いたりということに関しては試験勉強で強くなりますが、実践面での訓練がおろそかになる傾向があります。

いずれにせよ、このドイツ語(資格)をどのような目的で習得しようとしているのかをじっくり考えてみて、それによって、目指す資格試験は選んだほうがいいでしょう。

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