日本人と日頃一緒に仕事をする機会が多いというドイツ人の方に、ドイツ人にとって嫌に感じる日本人の振る舞いを聞いてみました。聞いていて耳が痛い話も多く、こうした批判は真摯に受け止めた方が海外における日系企業のマネジメント改善のためにも有益ではないでしょうか。
ちなみに、ここでの日本人とはドイツ在住の日本人のことを指します。
-以下、インタビュー内容-
実際にイラッと来る事例
例1:勝手にドイツの名前を省略するな
日本人が勝手にドイツやヨーロッパの街の名前を省略して話しているのが我慢できない。
例えば日本人は、
デュッセルドルフ は デュッセル
フランクフルト は フランク
アムステルダム は アムス
ロッテルダム は ロッテ
と省略して街の名前を呼んでいる。
ていうか、こういう風に省略したらもう別の意味になってしまっている。デュッセルは川の名前だし、フランクは人の名前だし、ロッテって韓国のロッテのこと?フランクに行くってどういう意味?ロッテに行くって韓国に行くの?*
*著者補足:ドイツ人にとっては、「フランクに行く」という表現は、「太郎」に行くというように聞こえます。
こんなわけのわからない省略聞いてると頭おかしくなる。こっちは東京のこと「とう」とか省略しないよ。他人の国に来て、無理やり勝手に街の名前を変えてほしくない。名前は文化の一部なので、ドイツやヨーロッパの文化を尊重してほしい。
例2:カタカナ英語
いつまでカタカナ英語使ってるの?もう何年英語で仕事してるのかと不思議に思うくらい発音がひどすぎる。ほとんど通じないレベルだよ。ドイツ人の同僚は聞いててもみんな理解できないからストレスがたまってる。
何でうまくならない?普通周りの人が英語で話してたらその発音聞いて少しはうまくなるはずだけど、どうなってるの?
例えばひどいのは、Hollywood。ハリウッドじゃないから。しかも、周りがわからないのに、このカタカナ語を繰り返す。こんな発音じゃあ、繰り返しても誰もわからないから意味なし。他にもHowever。ハウエバー(著者:バーを強調してba-という感じで発音)の発音もひどい。多用しすぎだし、vの発音もできてないじゃん。*
*著者補足:彼は日本語がビジネスレベルで出来るので、日本人のカタカナ英語は聞き取れます。ここで彼が言いたいことは、彼のような例外的存在は一旦おいておいて、主に日本語がわからない大多数のドイツ人同僚にとってどう感じられるのかということです。以下も同様。
例3:日本文化の押しつけ
英語でやり取りしていると、名前の後に「さん」*を勝手につけるのが日本文化の押しつけのように感じる。「さん」とか知らんよ。メールでも英語でのやりとりなのに「さん」づけ。「Mr.」とか「Ms.」になぜしないのか。別に日本文化勉強するために日本人と働いているわけじゃない人の存在も考えたほうがいい。
*著者補足:敬称としての「さん」。例えば「Mr. Yamada 」じゃなくて「Yamada san」ということ
非日本人はみんな和食が好きと思っている点も日本人の傲慢さのように見える。「非日本人=和食好き」を当たり前のように考えて、ドイツ人は否応なしに日本食レストランに連れまわされる。日本食が好きじゃない人もいるのに押しつけるなといいたい。
確かにビジネスでも文化交流は大切だけど、ビジネスと文化交流を強引に混ぜすぎてる。反感をもっている人も少なくないことに気付いてほしい。
例4:ドイツ人がいるときに日本語で内輪の話をするな
ミーティングの場でドイツ人がいても日本人同士が日本語で話すのはどうにかならないのか。ドイツ人は日本語理解できないよ。
みんなで話すためにミーティングに呼ばれているんだから、どんな些細なことでもみんながわかる言語で話してほしい。内輪で話している姿は、何か隠し事あるように見えるから誠実じゃないよ。
そもそも日本語で話すのなら、ドイツ人はその場にいなくていいでしょ。ミーティングの途中で「もう帰っていいですか?」っという発言がドイツ人から来てもおかしくないと思う。
小まとめ:思い遣りに欠ける日本人
今まで会った日本人は基本、相手の立場に立った配慮が出来てない人が多い。異文化コミュニケーションに難がありすぎる。
そうした細かな配慮ができるのが日本人だと思ってたけど、そうじゃない人が多いのは残念。これはドイツに来る日本人の特徴なのかとも思ってしまう。日本のことを知らないドイツ人はこれが「日本人」と思ってしまっている。
自分を客観的に見つめれないと、人はいつか離れていくよ。
日本に批判的な人を増やす日本人の振る舞い
以上ドイツ人の日本人に対する(半分愚痴に近い)感想を書いてきました。これはあくまで当人の個人的意見であって私本人の意見とは関係ありません。
上記の批判の有効性
日本人としては、確かにこのインタビューを読んで以下のような反発を抱く人もいるかとは思います。それに対しては、以下のような反論が考えられます。(矢印参照)
- 日本にいる欧米人だって日本に適応できてないじゃないか
→相対化しても、ドイツ人からのこのような意見を持たれている事実には変わりません
- 英語に近いラテン系やゲルマン系の言語話者と、日本語話者とを比較するのはフェアじゃない
→ビジネスでは、結果(=下手で聞き取りにくい英語発音)が重視されます。どれだけ努力したかは関係ありません
- こんな風に思っているドイツ人は一部で、過度に一般化するのはよくない
→こうした不満は、日系企業で働くドイツ人から聞く話と多かれ少なかれ一致します。確かにすべてのドイツ人が上記のように感じているわけではないにしても、例外的現象ではないと考えています。
むしろ、海外で日系企業が人材獲得に競り負けている一般的状況とも整合性がとれます。つまり日系企業は雇用体系や日本人社員の文化的理解の欠如によって、現地の人にとっては就職先として魅力を失っているという事実とも一致します。
上記批判の意義
- ①「海外では日本礼賛」という誤解を解く
このようなネガティブな意見の存在を知っていることは、十分意味があります。
このことは、日本人にとって耳当たりの良い「日本ってすごーい」論調が幅を利かせているときにメディアであまり取り上げられません。「日本ってすごーい」と外国人すべてが思っているわけではないのです。
まず現実を知りましょう。
- ②異文化における日系企業のマネジメント能力が低い原因を知る
日本の文化を紹介しようというのはわかりますが、押し付けになっている部分もあることは否定できません。相手の考えへの配慮がなければ反発を受けるのは当然です。こうした文化的無知・無関心が、日本企業が異文化圏の人をうまく使いこなせていないということにつながっているのではないでしょうか。
異文化出身者のモチベーションを高めることに失敗している事実をしっかり受け止めることが、日系企業が海外で成功する第一歩です。現地の労働力なしに日本人だけで仕事を回せることは少ないので。
まとめ:異文化に鈍感な日本人が多い
インタビューで述べられた不満は個人的にも理解できることが多いです。私自身、現地の文化や言語にうまく適応できない日本人をドイツで多く見てきました。それも、10年以上ドイツにいる日本人の間においてでもです。
日本人はゲストとして来ているのでもう少し適応力をもってやらないと、現地で反感を受けることになるので、もう少し、異文化への感覚を研ぎ澄ませて対応してほしいものです。何せドイツは日本ではないので。