2015年6月、新潟の三条市で給食がパンからご飯に切り替えたのを機に一時期、牛乳が給食から消えました*1。
米を給食のメインにしたところ、保護所から「牛乳とご飯は合わない」という声が上がったというのが理由です。こうした騒動の背景には、牛乳と米はそもそも合うわけがないという考えがあるようです。
確かに日本人にとって、米と牛乳の組み合わせと聞くと、気持ち悪く感じる人も多いでしょう。
しかし、これは単なる思い込みでしかありません。というのも、日本以外では、米と牛乳を混ぜる料理も存在するからです。
その一つの例がドイツです。
ドイツの「牛乳ご飯」なる存在
ドイツでは「牛乳ご飯」(Milchreis)というデザートがあります。これは牛乳でご飯を炊いて、それに砂糖やシナモンを入れて甘くしたものです。
作り方は簡単で、鍋に牛乳と米を入れてただ煮るだけです。米が柔らかくなって芯ががなくなれば、食べごろとなります。
これだけ聞くと、「本当にデザート?」という気もします。加えて食欲もわきません。 私もそうでした。ただ試食してみると、思っているほどダメではなく、結構食べられます。
実は日本でもインスタントが売っており、挑戦したければ日本でも食べられます。
味覚研究の方法論的問題点
そもそも牛乳とご飯は根本的に料理の組み合わせとして合わないという調査もあります。というのも、同じ味覚のものを組み合わせると、人間はおいしいと思わないからです*2。
ただ、こうした見解は「科学的な」雰囲気を装っていますが、それでは、ドイツでの「牛乳ご飯」人気が全く説明できません。
そもそも味覚に関する上の調査は重大な欠陥を秘めているようです。
帰納的な方法論
というのも、この調査ではおいしいものに共通する特徴を探るという帰納的手法をとっているからです。
つまり、
①「おいしい」と判断されるものの特長を探る
↓
②共通項を発見
↓
③それが「おいしい」ということの要因と結論付ける
という論理展開をとっています。
問題点
そして、この①の段階で、何がおいしいと判断されるのかについて、文化圏によって異なってくるということは見落とされているからです。
①の段階で、特定の文化圏での「おいしさ」の特徴を集めているのであれば、それはその文化圏のみで通用する「おいしさ」であって、別の文化圏では通用しないはずです。
そのため、この調査方法では、客観的で、時代や地域を越えて通用するような「おいしさ」は見つけることができません。
しかし、調査結果を「科学的」と称することで、ミスリーディングな印象を与えてしまいます。