ドラゴンボールを見ていて疑問に思うのは、なぜサイヤ人は力を引き出すために髪の毛の色を変える必要があるのか。それも金髪や青や赤、ときには再度黒へと。
金髪への変化に関しては作者による公式の説明があり、作画の際に髪のベタぬりが面倒だから金髪にしたからだという話がありますが、本当にそれだけでしょうか。
多くの人が漫画やアニメを魅力的に感じるためには、やはりそれぞれの時代の美的意識に適っている必要があり、特にドラゴンボールはその傾向にあると思います。
この想定の下で、超サイヤ人と各時代の流行の相関関係を見てみると実際に超サイヤ人は世相を反映しています。
ここで一度、いつどの超サイヤ人が登場したのかを整理しながら、髪型*の変化が各時代の美意識をうまく捉えていったということを説明します。
*ここでは眉毛や眼の色の変化も含めて理解してください。
超サイヤ人の時代
超サイヤ人
登場年:1991年
場面:ナメック星でのフリーザ戦で初登場
特徴:髪が金髪、瞳が緑、黄金のオーラ
茶髪が流行
超サイヤ人論
超サイヤ人の見た目は、髪を金や茶に染めるという流行を先取りしていたのではないでしょうか。「超サイヤ人=かっこいい」という図式は現実世界の「不良=茶髪=かっこいい」という当時の考えにも重なります。
90年代以前は髪染めといえば白髪染めを指していたのであれば、髪の色を茶色へと変えるというのは、ある意味それまでの常識を壊すような衝撃的な流行だったのではないでしょうか。
超サイヤ人2の時代
超サイヤ人2
登場年:1993年
場面:孫悟飯がセル戦で覚醒
特徴:前髪が逆立つ、オーラに常時稲妻状の火花が追加
超サイヤ人2論
超サイヤ人2への変化はどちらかというと1からの単なるグレードアップでしょう。超サイヤ人の路線を継承・発展させることで、茶髪ブームに引き続き乗っかったと思われます。実際に悟飯はかっこよかったですね。
*ここでは作中で失敗のように描かれていた、べジータやトランクスのムキムキマッチョの超サイヤ人バージョンではなく、セル戦で有効性を示した、悟飯の覚醒バージョンを念頭においています。
超サイヤ人3の時代
超サイヤ人3
登場年:1995年
場面:孫悟空がブウ戦で見せる
特徴:金髪の髪が腰までの長さになる、眉毛が後退する
ロンゲが流行る
世相:ロングバケーション(1996年)でキムタクのロン毛が流行に。長髪にするという意味の「ロンゲる」が流行る。
超サイヤ人3論
超サイヤ人3で今度は髪が伸びましたが、これは長髪ブームという時代の美意識を先取りしていたでしょう。セル戦の中心でもあった若い世代の悟飯ではなく、いい大人になった悟空がメインとして超サイヤ人3になれたことで*、超サイヤ人はどちらかというと大人向けの髪型というイメージもあ りました。
茶髪と違ってロン毛は、学校ではやったというよりも、ドラマによって惹き起こされた社会全体の現象だったということとも符合します。
*ゴテンクスも超サイヤ人にはなりましたが、最初に悟空がなったこともあり、超サイヤ人3といえばやはりメインは悟空でしょう。
超サイヤ人4の時代
超サイヤ人4
登場年:1996-97年
場面:GTで登場。大猿かつ超サイヤ人の状態になることで達成
特徴:肩まで伸びた黒髪。体毛は赤
ヴィジュアル系が社会ブーム
世相:1990年代はヴィジュアル系最盛期でもある。1997年には女装かつ赤髪のSHAZNAが「SHAZNA現象」を引きおこす。
超サイヤ人4論
ここでは超サイヤ人は、金髪路線を放棄して体毛もあるワイルド系に路線変更します。このサイヤ人の特徴は赤かつ長髪というヴィジュアル系の傾向と一致しながら、2000年以降の染色ブームの終わりを黒髪で先取りしています。
金髪をやめたことで大人のヤンチャさという印象を受けます。
超サイヤ人ゴッドの時代
超サイヤ人ゴッド
登場年:2013/2015年
場面:破壊神ビルスとの戦闘で登場。
特徴:髪は赤。全体の基調も赤。
→下の超サイヤ人ゴッド超サイヤ人参照
超サイヤ人ゴッド超サイヤ人の時代
超サイヤ人ゴッド超サイヤ人
登場年:2015年
場面:劇場版アニメ『ドラゴンボールZ 復活の「F」』で登場
特徴:超サイヤ人ゴッドの基調色が水色になった。
ドラゴンボール超の成功は今後の流行にかかっている
赤や青といったカラフルな髪色ブームが今後再来するのでしょうか。現在のところその兆候はありませんが、結論は今後の観察に待たれます。
*GT以前の登場年は単行本による
**GT以降はテレビ放送年
超サイヤ人シリーズは各時代の流行と一致していたからこそ人気
ここで言いたかったことは、超サイヤ人の髪型は単に漫画製作上の理由では生まれたわけではないということです*。
超サイヤ人は子供層もしくは成年層がかっこいいと思える存在として描かれなければ、彼らは魅力を感じません。登場人物がかっこいいと思えたからこそドラゴンボールはこれまでに人気があったのです。
そのため、登場人物の見た目も流行を先取りするか、それに乗っかっている必要があります。
*当事者は嘘をつく、もしくは真実の一部しか話さないという可能性も考慮に入れる必要があります。
『ドラゴンボール超』が成功する鍵
ドラゴンボールGTまでは、1990年代の若者文化、及びときには社会一般が考えるかっこよさを映し出しているといえます。
2015年に『ドラゴンボール超』が開始しましたが、これが成功するかは、ここで描かれる主人公の見た目が時代精神を捉えられているかどうかにもかかっているのではないでしょうか。