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元コンサルタントな歴史家―ドイツから見た日本

大学で近代日独軍事史を研究する伊藤智央のエッセイ。ドイツと日本に関する批判的な評論を中心に海外生活(留学や移住)の実態をお伝えしています。その際には元戦略コンサルタントとしての経験も踏まえてわかり易くお伝えできればと思います。

【留学ガイド】交換・語学留学と正規留学のメリット・デメリット

ドイツ ドイツ-生活一般 語学

留学に興味があるけど交換・語学留学か正規留学のどちらがよいのか、どう組み合わせればよいのか迷っている人も多いかと思います。

そのような人に少しでも助けとなるよう、私の体験談を中心にそれぞれのメリット・デメリットを整理してみたいと思います。勉学や留学生活という面を中心に論じてみたいと思います。

ちなみに私は大学院への正規留学しか経験しておらず、交換・語学留学については現地で観察した内容に基いています。私自信、人文学系の専攻のため、経験上、文系の人向けの内容になっております。

大学図書館前に座り込む学生たち

まずは単語の意味を簡単に確認しておきます。

  • 交換留学・・・日本の大学に籍を残しつつ、海外のパートナー校に通う。後で日本に戻って日本の母校での卒業を目的とし、留学期間が限定されている。期間は10ヶ月ほどが定番。語学学習が中心。
  • 語学留学・・・語学学習を目的として、海外の大学付属の語学コースや語学学校へと通う。
  • 正規留学・・・留学先の大学に正式に籍を置き、現地人と同じように単位をそろえて現地での卒業を目指す。特に外国人留学生の場合、退学率も高い

交換留学

メリット①受け入れ先での準備が整っている

交換留学は大学間で結ばれたプログラムに基いて、学生がパートナー校に定期的に派遣される形をとります。そのため、受け入れ側の体制が整っていることが多く、現地で相談できる人がいます。過去に別の日本人が派遣されているために、現地の担当者は日本人留学生の扱いに慣れています。

そのため、行ってみたけど、誰も助けてくれなかったということは少ないと言えます。

メリット②情報の豊富さ

海外留学に不安はつきものです。知らない国に行くのですから当然です。

しかし交換留学の場合、定期的に日本人学生が派遣されるわけですから、以前に同じ学校に留学していた人が日本に帰ってきていて母校にいることがあります。そうした人に現地の様子について聞くことが出来ます。

またプログラムによっては、逆に海外パートナー校から日本に学生が派遣されていることもあり、そういった相互派遣の場合は、事前にパートナー校からの学生とも知り合うことが出来ます。

そうした事前の準備によって、留学前の不安はある程度和らげることができるのではないでしょうか。

外国人向けのコースや相談相手

メリット③留学を楽しむ

語学コースに通うことがメインなので、余暇のための時間がたっぷりあります。加えて、語学コースの試験に何が何でも絶対に受からなければならないというプレッシャーもないので、人によっては勉強そっちのけで、遊びまわることもできます。

いろんなところに旅行に行くこともでき、充実した私生活が送れます。

デメリット①語学の飛躍的上達がない

交換留学では、外国人向けの語学コースに通うことがメインとなります。

そういった語学コースは当たり前ですが、外国人だらけで、留学生が留学生であることを許される空間です。教師も学生を留学生として扱ってくれます。

あくまでお客さん扱いです。

そのため、現地で卒業するために必死こいて現地人と競争するというプレッシャーがなく、語学が飛躍的に上達することがないことも事実です。

デメリット②現地への理解が深まらない

交換留学では、日本に興味がある学生がタンデムといった形で相談相手になってくれます。*一般向けの授業に出ることもほとんどないため、**知り合いになるのは、他の留学生か、留学生に興味のある現地人となっていまい、知り合いの輪が偏ってしまいます。

*正規留学ではタンデムなどしている時間もありませんし、タンデムをしている語学レベルでは授業についていくのも無理です。

**交換留学で来ていた学生が普通の授業に出ているのを見かけたことがありますが、辞書片手に現地人向けの講義は理解できるはずもなく、すぐに来なくなりました

彼ら・彼女らは海外(日本)に興味を持っており、話が合うことが多いので、一緒にいて快適です。しかし、現地の文化を知りたいと思う場合、これでは不十分です。というのも、大部分の学生と同じような状況に身を置かない限り、他の大多数の現地人を理解し、交流する機会が生まれてこないからです。それは、10ヶ月という留学期間の短さもあって仕方のない部分はあります。

交換留学で得られる経験は一面的でしかないということです。

で結局、交換留学ってどうなの?

交換留学は、その国について知るきっかけとしてはいいでしょう。

事前に現地の情報も得られ、母校や現地で相談相手もおり、現地でプレッシャーもなく海外を楽しめます。しかし、その快適さゆえに、言葉や現地の文化への理解が進みません。あくまできっかけとしてしか機能しません。

楽だけれども、得るものも少ないというローリスク・ローリターン型と言えます。

語学留学

語学留学には、交換留学と類似のメリットとデメリットがあります。ですのでここでは省略します。

ただ、語学留学のためには、交換留学の場合のようにお膳立てがなされていないこともあるので、自分で現地の学校や宿泊先、健康保険を手配しなければなりません。

語学留学の風景

正規留学

正規留学でのメリット・デメリットは交換留学のそれの裏返しに当たります。

メリット①語学が上達し、現地への理解が深まる

正規留学では現地人と対等に勉学をこなしていかなければなりません。「留学生だから」、「外国人だから」という言い訳は通用しなくなるわけで、それによるプレッシャーや競争によって、否が応でも語学がうまくなっていきます。

加えて、現地人の中に混ざって勉強することで、留学生に興味がないような普通の現地人とも交流する機会が生まれます。

大変ですが、しっかりやれば、語学も現地への理解もしっかりとしたものになります。

デメリット①留学を楽しむ余裕がない

留学を楽しむ余裕は交換留学の場合に比べて少ないです。

当たり前ですが、現地人の2倍以上の時間は勉強に投資しなければならないからです。本を読んだり、授業の準備・復習をしたりするにも、現地人の数倍の時間が必要になるのは想像できるでしょう。

時間的な問題だけではなく、語学的なハンデを背負っているという精神的な負い目もあります。そのために、人よりも何倍も努力しなければと、余暇を楽しむことを自分の中で制限してしまいがちにもなります。

時間的にも、精神的にも余裕がないということです。

図書館にこもりがちな大学生活

デメリット②中退のリスク

こうしたプレッシャーから脱落してしまう留学生も少なくありません。例えばドイツの例だと、ドイツ人の中退率は約25%に対し、外国人の中退率は41%です。

理由の多くは、

  • 言語の問題
  • 社会への不適合(他のドイツ人学生の輪に溶け込めない)
  • 経済的な問題(現地でバイトして生活費を稼がなくてはならない)

となっており、異国での勉強がどれほど大変なのかを物語っています。

参照記事:Hochschulen: Ausländer brechen öfter Studium ab - Wissen - Tagesspiegel
(*記事では統計がとられた時期が書かれていませんが、私の感覚値とも大体合致しているので、参考値として捉えてよいでしょう)

もし中退してしまった場合、経歴上不利になることがあります。もし日本で就職を考えている場合、新卒一括採用という波に乗ることができなかったり、履歴書を見た人に中退という言葉によるネガティブな印象を与えてしまうということです。

余談:適当な性格の人ほど留学を乗り切れる?

完璧主義者ほど、留学生活のストレスに精神的にやられてしまいます。意外と適当な性格の人のほうが、うさぎと亀の物語に出てくる亀のようにのんびりとではあっても最後まで頑張り切れるのではないかと思います。

やはり気を張り詰めてばかりでは何年も留学生活は続けれないので、気軽に物事を考えることも必要です。

実際の能力よりも個人の性格のほうが留学生活の成否について重要というのが私の印象です。

で結局、正規留学ってどうなの?

正規留学は大変の一言につきます。

個人的な体験で言うと、私の人生の中で一番苦しかった時期でもありました。性格にもよりますが、現地人との競争は、語学でのハンデという劣等感との闘いでもあります。私にとってはこれが一番堪えました。

単純な比較はできないかもしれませんが、たとえある言語を5年間勉強してきたとしても、現地に出てみれば、5歳児も5年間その言語を勉強しているわけで同じ経験値を持っています。その結果、自分の意識の中では2x歳と考えていても、現地の2x歳とは言葉の流暢さや文化的理解に圧倒的な差があることを感じ取ってしまいます。この自意識と実際の能力とのギャップによって劣等感を抱きやすくなります。

そのため、外国人の中退率の高さは正規留学を経験した私から見ると不思議でもなんでもありません。

しかし、それによって得るものも大きいです。

つまり、正規留学はハイリスク・ハイリターンな人生の賭けでもあるということです。

大講義の様子

補足:留学にかかる費用の差

経済的な面については全く述べていません。それは留学先の国によって事情がまったく異なってくるからです。

正規留学の場合、現地の大学に授業料を払いますが、交換留学の場合、日本の大学に授業料を払い続けます。現地の授業料が日本の授業料より高ければ交換留学のほうが安上りですが、現地の授業料が安ければ、正規留学のほうが安くなります。

例えば、ドイツへの留学の場合は正規留学のほうが安上りですが、アメリカやイギリスの私立大学への留学の場合は交換留学のほうが安上りです。

自分の人生観や性格と照らし合わせて留学形態を選ぶ

以上、交換・語学留学と正規留学のメリット・デメリットを主観的にまとめてみました。私の経験から書いているので、どちらかというと正規留学生からの視点が多くなっています。

どのような形で留学するのがよいのか、どれが自分に合っているのかは、それぞれの人生設計や性格に合わせて考えてみてください。その際に以下のことは頭に入れておいてください。

  • 交換・語学留学・・・ローリスク・ローリターン
  • 正規留学・・・ハイリスク・ハイリターン

どんなに大変でもやり遂げる自信があったり、マイペースでストレスをあまり感じない性格の人は正規留学でもいいですが、不安が勝ってしまう人はまず交換・語学留学で現地の状況を知り、何年か後になって正規留学を考えてもいいのかもしれません。

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