元コンサルタントな歴史家―ドイツから見た日本

ドイツの大学で歴史を研究する伊藤智央のブログ。ドイツと日本に関する批判的な評論を中心に海外生活(留学や移住)の実態をお伝えしています。その際には元戦略コンサルタントとしての経験も踏まえてわかり易くお伝えできればと思います

【人生の岐路で迷ったらどうする?】合理的な選択を下すための1つの方法

「今後の人生が変わってしまうんじゃないか」と前もって感じるような決断をしなければならない瞬間が人生にはあります。そのような瞬間として例えば、学業進路や職業の選択、居住地の変更、結婚・離婚といった重大な決断が挙げられます

そのような状況を念頭においた、「後悔しないような人生の選択をしよう・したい」といった表現を見聞きします。しかし後悔しない選択など人生にありえるのでしょうか?

もし何をしても後悔する可能性があるとすると、ではどのように意思決定をすればいいのでしょうか?

以下、個人的な体験を基にして書いております。

人生には悩む瞬間がある

「後悔する/しない」というのは具体的にどのような場合なのか、その原因は何なのかをまずは明らかにし、そのうえで合理的な選択をする一つの手がかりを探っていきます。

後悔する状況

①失敗したとき

まず、どのような選択肢を取ったとしても失敗した*ときには後悔するものです。

*失敗とは、思い描いていた生活を下回る状況が生じた場合とします

例えば脱サラして子どもの頃からの夢だった小説家になったとします。小説家として売れずに家賃すら払えなくなったとき、彼は自分の人生は失敗だったと考え、サラリーマン続けてたほうがよかったのにと後悔する可能性があります。

例え決断当時、自分のやりたいことを優先させた結果であったとしてもです。通常この場合は「悔いのない」選択と言われていますが、後悔の念が生じることもあります。

逆の場合も同様で、もし堅実な会社員・公務員人生に行き詰まった(=失敗した)とき、「あのとき夢にかけていれば成功していたかも」と後悔する可能性があります。

*あくまで可能性なので、必然的にそうなるわけではありません。状況②についても同様

②自分の意志をゆがめて妥協したとき

もともと第一志望の選択肢ではなく、外部要因によって第二志望で妥協せざるをえないとき、後で後悔することがあります。

それは、「人生は一回切りなのに、自分のやりたかったこととは違うことをしている」という違和感からです。この違和感は、妥協で選んだ分野で実際に成功したとしても、第一志望の選択肢を選んでいたら今頃どうしていたのかと後悔に似た気持ちとなって表れてきることもあるでしょう。

というのも、本来自分の夢であった分野でも成功していたかもしれない、それどころか今掴んでいる成功よりももっと大きな成功をつかんでいたかもしれないとも考えられるからです。この違和感は、第二志望の選択肢をとったにも関わらず失敗したとき(「後悔する状況①」)にさらに増幅されてしまいます。

*あくまで可能性なので、必然的にそうなるわけではありません

以上の点をまとめると、以下の表のように表現できます。

第一志望の選択を選び、成功したもときにのみ後悔しない

後悔の背後にある要因

何故、多くの選択肢が後悔へとつながりうるのでしょうか。

情報の偏り

その原因は、別の選択肢を取った場合にどのような結果(成功か失敗)になるのかが事前にはわからないということにあります。人間は、実際に選んだ選択肢の結果しかわからず、他の選択肢をとっていたらという仮定の話しはあくまで推測でしかありません。

情報のバイアス

加えて、現在の状況が失敗した場合に絶望のあまり、別の選択肢をバラ色に見ようとする傾向があります。*

*確かにそれとは逆に、現在の自分の選択肢をベストだったと言い聞かせる自己正当化の傾向も一般的には人間に備わっているかと思います

この情報の偏りとバイアスの結果、いくらでも都合のよいように「別の選択肢をしていたら・・・」という想像をしてしまう可能性があります。

想像力は無限

合理的な選択をするための方法

ではどのように人生の選択をすればよいのでしょうか?

限られた情報の中で合理的な選択を行うための切り口を考えてみます。

*以下、簡単なゲーム理論のような考え方を使っていますが、ゲーム理論に関しては素人なので、間違っていればご指摘お願いします。

先ほどの表に戻って、それぞれの場合の利得(=幸福度)とそれらの事態が発生する確率を書き込んでみます。そして、それぞれの選択肢を選んだ場合の、利得の平均を出してみました。

それぞれの選択肢を取った場合の利得と成功・失敗の確率を掛け合わせることで、合理的な選択をする

確率や利得の数字は私が仮に置いているだけなので、それぞれ自分の感覚で入れてみてください。こればかりはそれぞれの方の状況や才能・技能、人生観に左右されるところが大きいからです。

例えば、第二選択肢を選んで失敗した場合、「かなり後悔する」として利得を-2としていますが、やりたくないことまでして失敗するような人生絶対嫌だと想像できる場合は、-5ぐらいに数値を変えることができますし、第一志望が小説家のようなかなり狭き門の場合は成功の確率を5%まで下げて、その分、利得を上げることもできます。

このようにして数字を入れてみると、それぞれの選択肢(第一志望、第二志望)を選んだときに得られる利得の平均が算出されます。この平均値が高い方の選択肢を選んでみてはいかがでしょうか

結論:決断時に納得するしかない

入力する情報(利得、確率)は未来に属する、かつ定性的な情報なので、正確な数値化が難しいのは仕方のないところです。

結局、どのような選択をしようとも確実に後悔しない選択肢などないといえます。*

*当たり前すぎてすみません。

しかし、少なくとも重要な人生の選択の際に使えるだけの道具を使うことで、自分を納得させることが可能なのではないでしょうか。たとえそれが、自分の選ぼうとしている選択を単に正当化するためのものであったとしても。

後悔しないような選択肢はないのかもしれません。しかし、合理的な方法も取り入れることで、少なくとも意思決定の際に少しでも納得した形で判断を下すことができるのではないでしょうか。

*特に後悔する状況①と②に、いろいろと暗黙の前提を入れてしまっていますが、あくまで考えられうる一つのシナリオとして見てください

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