元コンサルタントな歴史家―ドイツから見た日本

ドイツの大学で歴史を研究する伊藤智央のブログ。ドイツと日本に関する批判的な評論を中心に海外生活(留学や移住)の実態をお伝えしています。その際には元戦略コンサルタントとしての経験も踏まえてわかり易くお伝えできればと思います

東大に現役&塾なし&公立出身で入った私の独学勉強法

私は中学も高校も普通の公立学校で、塾に一回も通ったこともなく、ストレートで東大文科一類(法学部と考えてもらっていいでしょう)に入りました。

中学校はもちろん地元の公立学校で、授業中抜け出す不良がたくさんいた、どこにでもある学校でした。

こうしたことから、私は大学受験までに高校受験しか受けたことがありませんでした。

なぜ塾も行かず、公立高校から頑張ったかというと、

  • 私の家は裕福ではなく安上りに勉強したかった*1
  • 自分のペースで勉強したかった

という二つの理由からでした。

では、そんな私がどうやってお金をかけずに東大(文科一類)にストレートで入れたのかについてお話します。

*ちなみに、私は大手塾の東大全国模試で、東大文一志望者の中で一桁の順位をとっています。塾には行ったことはありませんが、3回だけ大手塾の全国模試を受けたことがあります

東大生と安田講堂(卒業式にて)

東大への道①:人生の目標を見つけよう

やりたいことを見つけよう

一番重要だったのはモチベーションでした。

若いうちに勉強すれば、知的な発展が、時間ともに利子となって雪だるま式になっていくと思っていました。ある意味、ドラクエでの経験値集めのようなゲーム感覚があったと思います。

私はゲームを小学校でやめましたが、その理由は、テレビ画面の中ではなく、現実世界での「レベル」をあげたほうがいいと考えたからです。

それと同時になぜか、総理大臣になってやろうという野望(笑)も抱き始めました。

こうした「野望」と東大に入ってからの現実のギャップについては以下の記事で詳しく書いているのでご覧ください。

www.ito-tomohide.com

やりたいことを見つける方法

そもそもやる気がなければ勉強するも何もあったものでありません。なぜ自分は勉強して大学/東大に行きたいのか、それを見つけるために、いろいろなことを実際に体験したり、本を通して接することがまず第一にしなければならないことです。

高校生にもおススメ本は、

  • 理系:講談社のブルーバックス
  • 文系:岩波新書

です。両者とも読みやすくなっています。

例えば以下のような本があります。

勉強の合間でいいので、とにかく乱読をすることで、自分の視野を広げましょう。自分が将来したいことが見つかるかもしれません。

東大への道②:目標を達成するための手段を考えよう

こうしたモチベーションを持っていたことから、東大に入ることが目標になるのは私にとって必然でした。「総理大臣は官僚出身が多く、官僚は東大法学部出身が多いので、東大に入るのが、総理大臣への近道」と(単純に)考えて、東大を意識し始めたのは確か中一のころだったと思います。

同時に、どうしたら東大に受かることができるのかと自分で考え始めました。

まずは、試験でいい点数をとるためにはそもそも何がキードライバーなのかを考え、その自分なりの回答を早い段階で見つけました。

キーとなるポイントはそれほど多くないものです。

キードライバー=勉強量

私にとってキードライバーは勉強「量」でした。

上で書いた経験「値」という言葉が示唆しているように、それ以降、私は勉強の絶対量、つまり勉強時間に成績が比例するのではないかという仮説に基づいて行動するようになりました。

そして定期的な校内テストの成績によってこの仮説がある程度正しいことの確証をえながら、その仮説に基づいて大学受験の勉強方法を構築してきました。

私の場合は経済的な理由から選択肢には上りませんでしたが、今から考えると質、つまり質のいい塾や家庭教師をつけることも選択肢としてあったのかもしれません。

こうした仮説は常に検証、修正していくことでより効果的な仮説、しかも自分の状況に一番合った仮説を得ることができます。

例えば私の場合は、外からのプレッシャーや強制によって勉強するのは嫌いでしたので、マイペースで勉強できる方法を常に考えていました。もし、塾の方が家よりも勉強しやすいというのであれば、それを踏まえて勉強計画を立てるのも良いでしょう。

東大への道③:長期的な勉強計画を立てよう

そしてこの仮説に基づいて自分で勉強計画をたて、複数年にわたって何をいつまでにやるのかを紙に書いて計画していました。

まずは、目標値としてどのような能力が東大入試で求められているのかを、過去問などで確認しました。

その後、入試で出される問題を解くためには、

  • どの参考書を
  • どの順序で
  • いつまでに

解いていけばいいのかを逆算しました。

具体的には、高校2年の終わりまでに自力で3年生分のカリキュラムまで終わらせておくようにも計画を立てました。最後の1年は応用問題に費やすためです。

東大への道④:自分に合った参考書を選ぼう

当時はネットも普及していなかったので、大きな本屋でひたすら立ち読みして、参考書を吟味して、自分に合ったものを徹底的に調べました。塾なしで勉強するには、この参考書選びが肝になります。

私の場合、網羅的な辞書を一冊買って、手元においておきました。そうすることで、誰にも聞くことなく、わからないことがあったときにいつでも調べることができます。そして自分で調べることで、調べ方も身に付きます。

そうした参考書を以下で科目ごとに紹介しておきます。

数学

辞書として使える参考書

数学の場合も辞書的な使い方ができる参考書があります。『大学への数学』シリーズです。

問題と同時に解説も詳しく載っているので、わからない/忘れたことがあったときに繰り返して読み返せます。

演習用:応用編

基本がマスター出来たら、質のよい問題集が必要です。

問題が少し難しいけれども、背伸びすれば解けるという問題が出されており、しかも解説がかなり詳しくなっているものが、質の高い問題集を見分けるカギです。そうした問題集の一つが『1対1対応の演習』シリーズです。

演習用:難問編

応用問題もスラスラ解ける段階に達したらおススメするのが、雑誌版の『大学への数学』です。

これはかなり難しいのですが、解こうとするプロセスを大切にしてください。むしろ解けないという前提で、解答を見ることを勉強の目的にしてもよいでしょう。

解説を読むだけで「なるほど、そんな考えがあったんだ」と頭のトレーニングになります。

ちなみに、巻末の読者投稿欄は、受験生のあるあるを題材にしていて勉強の息抜きになります。

世界史&日本史

おススメの参考書

歴史系は、山川出版社の『詳説~』シリーズがおススメです。

この参考書は、教科書以上に詳しい話が載っているので、細部まで読み込みました。

使い方

まずは授業で学んだ内容を深めるために復習のために使い、授業で出てこなかったけれども

  • 興味深い、
  • もしくは試験に出そうな

話を授業用ノートの余白に書き込んでいきました。

また問題を解き終わった後に、関連する話があるかどうか調べるときにも使っていました。世界史や日本史は、小説のように読めるため、理数系の勉強に飽きた時に気分転換にもなります。

特に世界史と日本史というような暗記系の科目に関しては、暗記に最適な、寝る前と朝に集中的に覚えていきました。

具体的には、上に挙げた参考書を使って作り上げたノートを、徹底的に読み上げて、まるで自分に語るかのように話していきます。敢えて難しい質問を自分に問いかけて、その質問に自分が答えられるかを確認します。その際に、

  • 自分でわからないところ
  • 説明しにくい箇所

があればその都度、上の参考書を開けて、自分の理解を深めていきます。場合によっては、追加情報をノートに書き込んでいきます。

物理

物理も数学と同様に、教科書的に使え、わからないときにいつでも参照する参考書と、演習用の参考書の二本立てで勉強していました。そのときに使っていた参考書は以下のものです

特に問題集は簡単な問題から難しい問題まで順番に掲載されており少しずつ物理のレベルを上げていくことができます。また解説も充実しており、独学には最適です。

東大への道⑤:一週間のスケジュールを立てよう

長期的な目標もでき、参考書も手元にあります。次に、日常の具体的なスケジュールを立てましょう。スケジュールを立てることで、勉強をルーティン化することができます。

こうしたスケジュールを立てることで

  • 科目のバランスをとって勉強ができる
  • 無駄な時間をなくすことができる

という利点があります。

私の場合、寝る、トイレ、食事以外の時間から逆算してそれ以外の時間はすべて勉強していました。*2

一度、一日に何時間勉強できるのか興味をもって挑戦したことがありました。確か20時間ぐらい一日に勉強できたと思います。

毎日の平均勉強時間は学校の時間を除いて8時間ほどだったと思います。高校時代は年間で一日を全くオフにしたのは7-8日以下でした。試験の日と特別な日以外は毎日、「月月火水木金金」状態でした。今から考えると、休憩を小刻みにはさんで息抜きをしたほうが、効率を上げれたと思います。

もちろんこの計画も不定期ながらも修正を適宜加えていきました。

東大に入ることよりも大切なこととは?

もう一度整理すると

勉強したくなる目標を見つける
  ↓
何をすれば東大に入れるのか?についての仮説探し
  ↓
長期的な勉強計画作成
  ↓
参考書の選定
  ↓
日常のスケジュールを立てる
  ↓
場合によっては仮説・計画修正

という流れを作り上げれたことが東大入学につながったのではないかと思います。
中学時代から徐々にこの流れで自分なりの勉強方法を確立していきました。

最初の起点となるのが「勉強したくなる目標」(=モチベーション)ですが、ここで勘違いしてはならないのが、「東大に入ること」を最終目標としてはならないということです。あくまで東大は「自分の夢をかなえる手段・通過点」として考えないと、受験勉強も東大に入ってからもつらくなります。

こうしたモチベーションさえあれば、上のサイクルを自分でまわして、勉強の仕方をいろいろ工夫し、自分なりの勉強計画をたてていくものです。やる気があってそれをバネに考えることができれば、大学受験程度ではなんとでもなります。才能は必要ありません。

ただ私のアドバイスは一つの事例です。他にも様々な道があるとは思いますが、これが経済的には極めて安上がりな道だったのではないかと思います。

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*1:東大生の親の年収:東大生の親の世帯年収は950万以上が半分以上なので、東大に入るのに多くのお金を使っている人が多いのでしょう。もしくは、収入の多い家庭は両親の知的レベルも高いために子供も頭がいいのかもしれません。(東大生の親の年収 950万円以上が51.8% 教育格差は中学受験から始まる?〈AERA〉)いずれにせよ、入学後の印象は、中流上より上の家庭出身者が世間一般よりも多かったと覚えています。入学式にフェラーリで来た人がいるという噂も耳にしたこともありました。もちろん普通の家庭出身の人もいましたが。ただ、東大に入るのにお金がかかるのは一般的傾向であって、私の例のようにお金が絶対的に必須というわけではありません。工夫次第では、塾に行かずともうまく勉強できます。

*2:ただそれが良い少年時代であったかどうかは今となっては疑問ですが