研究者もサラリーマンと同様に成果物のアウトプットを高めることを常日頃考えています。
研究者の場合、アウトプットとは口頭の場合もありますが、書き物にも現れてきます。ビジネスでも口頭でのプレゼンと同様に紙の資料がアウトプットになります。
では研究やビジネスに関わらず、こういったアウトプットの質を上げるにはどうしたらよいでしょうか?
それを考えるためにはまず、そもそもアウトプットはどのような変数によって決まってくるのかを見定めることが必要となります。
情報を処理する流れ
図式的には、アウトプットが出てくるまでの、情報処理の過程は以下のようではないでしょうか。
情報を読み込んで、それを自分の頭で整理・解釈し、結論を出す。その上で、その解釈や結論を誰かに伝えるために表現する。
おおまかにはこの3つのステップがあります。
このようにして見たとき、アウトプットの変数となってくるのは当然ながらステップ①と②になります。
変数① :インプット情報
この変数は、努力次第ですぐに変えることができます。
その際の変更の仕方には二通りあり、それによってアウトプットの質を高めることができます。
方法A:同業者と同じ情報をインプットするが、その質と量を高める
わかりやすい例として 読書の例を挙げてみます。
読書の場合だと、研究者の場合だったら似た分野の研究書を読み、ビジネスマンだとビジネス書を読むことです。
例 インプットの量を高める
- ビジネスマンの場合、ビジネス書を多読する。(1日に1冊以上とか)
- 研究者の場合、読書量を上げて、知識のストックをひたすら増やす
例 インプットの質を高める
- ビジネスマンの場合、金融の誰にでもわかりやすく噛み砕いた入門書ではなく数式だらけの難解な専門書を読む
今までの作業を根本的に振り返ることなく同じ作業を続けるだけなので、連続的な発展しか望めません。
方法B:同業者と違うことをする(天邪鬼タイプ)
同業者と違うことをインプットにもってきます。
引き続き読書の例で話すと、同業者が読まないような本も読んでおくこととなります。
例 分野違いの本を読む
- ビジネスマンの場合、人文系の専門書を読む
- 研究者の場合、ビジネス関係の雑誌を読む
全く違うことをするので、飛躍的に向上するような非連続的な発展が望めます。
方法A「質と量を高めること」は消耗戦
方法Aの「質と量を高めること」は誰でも思いついてやろうとします。
つまり、質・量の向上は即効薬として効くため、目先のアウトプットの向上だけを考えると方法Aのみが思いつくのは当然です。
結果として、同じようなことをしている人は多いため競合が多く、ひたすら読書量を上げる競争に陥るという消耗戦になります。一日24時間と人に与えられている時間は限られているので、私生活を削らざるをえなくなります。
(使い古された言葉ですが、レッドオーシャンとも言い換えることができます)
方法B「同業者と違うこと」はホワイトスペース
方法Bの天邪鬼タイプは直接仕事に関係のない知識や経験がインプットとなることが多く、短期的にはアウトプットの質の向上に貢献することは少ないです。
しかし、次の述べるアルゴリズムという変数を向上させるのにより向上すると思われるので、長期的に見た場合、こちらが重要になってきます。人間としての幅を広げるということと同義です。
(同じように月並みな表現だと、ブルーオーシャン領域です)
変数② :情報処理における頭の回転の速さ
この変数②は、Yをアウトプット、Xを変数①とする関数Y=f(X)でいうと、この「f」の部分にあたります。
これはインプットを受けてそれをアウトプットに変える、人間の処理能力を表していますが、これは関数の「f」なので、短期的には変えることはできません。
すぐに思考方法や頭の回転を上げることはできないことを考えれば納得できます。
しかし長期的に見ると、アウトプット向上のための変数になってきます。
日々のインプットが良ければこのアルゴリズムも変わってくるでしょう。それも、いつもと違う、もしくは同業者と違うインプットの方が、自分の今までの思考方法であったり、同業者の中での一般的な思考方法をゼロベースで再検討できるので、アルゴリズムも飛躍的に改善できます。
カイゼンではなく、イノベーションが重要です。
結論:急がば回れ
結局、自分で直接影響を及ぼすことのできる変数はインプットのみです。
「方法B:非連続的成長」の重要性を説いてきましたが、もちろん「方法A:漸次的向上」で述べたような、同業者と同じインプットも必要です。問題は、「方法A:漸次的向上」のみが注目されすぎていて、「方法B:非連続的成長」の重要性があまり省みられていないことです。
ですので、インプットの質と量だけではなく、そのテーマにも注意することで、同業者ができないようなアウトプットが可能になるのではないでしょうか。
*確かに、人と違うことをしたり、仕事に直接関係のないことをすると、本当にこんなことをしていて大丈夫かと不安になりますが、この不安は克服に値します。ですので、一度自分のインプットをゼロベースで考え直してみてはどうでしょうか。
**一貫して読書の例を挙げてきましたが、これは他のインプット、例えばキャリア形成にも使えます。例えば、人文系の研究者がサラリーマン経験を持って いたり*、ビジネスマンが人文系の研究をした経験があることは、USP(Unique selling point:独自性)になるのではないでしょうか。
それによって同業者と差別化ができますし、そういった経験は長期的には教養の幅の広さにもつながってきます。