『インデペンデンス・デイ: リサージェンス』(2016年)は、1996年に大ヒットした『インデペンデンス・デイ』(1996年)の約20年後の世界を描いた続編です。
前回ではコンピューター・ウイルスを使い何とか敵母艦を攻撃することで人類の勝利に終わりましたが、前回と同じ宇宙人がかつてより強大な宇宙船でやってくるという設定です。
しかし、『インデペンデンス・デイ: リサージェンス』(以下、『インデペンデンス・デイ2』)では、さまざまなSF映画からスリリングな要素を引っ張ってきているのが目に付き、オリジナリティが欠けている印象を受けましたので、各シーンごとに批評を行ってみたいと思います。
敵宇宙船の着陸による破壊的影響
このシーンでは下のように、人間は上から降ってくる宇宙船とその影響からひたすら逃げようとします。特に、海に着水した宇宙船が作る巨大波から逃げ出そうとするシーンは既視感を覚えます。『インデペンデンス・デイ2』では、小型ボートが高波に巻き込まれながらも、タンカーといった障害物を避けようと必死に舵をとります。
引用元:Independence Day: Resurgence (2016) | Official Site | Now Playing
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出典は『デイ・アフター・トゥモロー』、『2012』?
これは、ローランド・エメリッヒ監督*の過去の作品である『デイ・アフター・トゥモロー』(2004年)や『2012』(2009年)でも見られた構図と似ています。これらの作品でも、巨大な津波から逃げ惑う人間が描かれています。
*『インデペンデンス・デイ1』と『インデペンデンス・デイ2』の監督
出典は『スター・トレック イントゥ・ダークネス』?
加えて、『スター・トレック イントゥ・ダークネス』(2013年)で描かれた、巨大宇宙船の墜落によって地上施設が潰されていくシーンとも重なります。
人間の仲間となる宇宙人
侵略を目的としている宇宙人Aに対して今回は人間を助けようとする宇宙人Bも登場します。しかしこの宇宙人Bのイメージがあまりにも『ウォーリー』(2008年)と似ているのです。
出典は『ウォーリー』?
先ず外見の類似性が挙げられます。両者とも、金属感のある真っ白な表面をもっており、丸みを帯びています。
加えて、中身の類似性も見受けられます。『インデペンデンス・デイ2』の宇宙人Bは、精神を機械という媒体に移行した生命体で一応は有機体ですがロボットのような動きをします。外部からのインプットとがない限りスイッチが切れた状態でいます。『ウォーリー』のEVE(イヴ)は生粋のロボットです。
ちなみにEVEは下の写真の右側のロボットです。
地球を破壊するために地殻まで掘削
宇宙人は地球のエネルギーを吸い取るために地殻までエネルギー波による掘削機で掘り進めようとします。もちろんその結果は地球の死滅につながるため、地殻に掘削機が到達するまでに宇宙人の親玉を攻撃しなければなりません。
出典は『スター・トレック』?
しかし掘削機で地殻まで掘り進むことで星を破壊するという発想は『スター・トレック』(2009年) と酷似しています。スタートレックでも、敵人種は地球の核を破壊しようと掘削機のような道具を繰り出してきます。(下、写真参照)
蜂の行動原理
敵宇宙人は女王を格として、それを中心にして全体が行動します。とりわけ、最後のシーンで全ての敵小型戦闘機は女王の周りをぐるぐると回り、自らの命でもって女王を守ろうとします。数の力で集団の核を守る戦術です。
出典は『スター・トレック Beyond』?
『スタートレック Beyond』(2016年)で登場する敵も同様に蜂のような集団行動で攻撃してきます。この場合は、数の多さで相手を戸惑わせ、攻撃の焦点を絞らせない戦術です。
統率のとれた集団行動をとることで、個々の命は失われようとも全体で勝利するという蜂戦術は共通と言えるでしょう。
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爆弾を抱えた突撃飛行
他作品と類似性を述べてきましたが、『インデペンデンス・デイ2』に最も似ているのは前作『インデペンデンス・デイ』です。
出典は『インデペンデンス・デイ』?
前作でのクライマックスといえば、大統領の指揮の下で、宇宙人に誘拐された過去のあるおじさんが爆弾とともに敵宇宙船の核に突っ込むシーンです。
それと同じ役回りを『インデペンデンス・デイ2』では当時の大統領が務めます。背景事情は若干異なりますが、爆弾をもって敵艦の中に突っ込みこれを内部から破壊するというのは同じ構図です。
決定的に重要なシーンでありながらあまりにも酷似しているため、オマージュの域を超えていると言えます。
『インデペンデンス・デイ2』はパッチワーク
確かに、どのような映画であっても過去の作品からインスピレーションをもらったり、影響を受けていることは悪いことではありません。
ただ『インデペンデンス・デイ2』の場合、近年のSF映画との類似性があまりにも目に付き、パッチワークのような印象を受けてしまいます。
映画が、ある思想の表現手段というよりも単なる娯楽という消費財でしかないことがあるとしても、今回の『インデペンデンス・デイ2』はオリジナリティの欠如からつまらなく感じてしまいました。
『インデペンデンス・デイ』は4部作になるということですが、続編に期待したいものです。
他にもSF宇宙映画関連では以下のような記事も書いております。