海外で企業の空きポストに応募する場合、応募書類の書き方に関して日本とは異なることから戸惑うかもしれません。
ただ、「海外」での就職・転職活動といっても、それぞれの国によって要求されることが異なるため一括りにして論じることはできません。ですので、「海外で通用する履歴書の書き方」といった一般的な記事は参考程度に読み流した方がいいでしょう。必ずそれぞれの国での作法を確認してください。
他の国にも一部で通用することがあるかもしれませんが、ここではドイツの企業に直接応募する場合に必要とされる2つの応募書類
- カバーレター
- 履歴書/CV(Curriculum Vitae)/レジュメ
の書き方のコツを説明します。
ドイツの場合はこれに加えて、高校/大学以上の卒業証明書、資格の証明書、過去の職場からの勤務証明書*が必要になります。
*どのような職種で何年間務めたのかという証明書です。勤め先の人事担当の方に事情を説明して一筆書いてもらいましょう。ドイツの場合はこれに勤務評価も加わりますが、日本企業に発行を頼む場合は、職種と勤務期間だけでかまいません
カバーレターも履歴書も日本での就職/転職の場合とは違い、自由形式なので何を書いていいのかわかりにくかもしれません。ここでは私の経験を基に、どのようにすれば提出書類の体裁を整えて応募先企業に良い印象を与えることができるのかを紹介したいと思います。
履歴書
履歴書の内容は、まずは5つの大項目に分かれます。
- 個人的な情報
- 職歴
- 学歴
- スキル
- その他
①個人的な情報
ここでは、住所、連絡先、生年月日/誕生地となります。ここに工夫の余地はありません。
②職歴
勤務先や勤務期間の他に、仕事内容を説明する必要がありこれが最も大切な箇所です。
これまで任せられた仕事はたくさんあるかもしれませんが、その内容の中から、応募要項の内容に関係がありそうなもののみを抜き出して、重要な順に上から書き出していきます。重要なほど説明を詳しく書いてください。これによって、重要な事柄が応募書類を読んでいる人の目にとまりやすくなります。
職歴全体を通して、応募先の仕事との整合性が明らかになるように見せることが重要です。
営業をする感覚と同じで、相手のニーズは応募要項ですでにわかっているわけですから、それに適っているように自分を売り込むイメージです。あくまで相手に関係することをメインに取り上げましょう。関係のない事柄は、言及しても出来る限り1行程度に収めてしまってかまいません。
但しここで注意点が2つあります。
- 日本の履歴書とは逆に、新しいことから順番に書く
- 日本での勤務先に関する説明を添える
一つ目は言葉通り記述の順序を現在から遡るという形で書くことなのですが、二つ目の点はどのような業種(=業界分類)、どれほどの規模(=従業員数、売上高)、どこに所在地があるのか(=所在都市名)を企業名の下に入れてあげる必要があるということです。
日本では有名な大企業であってもドイツ人にとっては知らない企業であることが多いため、大体どのような会社なのかイメージを持ってもらう必要があります。
③学歴
学歴の記述に関しても職歴と同じことが当てはまります。つまり、応募要項の記載事項と関連しそうな事柄には説明を加えるなりして強調してください。
例えば、卒業論文が仕事と直接関係している場合は、論文名も書くことで、「そのテーマについてはすでにいろいろ調べて知ってるので、この知識は貴社ですぐに活かせますよ」ということをアピールできます。
また、卒業成績がよい場合はそれも書き出しましょう。
*職歴があまりなく学歴の方が多い場合、職歴と学歴の項目は混ぜた形で表記してもかまいません
④スキル
スキルとしてはIT系、ビジネス知識系、語学系があります。これらのスキルは項目が多い場合、適宜大項目を立てて分類すると見やすくなります。
スキルを評価する際には注意すべき点があります。
上級、中級、初級などの自己評価を行う場合には必ずその後にその根拠となる客観的な情報を入れてください。
例えば、「英語:上級」と書くのであればその後に「(TOEIC 975/990)」といったことを書いてください。IT系であれば、業務で使用した年数を書くことで客観性を増すことが出来ます。ビジネス知識系は資格試験で合格したもののみを書きましょう。
⑤その他
「その他」として重要な事柄は、現地での就業許可の有無です。
ドイツ企業は、同レベルの応募者が二人いる場合、就業許可をもっている人を優先して採用することを義務付けられているからです。就業許可を持っていない場合は不利になることが多いですが、相手にいずれ伝わる事なので、せめて書類ではっきりと書いておきましょう。
面接の段階になって初めてこれが相手側に伝わって不採用となると、面接に行った分だけお互いの時間が無駄になります。
おまけ:最後の締め
最後に、日付と書類作成場所、そしてサインを付けてください。通常、履歴書はPCで作成しますが、サインは手書きの方が相手に与える印象が良いので、紙に書いたものをスキャンしてそれをワードに張り付けてください。
使いまわしはダメ
職歴、学歴の項目で述べたことから明らかになったとは思いますが、応募先の会社に合せて内容を修正する必要があります。そのため履歴書も応募先に応じて修正が必要かどうか必ず確認しましょう。
確認もせずに書類を使いまわすくらいでしたら、応募しない方がましです。
カバーレター
さて履歴書は完成しましたが、カバーレターが残っています。こちらは完全に自由なので履歴書よりも難しい分、ここで他の応募者に差をつけることが出来ます。
I→You→Weという流れを意識する
カバーレターの書き方は、A4一枚に収まる容量で、以下のような段落構成で書きます。
1 | 私 |
自己紹介: 自分はどのような技能をもっているのか、自分はどのような仕事スタイルが得意なのかを具体的にアピールする。出来れば数字や具体例を入れて、説得力をつける |
2 | あなた |
応募先企業に関する記述: 応募先の会社についてどのような特徴を持っていると考えているのかを、事前にHP etc.で収集した知識に基づいて書く |
3 | 我々 |
採用してもらった場合一緒に何ができるのか: 段落1と段落2で述べたことを踏まえて、自分の技能が応募先の会社でどう活かせるのか、お互いに相性が合うのかということを書く |
「I→You→We」というこの流れを意識した段落構成をとると読み手の側にも応募動機への理解と採用後のイメージが湧いてきます。
このように明確な段落構成をとることは、採用担当の人が斜め読みしても内容が理解できるという利点があります。
この作業をそれぞれの応募先に合わせて行っていくのは、最初は大変に感じるかもしれません。しかし慣れてくると、応募先企業のどの面を見ればいいのか要領がわかってくるので、素早く作成することができます。
面接に呼ばれるためには、このカバーレターをしっかり作りこみましょう。
2つの注意点
ただ、注意しなければならない点が二つあります。
- カバーレターは絶対にA4一枚に抑える
- 応募先の担当者名、会社名、住所は絶対間違えない
両方とも自明なので、詳細は説明しませんが、2つ目の点について補足すると、出来る限り担当者名を書いた方がよいです。担当者名がHPに出ていることがありますので、それを注意して探し出してみましょう。もし担当者名が書いてない場合は、直接電話で聞き出すこともできますが、個人的な経験から考えると、これはMUSTではありません。
書類の大切さ:読まずとも理解できるように工夫する
以上、ドイツにおける履歴書とカバーレターの書き方をまとめてみました。
履歴上のキズを面接での説明で挽回しようとしても、書類審査を通らないことには挽回のチャンスすら来ません。そのため、時間をかければ回避できるような初歩的な間違いがないように入念に時間をかけて書類作成をしたいものです。
その際には上記の点に加えて、応募書類を詳しく読まずとも一見しただけで内容が頭にすっと入ってくるように段落構成や表現を工夫しましょう。採用担当者は通常、一件の応募者あたりに数秒しか時間を割きません。その数秒でどれだけ自分のことを理解してもらえるのかが勝負になります。