『コール オブ デューティ』のようなファーストパーソン・シューティング(FPS)ゲームが好きな人におススメの戦争映画があります。
その映画とは『エンド・オブ・キングダム』です。
『エンド・オブ・キングダム』
あらすじ
イギリスの首相が死去。各国の首脳が葬儀に招待される。しかし、それは罠であり、ほぼ同時に、各国の首脳に向けられた攻撃がロンドンで仕掛けられる。
アメリカの大統領のみが、何とか最初の攻撃を耐え、護衛の主人公とともに逃げのびる。*1犯人は、ドローン機を使ったアメリカの攻撃で家族を失った武器商人で、復讐のためにイギリス警察にも入り込んで大規模な計画を企てていた。
カーチェイスあり、ヘリの墜落あり、アジトへの潜入ありと、100%、戦闘映画に仕上がっています。
© 2015 LHF PRODUCTIONS,INC.
ファーストパーソン・シューティングへの切り換え
護衛である主人公の活躍が尋常ではありません。
バッドマン、ジェームズボンド、ジェイソン・ボーンを混ぜたような人物で超人的な戦闘能力を誇ります。そして、とりわけ最後のシーンにおいてファーストパーソン・シューティングの視点に切り替わります。
イメージとしては下のような描き方です。
© 2016 Activision Publishing, Inc. ACTIVISION, CALL OF DUTY, MODERN WARFARE, CALL OF DUTY MODERN WARFARE, und CALL OF DUTY INFINITE WARFAR sind Warenzeichen von Activision Publishing, Inc.
ファーストパーソン・シューティングという、ゲームでの戦闘の描き方が、ついに映画にも来たということです。
確かにゲームが映画化されるということはあります。バイオハザードがその例でしょう。
しかしそれはストーリーの移植が中心です。
ところが『エンド・オブ・キングダム』は、内容ではなく描写方法が移植されています。
『Hardcore Henry』
ちなみに映画全体を通してFPSの視点で描いた映画としては、ロシア映画『Hardcore Henry』もあります。
これはサイボーグ化された主人公の視点で、誘拐された妻を取り戻すというストーリーです。手りゅう弾を投げたり、カーチェイスをしたりとFPSゲーム並みの内容です。
ただ、FPS視点が全編にわたって使われているため、とりわけ格闘戦では酔ったような気分になってしまいます。やはり、ある程度戦闘から離れた場所から撮影されているほうが、視点のブレがなくて目に優しいと言えます。
FPS視点と映画の相性
FPS視点の利点
FPS視点は確かに臨場感を伝えることができます。
主人公への攻撃は視聴者への攻撃のように描かれるため、FPS視点を使うことで、主人公との一体感は否が応にも醸し出されます。
このような現実感は、映画の世界に視聴者が引き込まれるための必須条件です。
FPS視点の欠点
しかし、視点のブレが、見ている人を不快にすることもあります。繰り返しになりますが、近接戦闘シーンにおいてはあまりにも視点がブレてしまい、目が痛くなります。
加えて、映画のようにリラックスしながらソファで見るものとしては、主人公の視点との距離感がある程度必要なのではないでしょうか。90-120分間常に主人公の視点で出来事を見ていると疲れるからです。
しかしFPS視点では、そのような主人公との距離感がなかなか取れません。
視点のブレに加えてこの一体感の強制が、見ていて「船酔い」のような気持ち悪さを感じる原因になってしまいます。
つまり、FPS視点は多用しすぎると、主人公に対する距離感と一体感の間のバランスが壊れてしまいます。
『エンド・オブ・キングダム』を勧める理由
『エンド・オブ・キングダム』と『Hardcore Henry』を比較することで、FPS視点と戦争映画の関係を見てきましたが、戦争映画におけるFPS視点の使用は、限定的に行う必要があるのではないでしょうか。
そのため個人的には、一部に限定してFPS視点が使われている『エンド・オブ・キングダム』のほうが、FPS視点の欠点を抑えながらも利点を引き出した使い方がなされていると考えています。ある意味、『エンド・オブ・キングダム』は、FPS視点を娯楽映画の中にうまく組み込んでいる好例ではないでしょうか。
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