元コンサルタントな歴史家―ドイツから見た日本

ドイツの大学で歴史を研究する伊藤智央のブログ。ドイツと日本に関する批判的な評論を中心に海外生活(留学や移住)の実態をお伝えしています。その際には元戦略コンサルタントとしての経験も踏まえてわかり易くお伝えできればと思います

ドイツに「秋」がないと考える1つの理由

「日本にしか四季はない」、「海外では日本ほど四季が鮮明ではない」という外国観が日本の一部では聞かれます。

このステレオタイプに対して、「何バカなこと言ってるんだ、他の国にもきれいな四季はある」という反論も見られます。

確かに「日本にしか(明確に区分された)四季はない」という話しは、日本の外の事情を知らない人の思い込み以外の何ものでもありません。

ただ、ドイツに関しては、春は花が咲きほこり綺麗なのですが、日本人(私?)の考えるような「秋」は存在しません。夏の後に冬が来るイメージです。

秋の3条件

私にとっての秋のイメージとは、紅葉が広がり、落ち葉に覆われた道を秋空の下で歩くといったポジティブなものです。

運動をすれば汗をかいたり、コートが必要と思えるような日もときにはあったりと、夏へ逆戻りする日や冬が一足早く来る日もありますが、気温は寒すぎず、暑すぎずとちょうどよく快適と考えます。

つまり以下の3つの要素が私にとっての「秋」です。

  • 紅葉
  • 秋晴れ
  • ちょうどよい気温

ドイツの秋

確かに、ドイツ語にも「秋」という言葉はあり、その定義は、以下のようになっています。

夏と冬の間の季節。収穫と広葉樹の葉が色づくころ*1

しかし、私がドイツで実際に体験する「秋」は、味わうには短く、すでに「初冬」が来てしまったような印象を与えます。

というのも、ドイツの場合、汗ばむような日差しの強い日が終わったとたんに、どんよりとした雲が空を覆い隠し、分厚いコートが必要になるような日が始まります。長袖を着て歩くのがちょうどいいような気温の日々はあまりありません。それがちょうど10月ごろにあたります。

つまり上に挙げた「秋」3条件の内、「秋晴れ」もなければ「ちょうどよい気温」もないため、「秋」がまるで存在しないかのように、冬が夏の直後に表れます。

*但し、紅葉は日本ほどではありませんが、きれいに色付いた木を見ることはあります

「ちょうどよい気温」とは

私が想像する「ちょうどよい気温」とは、Tシャツでは寒いから袖のあるものを一枚上に羽織ってちょうどよい気温を指しています。薄手のコートを着てもいいかもしれません。

それは大体、日中の最高気温が15-20度の範囲の気候です。*2

「ちょうどよい」秋日和の日がすくないドイツ

このような天気がドイツでは10月ごろには、比較的少ないのです。

最高気温の推移

日中の気温と考えてよい最高気温を、日本とドイツの都市で比較して、「ちょうどよい気温」が当てはまる期間を見てみます。

ドイツと日本の最高気温を比較

注:グラフの基となった統計情報について*3

まず、ドイツと日本*4の気候一般を見ると、常に7-10度ほど日本のほうが暖かいのがわかります。

「ちょうどよい気温」が訪れる時期

次に、「ちょうどよい気温」が当てはまる期間を見ていくと、下の灰色で塗った気温の幅に月間平均最高気温が重なる期間に相当します。(赤矢印の箇所)日本だと10月から11月、ドイツだと9月から10月の時期です。

ちょうどよい気温と思われる時期

「ちょうどよい気温」の時期が短いドイツ

そして、この「ちょうどよい気温」の時期にあたるころ*5の気温チャートの傾きを取ると、傾きに差があるのがわかります。

つまり、ドイツのチャートのほうが急になっています。(下グラフでは、ドイツの曲線の傾きに沿って赤の補助線を引いております。)

補助線を引いた気温チャート

拡大した図はこちらになります

東京との比較
大阪との比較
拡大チャートA 拡大チャートB

ドイツのグラフの傾きのほうがが急だということは、私が(勝手に)快適と考える気温に恵まれた時期が短いということです。つまり、快適な気温にあたる時期が、ドイツであっという間に過ぎ去ってしまうということです。

そのため日本(本州)の秋に慣れている私としては、夏が終わったとたんに秋を飛ばして冬がやって来た印象を受けるのです。

これが、ドイツに「秋」はないと日頃感じている理由です。

関連する記事

*1:„Jahreszeit zwischen Sommer und Winter als Zeit der Ernte und der bunten Färbung der Blätter von Laubbäumen“, in: Duden | Herbst | Rechtschreibung, Bedeutung, Definition, Synonyme, Herkunft

*2:すべて主観です

*3:ベルリン:Klima Berlin - Klimadiagramme und Klimatabellen für Berlin - wetter.de(アクセス:2016年10月10日)
フランクフルト:Klima Frankfurt - Klimadiagramme und Klimatabellen für Frankfurt - wetter.de(アクセス:2016年10月10日)
東京:東京都東京の気候(気温と降水量のグラフ(雨温図))
大阪:大阪府大阪の気候(気温と降水量のグラフ(雨温図))
ベルリンとフランクフルトの統計期間は2016年(予想値)、東京と大阪の統計期間は1981~2010年

*4:以下では、ドイツ/日本の気候について述べるとき、各国代表としてベルリン、フランクフルト、東京、大阪を念頭においております

*5:ドイツ:9-10月、日本:10-11月