元コンサルタントな歴史家―ドイツから見た日本

ドイツの大学で歴史を研究する伊藤智央のブログ。ドイツと日本に関する批判的な評論を中心に海外生活(留学や移住)の実態をお伝えしています。その際には元戦略コンサルタントとしての経験も踏まえてわかり易くお伝えできればと思います

B級映画の金字塔『シャークネード』がB級にもかかわらず面白い理由

映像がダメで、ストーリーも素人感が満載な映画をB級映画と言いますが、その中でも伝説的な存在となっているのが『シャークネード』です。

シャーク(サメ)+トルネード(竜巻)=シャークネード

つまり、サメが竜巻の影響で、海から地上に上がってくる現象をシャークネードといいます。高潮で水が押し寄せたり、竜巻でサメが巻き上げられ、地上に降ってきて、人間に襲い掛かります。

これだけ聞くと、「はっ?なんだそれ?」となってよくわからないので、下の写真を見てください。空からもサメが降ってきています。

空に巻き上げられる殺人ザメ

引用先:The Asylum | SHARKNADO

これだけ聞くとB級の予感がしますが、まだ映画として十分面白い可能性が否定されたわけではありません。

しかし、『シャークネード』はそう一筋縄で理解できる映画ではないのです。そこには矛盾する2つの要素があります。

  • B級という、駄作を表す枕詞が付くこと
  • 駄作にもかかわらず、第4作まで作られるほど有名、かつ人気があること

一見矛盾して見えるこれらが、実は矛盾していないことをここでは説明してきます。

なぜ駄作なのか?

ストーリーが単調

冒頭で説明したように、サメが高波に乗って地上まで押し寄せたり、強風で巻き上げられたりして人間に襲い掛かってきます。

それに対して、人間側はひたすら逃げるのですが、ときおり、家具やチェーンソー、銃といった武器で反撃します。

・・・

これの繰り返しです。ひねりも何もあったものではありません。

映像の構成がひどい

資金の問題からか、全作品を通してCGの安っぽさが目に付きます。サメがCGなのはわかるのですが、サメに食べられるシーンが適当すぎます。

人間が食べられるときは血が飛び散るだけで、食いちぎられた跡も、食べられるシーンの詳細も見せてくれません。恐らく、こうした映画を見ている人は、恐怖を感じたいがためにある程度のリアリティを求めているのではないでしょうか。

それなのに、そうしたシーンになると、サメが飛びつくスピードが速くてよくわからないか、カメラが別の方向を向いています。

下の写真にあるのは食べられる前のシーンです。高速で空を飛んでくるサメに後方から襲われます。捕食シーンは素早すぎて、詳細にはわかりません。

空からサメが降ってくる

引用先:The Asylum | SHARKNADO

でもこの捕食シーン、ホラー映画としては一番重要なシーンです。

ツッコミどころが満載

細かい設定にボロが見られます。つまり、「えっ、こうしたほうが効率的じゃない?」「えっ、何でこんなことができるの?」というシーンがあります。

例えば、シャークネード2に以下のようなシーンがあります。

高層ビルの非常階段を上る主人公たち。

しかし竜巻で巻き上げられ屋上から入り込んだサメが階段の上から襲ってきます。しかし、下からも、水位の上昇とともにサメも階段を上ってきます。

前門のサメ、後門のサメ、という状況です。

非常階段を出る扉は、なぜか開きません。非常用に備え付けられている斧が必要となりますが、その斧は、下から押し寄せるサメの目の前にあります。

思い切って主人公が斧を取りに行くのはいいのですが、斧で扉を開けて逃げるときに、飛びかかってきたサメに斧を投げつけます。自分はもう安全圏にいるにもかかわらずです。

はっきり言って、サメに斧を投げて、斧を失う必要はないのです。そのまま扉を閉じればいいだけです。斧はこうした状況では便利なはずです。

他にも、主人公が何をしているのか意味不明なシーンもあります。

こうしたことは例ですが、『シャークネード』にはこうしたシーンが盛りだくさんです。

なぜ人気があるのか?

『シャークネード』の駄作ぶりを強調してきましたが、それでも人気があります。私も好きです。

第一作目は2013年に公開され、第四作目は2016年に公開されています。足掛け4年の間に4作も作られているのは、『シャークネード』が単なるB級映画ではないということを物語っています。

では、何故これほどの人気があるのでしょうか?

「B級」が笑いに転化されている

ツッコみどころ満載のB級映画といいましたが、このダメっぷりが笑いを誘います。

しかも、制作側も意図して笑いを意識している節があります。しかし、そのコメディー性は、製作者がわざとやっているというように感じさせません。

笑いを作り出しているのですが、それが自然な笑いになっているところが、『シャークネード』を伝説たらしめているのではないでしょうか。

例えば、チェーンソーをもってサメに立ち向かっていくシーンがありますが、もう笑うしかありません。ちなみにこの後、主人公はチェーンソーを掲げたままサメの口から入り、最後はサメの中を切り裂きながら血だらけで飛び出してきます。

どうもこのシーンは、製作者もファンも気に入ったようで、似たシーンが全作品で使われています。

チェーンソーでサメに立ち向かう主人公

引用先:The Asylum | SHARKNADO

ツッコみ=観客による映画への参加

普通、ツッコミどころが多いということは映画としては、見ている人をイライラさせたりしてしまいマイナス要素です。

しかし、シャークネードはツッコミを誘い出すようにできており、観客がツッコミを入れるということにインタラクティブな楽しさを感じます

高価なCGを散々投入して、有名俳優がどんどん登場する映画とは違って、庶民さを感じます。一言でいうと観客との距離感が近いことが陰ながら人気を博している原因とも言えます。

ブサカワに似た面白さ

この面白さをしいて例えるなら、ブサカワと呼ばれる犬や猫にも似ているのかもしれません。不細工であるがゆえにかわいいということです。

『シャークネード』は、ダメっぷりが見て取れるがゆえに面白いというこです。

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シリーズの紹介

ちなみに『シャークネード』シリーズを簡単に紹介しておきます。

『シャークネード』(2013年)

ロサンゼルスを舞台にサメがサーファーを食い散らかす初代

『シャークネード カテゴリー2』(2014年:The Second One)

今度はニューヨークを舞台に、自由の女神を破壊した竜巻とサメが、NYの高層ビル街を破壊する

『シャークネード エクストリーム・ミッション』(2015年:Oh Hell No!)

ワシントンをサメが直撃。今度は大統領も登場し、軍も出動します。シャークネードは国家規模の非常事態になる。この映画がどれだけぶっ飛んでいるのかを示すかのように、宇宙も舞台になります

『シャークネード フォースの覚醒』(2016年:The 4th Awakens)

スターウォーズのForce(フォース)ならぬFourth(4番目の竜巻)が覚醒します。

第4作はもう完全にSFの領域になり、内容が吹っ飛んでいます。サイボーグが出てきたり、竜巻が石油や火、雷、放射能とも融合します。

『シャークネード5 ワールド・タイフーン』(2017年:Global Swarming)

今度は世界が舞台です。シャークネードは実は古代から存在しており、シャークネードを倒すカギとなる古代の秘宝はストーンヘンジに眠っているという。

ついに人類史の書き換えにまで挑むという大胆で画期的な作品となっております。

どの作品でもいいので、1つでも『シャークネード』を見てもらえれば、シャークネードの面白さがわかってもらえると思います。ぜひとも見てみてください。

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